シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

江戸川学園取手中学校

2026年03月掲載

江戸川学園取手中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.社会の全分野で時事的な内容を盛り込んだ入試問題の作問を実施

インタビュー2/3

次に社会科の入試全体の構成に関するお考えについてお聞きしたいと思いますが、どのような構成で入試問題を作成されているのでしょうか?

袴田先生 本校では分野ごとに担当教員がおり、最初の作問者ミーティングで確認したのは、「時事的なテーマを扱う」という点をすべての分野で共通の方針にしようということでした。私自身が考えた時事的テーマとしては、今回でいえば「女性の就労」や「L字カーブ」などがありました。

おそらく他の先生方も同様だと思うのですが、リード文に時事的なテーマを取り入れる場合、一つのテーマを多角的な視点から捉える必要が出てきます。たとえば、法的な観点から見るとどうなのか、経済的にはどのような意味を持つのか、国際的な状況と比べるとどうなのか、あるいは政治制度の面ではどのような課題があるのか、といった具合です。

こうして女性の就労問題をさまざまな分野の視点から分析してリード文を組み立てていくと、自然と憲法に関わる問題や社会保障に関わる問題ができあがっていきました。

江戸川学園取手中学校 管理棟

江戸川学園取手中学校 管理棟

緻密に考え抜かれたカリキュラム設計

普段の授業やテキスト、評価のことなど江戸川学園取手中・高等学校の社会の特徴や特色についてお聞かせください。

袴田先生 私がこの学校に赴任してきて校長先生から最初に説明を受けた際に、カリキュラムが非常にしっかり設計されている学校だという印象を持ちました。中学1年・2年は基礎力を養う期間、中学3年・高校1年は探究力を伸ばす期間、そして高校2年・3年は受験力を高める期間として位置づけている、といった話を伺っていたものの、実際にこの学校で教えてみてまさにその通りだと感じています。

高2を担当した際には、中1・中2で基礎的な力をしっかり身につけ、中3や高1で探究的な学びを経験してきた生徒たちが、その力をどのように受験力へと応用していくかという段階にありましたが、これまでに積み重ねてきた基礎力と探究力を土台にし、受験に向けた実践的な力へとつなげていく流れがしっかりと見えてきて、中高一貫教育の強みがよく表れている部分であると感じました。

何か具体的なエピソードがあれば教えてください。

袴田先生 中1・中2の基礎力を養う段階については、私が個人的にまだ中学を担当したことがないため実際の様子は十分に把握できていません。ただ、探究の段階にあたる中3や高1の生徒を見ていると、「やっていて楽しい」「この勉強をもっと頑張りたい」といった前向きな感情を持って取り組んでいる生徒が多いと感じています。

本校の特徴として印象的なのは、「知らないことが悔しい」「できなくて悔しいからもっとやろう」といった思いを持つ生徒が多いことですね。そうした姿勢があるため、高2で受験力を高める段階に入ったときには、すでに過去4年間の学びの中で「勉強する方向」に自然と向かっている状態ができていますので、自分から主体的に学ぶ形が生まれているのではないかと感じています。

思考と知識を行き来させる探究学習サイクル

社会科の授業の中で探究の時間はあるのですか?

袴田先生: はい、授業で探究的な学びは行われています。特に公民分野では、公共と政治経済で役割分担をしている形です。

公共の授業では、思考力・判断力・表現力の育成に重点を置き、問いを投げかけ、それについて生徒同士が議論しながら多様な視点で考える主体的な学習を行っています。一方で政治経済の授業では、知識の習得に重きを置き、制度や政策に関する基礎的な知識をしっかりと学んでいきます。

さらにICTも活用しており、授業で学んだ内容や考えたことを蓄積していきます。家庭学習において、政治経済で得た知識を整理したり補足したりしながら理解を深め、その知識をもとに公共の授業で再び議論を行います。そうすることで、新たな視点や反対意見に気づくことができるようになっていくわけです。

まとめると、公共で思考し、政治経済で知識を得る。それをICTに蓄積し、再び公共の議論に活かすという形で、思考と知識を行き来させながら理解を深めていく学習サイクルが、本校ではしっかりと構築できていると思っています。

かなりうまく構造化されているのですね。探究するためには知識が必要ですしね。

袴田先生 ですので、公共を担当する際には、主題を設定したり問いを投げかけたりといった「考えること」にしっかりと軸足を置くことができます。その一方で政治経済を担当する際には、受験を見据えながら必要な知識を体系的に身につけていくことに集中することが可能です。

もし同じ授業時間の中で、思考力の育成と知識の習得の両方を同時に進めようとすると、どうしても教員側の指導が散漫になりがちです。教員の意図がはっきりしないと、生徒にとっても「今は何をすべき時間なのか」が見えにくくなり、結果として学習の焦点がぼやけてしまいます。

その点、教員側で役割を明確に分けておけば、生徒も「この時間は考える時間」「この時間は知識を身につける時間」と意識を切り替えやすくなります。

さらに、それぞれの授業で学んだ内容をICT上で蓄積し、あとで結びつけていくことで、知識と考えを自然に往復させながら理解を深めていく学びが生まれていると感じています。

遠藤先生 カリキュラムの中には探究の時間も設けられていますが、それだけに限らず、各教科の授業の中でも一方的に教え込むだけではない工夫された授業が行われています。特に中学校では「総合学習」の時間もあり、そこでも探究的な学びが取り入れられています。

しかし、結局のところ知識がなければ探究は成り立ちません。基礎となる知識があるからこそ、そこから自分で問いを広げたり、新しい視点で物事を考えたりすることができるわけです。知識が土台としてしっかりしているからこそ、学びを自分の力で発展させていくことができるのだと思いますね。

袴田先生 本校の場合は逆のケースもあって、探究から入って知識を得ようとする生徒も多いように感じます。

探究していて自分でいろいろ調べていくと、どこかで「あ、知識が足りないな」って気付いていきますよね。その結果、さらに知識を身に付けていく。先生のお話を聞いていると理想的なスパイラルが形成されているように感じました。

江戸川学園取手中学校 校舎

江戸川学園取手中学校 校舎

入試合格直後には5教科の課題をプレゼント

中1、中2の基礎というのは、準備段階の位置付けなのですか?

遠藤先生 学習習慣の定着という意味も含めて、本校では基本的な生活習慣をしっかり身につけることを大切にしています。中学受験を終えた直後は、「やっと受験が終わった」と気が緩み、学習習慣が崩れてしまいがちです。ですから、入試後に初めて新入生が登校する日に5教科の先生からのプレゼントという名目で課題を出しています。これまで受験勉強中心の生活を送ってきた生徒が多いと思うので、「楽しみながら取り組んでください」という意味合いも込めた、いわばご褒美のような課題ですね。

中でも社会の課題は少しユニークで、ここ数年は「世界のカルタを作る」という課題に取り組んでもらっています。また理科では、「最大の立体を作る」という課題があり、自分で作った立体の写真を撮ってレポートにまとめて提出してもらいますし、英語は、4月に辞書引きコンテストを行うため、その準備として辞書を引く練習をするといった課題が出されます。国語の場合、課題図書の中から自分の好きな本を読んでみよう、という形にしています。

中1の夏休みには、「自分で地図を作る」という課題にも取り組んでもらいます。地図のテーマは自由で、たとえば茨城県の名産品をまとめた地図を作る生徒もいれば、地域の病院を地図上に落とし込んでいく生徒もいます。こうした課題を通して、自分なりの視点で情報を整理し、表現する経験をしてもらえればと考えています。

中等部教頭/遠藤 実由喜先生

中等部教頭/遠藤 実由喜先生

学びには「楽しい」「好き」という部分が必要

基礎というと、繰り返しなにかを覚えさせられる印象を持つ人もいますが、そうではなく学びの楽しさを伝えているのですね。

遠藤先生 やはり、楽しくないと続きませんしね。特に中学生の段階では、「楽しい」「好き」という気持ちが学びの入り口になることが多いと感じます。たとえば、社会が得意な子や数学が得意な子が周りにいると、その姿に刺激を受けて「かっこいいな」「自分も頑張ってみよう」と思う。そうした周囲からの影響も、学ぶ意欲を高めるきっかけになっているのだと感じます。

そして、高2くらいになると、自然と勉強に向かう雰囲気ができてきます。部活動が終わったあと家に帰るとつい寝てしまうからと、学校に残って2時間(高校生は20時まで、中学生は19時までの1時間)ほど勉強してから帰る生徒も多いです。土日にもわざわざ学校に来て勉強する生徒が多く、自習室はいつもいっぱいです。自宅で一人で悩みながら勉強するより、学校に来れば友達もいて一緒に頑張れるという空気があります。そうした環境の中に身を置くことで、気持ちも前向きになり、勉強に向かいやすくなるのではないかと思います。

授業の枠組みを超えたイベントや行事を企画

日常の授業以外に、社会科で特別に行っているようなイベントや行事などがあれば教えてください。

袴田先生 公民や政治の分野では、過労死遺族の方を招いて、お話を伺いました。地理の分野ではフィールドワーク的な取り組みをよく行っているようです。

遠藤先生 各教師がアフタースクールの講座をはじめ、授業の枠組みを超えたイベントを企画するなど、かなり能動的に活動していると思います。生徒も意欲的に参加していますよ。

江戸川学園取手中学校 グラウンド

江戸川学園取手中学校 グラウンド

インタビュー2/3

江戸川学園取手中学校
江戸川学園取手中学校1978年の創立以来、「心豊かなリーダーの育成」を教育理念として、将来、国際社会に貢献できる有為な人材の育成に取り組む。心力と学力と体力のバランスのとれた三位一体の教育を目指している。2014年4月には、江戸川学園取手小学校が開校し、茨城県初の小中高12ヵ年一貫教育校となった。また、2016年度から中等部が医科ジュニアコース、東大ジュニアコース、難関大ジュニアコースの3コース制となっている。
「心力」の教育は、具体的には「道徳の授業」、「ロングホームルーム(LHR)」、「合同ホームルーム(合同HR)」で行う。教師が講話をし、生徒はそれを聞き、メモを取り、自分の感想文を大学ノートに1ページ書く。それに対して担任からコメントが返る。このやりとりが6年間継続し、人格形成の基本を身につけていく。
「授業が一番」をモットーに講義一辺倒の授業ではなく双方向授業を重視し、思考力や判断力、表現力を重視した授業を行う。また、オーディトリアムで行われるイベント教育は、世界の第一線で活躍している著名人の講演会や世界的な音楽家の演奏、古典芸能鑑賞などを行う。イベント教育を通して、ものの見方や考え方に広がりと深みを与えられるように工夫と趣向を凝らしている。
放課後には生徒が主体的に選ぶ150にも及ぶ「アフタースクール」を実施。自分の個性や適性に気づき、自らの手で可能性を広げていくことは進路を照らすことはもちろん、「生きる力」に繋がっていくという考えからだ。アフタースクールは、学習系、英語4技能、実験系、合教科系、芸術系、アクティビティー系、イベント系、プレゼン系、PBL系(企業と連携)、講演会・出前授業(大学の先生が実施する宇宙教育プログラムの講座)など、じつに多種多彩なプログラムとなっている。
中2生での校外探究学習では、学校を離れ2泊3日の宿泊探究学習を実施。再度江戸取生としての自覚を深め、最高峰を目指す生徒集団にふさわしい広い視点からの学習する。八子ヶ峰ハイキング、飯盒炊爨体験、班毎の環境学習(2日目、3日目)が中心。豊かな自然や風土が今なお多く残る白樺湖周辺の地が、生徒にたくさんのことを教えてくれる。