出題校にインタビュー!
江戸川学園取手中学校
2026年03月掲載
江戸川学園取手中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.一人称視点に立って自分事として考えてもらいたい問題
インタビュー1/3
まずはこの設問の出題意図を教えてください。
袴田先生 今回の作問にあたって私が特に大切にしたのは、「一人称視点に立つこと」です。言い換えれば、問題を自分自身のこととして捉えられるようにするという点を意識しました。
普段、生徒は教科書を読む際にどうしても他人事になりがちです。しかし、自分のこととして一人称視点で捉えた時に初めて関心が生まれ、「知りたい」「考えたい」といった気持ちが動いてきます。ですから、私の授業ではその点をとても大事にしています。
この問題に関しては、単に資料を読み取るというチカラを見るだけではなく、問いを投げかけることで、入試を解いている最中も「これは面白い」とか「自分ならどう考えるだろう?」と思わせる設計を施してみました。とはいえ、ただ自分の感想を書けばよいというわけではなく、「グラフ」という条件を必ず踏まえることを強く受験生には求めています。
常日頃、私の授業の中で、素の自分を「個性化」、社会の中の自分を「社会化」と位置付けているのですが、この問題では、個性化と社会化との間を何往復もするところが見たい、と思っていました。
そこで、「理由を資料のデータを使って説明しなさい」という部分に関しては、素の自分をベースとして、町長という立場の枠に当てはめられた自分を表現する。一方で、「その理由に照らし合わせたもう一つの新しい政策案」に関しては、逆に町長という枠にはめられた自分という社会化の部分から素の自分を出してみてほしい、といった二段構成で作問を行っています。
なお、グラフについては多少アレンジを加え、10代と40代の観光客数はやや少なめに設定しました。一方で20代については、観光客数は多いもののあまりお金を使わないという想定にし、平均消費額を低めに設定しています。
社会科/袴田 健太先生
「町長の立場で考え、その後それを自分事として捉える。この二つの視点を行き来してほしい」とお話しされていましたが、まず一つ案を出したうえで、さらにもう一案を考えるよう求めるのは、受験生にとってかなり難しいのではないかと感じました。
実際の受験生の解答の中で、印象に残ったものとしてはどんなものがありましたか?
袴田先生 私もこの問題を採点していて、「少し難しかったかな」と感じました。ただ、グラフを読み取るだけでは思考力を問う問題にはならないと思ったため、「もう一案、自分で考えてみてください」とあえて投げかける形にしました。
印象に残った答案としては、最初の理由の説明で「20代が多く観光に訪れているから、20代をさらに増やしたい」と書いていた受験生がいました。最初読んだ時にはよくある解答だなと感じたのですが、もう一つの政策案のところで、その子は20代にどうお金を使ってもらうかという具体的な施策まで書いていました。そこで「平均消費額の低さまできちんと考えているのだな」ということが垣間見え、とてもいい解答だったと記憶しています。
それ以外にも、長所をどうのばすかを考えた子や、弱点をどう克服するかに目を向けた子、さらには今の状態から将来どうなっていくのが望ましいのかを考えた子など、さまざまな視点の答案が見られました。
筆記試験だけでは、受験生の思考の癖や方向性、考え方の軸といったものが見えにくいことが多いのですが、「もう一つの新しい政策案を述べなさい」と設問に加えたことにより、「この子はこういう観点から考え、このような思考プロセスにたどり着いたんだな」という点が見えたのはとてもよかったと思っています。
江戸川学園取手中学校 コミュニティホール
「ウ」を選ぶ子が多いと思っていたが実際は「ア」を選んだ子が多かった
設問の中に政策が3パターンあるので、解答としてはア、イ、ウそれぞれのパターンの解答を受験生は書く可能性があると思うのですが、どの政策を選ぶ受験生が一番多かったですか?
袴田先生 私個人としては「ウ」を選ぶ生徒が多いのではないかと想定していたのですが、実際には「ア」を選ぶ生徒の方が多く見られました。
採点では、たとえば「ア」を選び、「温泉は全世代に人気があるから」といった理由を書いている場合でも、グラフに少しでも触れた記述があれば部分点を与えています。一方で、グラフをまったく見ずに「温泉」というキーワードだけを手がかりに書いていると判断できる答案については、残念ですがすべて×としています。
部分点についてお聞きしたいのですが、理由の記述と新たな政策案の二つのうちどちらか一方でもしっかり書けていれば部分点が与えられる、という形だったのでしょうか?その中でも「ここが少し不足している」といった点に応じて、細かく部分点を設定していたのでしょうか?
袴田先生 まず、資料をきちんと使っているかどうかはしっかり見ました。加えてまだ小学生ということもあり、資料を使ってはいるものの、理由と新しい政策案がうまく結びつかずバラバラになってしまう答案も少なくありません。
そこで、単なる羅列ではなく資料を踏まえて「こういう理由だからこの政策案になる」という一貫性があるかどうかを重視しました。つまり、「資料を使っていること」と「論理に一貫性があること」の二段階をクリアできているかどうかがポイントで、どちらかが欠けている場合、部分点は与えましたが、完全正解とはしないという基準にて採点しました。満点の子と部分点の子が半分半分で、白紙解答はほぼありませんでした。
江戸川学園取手中学校 大ホール
解答に根拠が書かれているかどうかを重視
「ア」については、理由を具体的に書かないと焦点がぼやけてしまうのではないかと感じました。先ほど先生がおっしゃっていた「一貫性」という点も、二つ目の案を出す際にはきちんと説明しないと意図が伝わりにくくなります。
袴田先生 作問においては、まず「感想のような解答はできるだけ省きたい」という考えがありました。そのため、解答にはきちんと根拠が書かれているかどうかを重視しましたし、さらにそこにグラフという資料の制約を加えることで、「限られた条件の中で、根拠をもった上で、あなたの考え(個性)を述べてください」という意図を込めた問題にしています。
ただ、採点は大変でした。他の社会科教員からも採点が難しいと言われましたし、時間がかかりましたね。
インタビュー1/3
1978年の創立以来、「心豊かなリーダーの育成」を教育理念として、将来、国際社会に貢献できる有為な人材の育成に取り組む。心力と学力と体力のバランスのとれた三位一体の教育を目指している。2014年4月には、江戸川学園取手小学校が開校し、茨城県初の小中高12ヵ年一貫教育校となった。また、2016年度から中等部が医科ジュニアコース、東大ジュニアコース、難関大ジュニアコースの3コース制となっている。