シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

開智中学校

2026年04月掲載

開智中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.変化する時代の中、入試問題でもチャレンジする

インタビュー1/3

まずはこの質問の出題意図について教えてください。

自分の子どもとの対話がきっかけとなり生まれた問題

宮入先生 漢文を教えていた際、文章中に「然」が付く言葉が出てきて、「『然』という字は…」といった話をしたことがこの問題を作るきっかけのひとつにありました。また、自分の子どもが「『然』が付く言葉はたくさんあるよね」と話していたこともあり、「それなら入試問題として出してみたら面白いのではないか?」と考えたのも理由のひとつです。ほかにも、語句の意味だけでなく漢字そのものが持つ意味やニュアンスにも目を向けてほしい、という想いもあってこのような問題を作成しました。

受験生にとってはかなり難しかったのではないかと思いますが、実際どうでしたか?

宮入先生 ⅰの正答率は40%ぐらいで、ⅱのほうは60%ぐらいの正答率だったと思います。ⅰのA『混』然については、小学生に答えられるかな?というぐらい難しかったのではないかと思います。その反面、ⅱは「おおやけであるさま」で『公』と思ってくれたのか、あと「落ち着いて物事に動じない」というのが『平』然かな?と推測できたのからなのか、比較的できていました。

小学校で「~然」が出てくるとしたら、この4つとあと自然ぐらいではないかと思っていました。習っている字でかつ小学生でも意味がわかる言葉を選んで並べられたのではないかと推測しますがどうですか?

宮入先生 おっしゃる通り「小学校で習いそう」とか「小学生で語彙として持っている子が受験してくれればいいな」と思って作った問題で、特にⅱの「混然」と「同然」は、普段から言葉に敏感な受験生であれば想像できるのではないかと思っていました。

ちなみに誤答のパターンとしてはどんなものがありましたか?

宮入先生 解答できていない答案、一応何か書いてみたものの熟語になっていない答案が多かったです。受験生の処理能力も見たかったため、この問題にこだわりすぎるのではなく「思いつかないなら一度区切りをつけて次に進む」という判断も含めて、挑戦してほしいと考えていました。

先ほど「漢字そのものが持つ意味やニュアンスにも目を向けてほしい」というお話がありましたが、小学生のうちに「このように勉強しておくといいよ」といったアドバイスはありますか?

宮入先生 熟語が出てきたときに「なぜこの組み合わせなのか?」と意味や成り立ちまで踏み込んで考えられるようにしておいてほしいなとは思いますね。そうした意識が理解の深さにもつながるはずです。

国語科/宮入 瑠菜先生

国語科/宮入 瑠菜先生

生成AIで問題文を作成するという斬新な試み

入試問題全般についてお伺いします。大問1は、外山滋比古の「乱読のセレンディピティ」、安藤昭子の「問いの編集力」、それと生成AI(Microsoft Copilot)で考えた文章の3種類で構成されていましたが、生成AIの文章はCopilotを使いどのように作られたのでしょうか?

宮入先生 まず「問いの編集力」と「乱読のセレンディピティ」の2種類の文章を読み込ませ、そのうえでCopilotに「中学校の先生1人とほかの中学生3人ぐらいと対話を作ってください。その際には『創発』という言葉を入れてください」といったプロンプトを作成しました。すると、たたき台として非常に長い文章が生成されたため、「これくらいの文字数にして」「ここはいらない」といった指示を追加しながら形作っていきました。

「創発」という言葉を入れた理由としては、本校には広く学ぶことを目的とした「創発クラス」があり、「創発とは何か?」を改めて考え、それを文章として表現してみようと考えたためです。

創発入試にふさわしい文章を考えるにあたり、以前読んだ本の中から関連しそうなものとして、まず「問いの編集力」が思い浮かびました。さらにもうひとつとして外山滋比古さんの「乱読のセレンディピティ」と組み合わせてみました。私としても、一から生成AIにすべて作成させることには少々抵抗があったため、この2つの材料を組み合わせる形で試みた、という流れです。

ちなみに、普段の授業で生成AIは取り入れていらっしゃいますか?

渡辺先生 授業というよりもむしろ生活の中で生徒がこういった生成AIを活用しているのを見かけます。生成AIはすごい勢いで当たり前になっていますし、既に「生成AIを使ったから新しい」とは言えない世の中になっていると感じます。

教員も、たとえば授業準備の際に作業効率を上げるために使用することはあります。これからの活用については生徒と一緒に考えていくようになるのではないでしょうか。

開智中学校 校舎内

開智中学校 校舎内

生徒さんが生成AIを使っているのはどういった場面でわかるのですか?

渡辺先生 生徒がいろいろ教えてくれます。やはり、新しい技術で得た知識というのは人に伝えたいのではないでしょうか。今回宮入先生が作成した問題文も全く違和感がなくて、非常にうまくできていると思います。

ほかの先生方も斬新だとかなり驚いたのではないですか?

渡辺先生 正直、最初の印象としては「生成AIでここまでできるんだ!」というほど驚きました。最近大学入試の傾向として、複数出典という試みがあるように感じていましたので、AIということは別にしても工夫した出題だと思いました。

宮入先生 私自身、Copilotをよく使っていましたし、ChatGPTやGeminiなどの他の生成AIも使っているので、どうすればよりよい文章が排出できるかは感覚的にわかっていたのも大きいかもしれません。

そうなんですね。生成AIを使うにはこちら側の準備も十分しなければならないこと、思考力も必要なんだな、ということが改めて分かりました。

渡辺先生 自分が「こういう文章が欲しい」と思って生成AIが書いてくれるとなった時に、出題者側として、「『セレンディピティ』というテーマで1,200字ぐらいの文を作って」といったオーダーをすることは、今後当たり前になっていくかもしれれません。

とはいえ、教科としての国語において扱う文章が、人の思考を経て書かれた文章で、かつ社会に公開された文章であることは重要だと思います。ですから、今回の問いのように生成AIによる文章を補助線のような形で使用することがあっても、主たる主題文にすることはできないとは感じました。そうしないと「そもそも国語って何なんだろう?」ということになってしまいます。著者、作問者、受験生という三者のバランスが崩れることは、国語という教科そのものの力を失わせることにもなりかねません。

宮入先生 ちなみに、問題文だけでなく設問も作ってもらおう、と思って実際に試しに記述問題を作ってみたのですが、私の意図からかなり外れた問題が作られてしまい、いわゆる中学入試的な国語の問題文はできませんでした。

開智中学校 展示

開智中学校 展示

問題文として使用する書籍の選定方法

『問いの編集力』のような素晴らしい本をどこで見つけたんだろう?と思ったので、あえて素材文を選ぶ基準についてお伺いしたいのですが、本屋でどういったコーナーを見ることが多いですか?

宮入先生 どちらかというと本屋に長くいられるタイプなのですが、最近は本屋に長時間滞在して、本を探すということができず、インターネットで本を探すことが多いです。おすすめの書籍が表示されるので、「これ面白そうだな」と思ったものを選んで購入しています。例えば、生成AIに「監視資本主義に関する本が読みたい」と相談すると、それまでのトーク履歴から、私が興味を持ちそうな書籍を提示してくれるので、その中から購入することもあります。そういう探し方をしているので、よく見るコーナーは特にないですし、流行の本も、普段はあまり読みません。

渡辺先生 私は宮入先生とは対照的に、実際に本屋に行って気になる本を見つけたらパラパラめくってみて買います。その際には、自分が普段読まないような本を意識して手に取ります。

作問の参考のために読む際には、「どこを出題するか」を考えながら読みます。話題の本も読めば面白いのですが、実際に使える部分を意識して読むとなると、読める数はそれほど多くありませんし、内容を楽しめない時もあります。

過去問を数年分拝見する限り、受験生に考えてほしいことや、物語文であれば心情の起伏などを考えるような文章が選ばれているように思います。そういった方向性で文章を選定しているのでしょうか?

渡辺先生 国語という教科は、他者理解を通して自己理解を深めるためにあるのだと考えています。特に、自分とは異なる立場の人や何らかの社会的課題に対して、想像力を働かせる機会にすることは入試問題でも大切にしたいと思っています。

出題回によって問題のレベルに違いはあるのですか?

渡辺先生 入試問題説明動画でもお伝えしているのですが、特待の回に関していうと記述問題や説問自体の作り方にかなり意図や狙いを持って作問していますので、毎回だいたい同じような説問構成・問いの記述量となっています。先ほどのお話にもあったように、自分の受験する回を意識した対策が大切だと思います。

開智中学校 展示

開智中学校 展示

インタビュー1/3

開智中学校
開智中学校1997年に岩槻に開校して以来、「平和で豊かな社会を作ることに貢献できる、創造型・発信型の国際的リーダーの育成」を教育理念とし、探究型の学びを中心とした新しい学習のあり方を模索し推進している。
岩槻キャンパスの自然豊かな敷地にある一貫部棟校舎は中央に5階までの吹き抜けがあり、開放的な空間となっている。その一階部分にはテーブルが複数置かれ、生徒たちが自習やミーティングなどで使用している。蔵書3万冊を超える図書室、広大なグラウンド、バスケコート二面がとれる体育館のほか、ステージ発表や講演などが行われるホールが複数あり、自習室にはブース式の学習スペースが140席程度用意されている。昼食は中2まで弁当持参だが、希望者には給食弁当もある。中3からは食堂などが利用できる。
入学時に入学者自身が自らの志望に応じてIT(目標の大学が決まっている人のコース)、MD(医療従事者を目指す人のコース)、GB(グローバルな仕事を志望する人のコース)、FD(志望をこれから考えたい人のコース)の4つのコースのいずれかを選択する。加えて、全員がS特待生で構成される「創発クラス」を2024年度入学から設置。創発クラスでは数学の特別授業「ガウス数学チーム」など各教科でより発展的な授業を展開する。この4コース制と創発クラスは高1までで、高2からは志望大学別のクラス編成となり、医学部を目指す医系クラスも設置される。高2からは放課後の特別講座が開始され、生徒の多くが塾や予備校に頼ることなく難関大学への進学を目指す。さらに国際バカロレアのディプロマ・プログラムの認定校ともなっており、今後はこの資格を利用しての海外有名大学への進学も視野に入る。
開智の教育の核となる探究活動は、中1から生徒全員が個人のテーマを決め、疑問・仮説・検証・考察のサイクルを何度も繰り返し、考察を深めていく。毎年行われる探究発表会ではポスター発表、スライド発表など様々な方法で生徒全員が発表を行う。フィールドワークは、中1は磯、中2は森で「はかる」「くらべる」をテーマにグループワークを行う。中3は関西をフィールドとして地域調査を行う。高1では首都圏で個人の探究テーマに関わる調査を実施し、高2ではイギリスの大学で現地の大学生を相手に探究の成果を発表する。中2~高1の希望者対象にオーストラリア・アメリカ・シンガポールなどへの語学研修もある。
生徒の自主性を重んじる校風で、生徒主体で作られた委員会や部活動もある。それ以外でも生徒の自主的な活動が活発で、SDGsなどの活動も盛ん。部活動は運動部19、文化部14、同好会1。ディベート部や文芸部かるた部門などは全国レベルでの活躍もある。