シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

栄東中学校

2026年03月掲載

栄東中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.数学の学びを通じて困難に立ち向かう力を養ってほしい

インタビュー3/3

問題を解く楽しみを味わわせたい

先生方は数学がお好きなんですね。

江副先生 どちらかというと、楽しませたい感じですね。問題を解いて見せて、どうだ、どうだ、というのは簡単ですが、そうではなく、生徒が一生懸命考え、話し合ってもらうには、どういう提示の仕方が最適なのか、どういう誘導の仕方が最適なのか、ということをかなり考えています。

生徒が持つ力をいかに引き出すかというところに、力を注いでいらっしゃるのは、よくわかります。

佐々木先生 例えば今までに勉強した数ⅠAの内容で、こちらが問題を用意するんですよ。大学入試問題の中から、面白そうな問題を集めておいて、それを使います。生徒にはいくつかの班に分かれてもらって、「全員で1つの問題に挑んでもいいし、誰々はこの問題ね、というように、それぞれ違う問題を解いてもいいよ」と伝えるんです。90分ぐらい時間を与えて、バーッと解いてもらって、最後に各班1枚の解答用紙に答えを書いて提出してもらい、私が採点をして、得点が1番高かったチームに、ちょっと良さげなお菓子を人数分用意しておいて、結果発表のときにあげると喜ぶんですよね。

中には数学がどうしても嫌いという生徒もいますが、班対抗にすると、自分もなんとか班のために頑張りたい、という気持ちになるんですよね。それでどうするかというと、場合の数の問題を、ひたすら数えるんです。何百通りもあって、わからないけれど、ひたすら書き調べることだったらできる。私が活躍できることはそれしかないから、という気持ちで一生懸命、紙に書くのです。その90分間、それだけをずっとやっているので、例えば正解したときに、最後の講評で順位や点数だけでなく、「場合の数の問題は、●班だけが正解でした」などとつけ加えると、その班でひたすら場合の数をやっていた子が、「私だけが正解なんだ」とすごく喜ぶわけです。それが大事だと思っていて意図してやるのですが、ちょっと自信がつくんですね。

普段、数学ができる生徒ばかりを指していると、数学が苦手な生徒はつまらなくなってしまいますが、活躍の場を少しでも与えてあげると、頑張ってやろうかなっていう気になるんだということは、私も発見でした。

江副先生 貢献したい気持ちがあるんですよね。その気持ちをうまく取り入れてあげるだけで、信じられないぐらい力を伸ばすことがあるのです。

数学科/江副 正史先生

数学科/江副 正史先生

ラーニングコモンズも自学自習を牽引

江副先生 昔は定期試験が近づくと、たくさん質問に来る生徒がいたのですが、最近は生徒同士で教え合って、結構解決しています。ラーニングコモンズという、生徒が多目的で使えるカフェのようなきれいな空間を作りました。そこで放課後に生徒どうしで教え合っています。相談しながら解くということは、授業中も休み時間もやっている生徒がたくさんいます。そうなるように仕向けたというのはあるんですが、生徒たちの動きは想像していたより上です。本当に生徒同士で高めてくれて、教員がいないとできない、ということではなくなってきていて心強く感じます。

佐々木先生 教員と生徒の関係もフラットですよね。

江副先生 変わった解き方をしたり、変わった見方をしたりしている子も、我々は拒絶しません。この解き方以外は許さんみたいな感じで指導するようなことはしないので、生徒も「こういう考え方でも答えが合ったんですけど」とか、「こういう考え方で答えがどうしても合わないんですけど」とか。最近はそういう風に、彼らの中で解決しなかったことを聞いてくる生徒がたくさんいます。

栄東中学校 ラーニングコモンズ

栄東中学校 ラーニングコモンズ

嘘のない言葉で思考して、表現できる人に

最後に、これからさらに生徒さんに身につけてほしい力などをお話いただけますか。

佐々木先生 与えられた問題を解くだけではなくて、自分が解いた問題や用いた定理が、どういう考え方に基づいてできているかをわかった上で、これをこうしたらどうなるだろうか、こう考えたらどうなるだろうか、と自分でそれを発展させて、考えを突き詰めていって、それを自分の研究にしていける力をつけてほしいですね。

大学生になったら講義はありますが、その後、ゼミや研究室に入ったり、卒業研究に取り組んだりするなど、自分で問題意識を持って研究していくことになるので、与えられるのを待つだけでなく、自分で見出していくような力をつけてほしいと思っています。大学に行って、ただ与えられたものを解くだけの勉強だったら、大学に行っても花は咲かないので、そういう意識をもっている生徒になってほしいなと思いながら授業をしています。

江副先生 自分で決めた進路に進むために、大学受験で合格する力、問題を解く力をつけることがまず大事です。もちろんそこにも力を注いでいるのですが、大学受験がゴールではなく、その先もあります。世の中で起きていることを雰囲気で見るのではなくて、自分で調べたり、自分で考えたりして、こうだからこうなんだという、嘘のない言葉で言語化して、表現できる人になっていってほしいなと思うんです。その結果、同じ方向に向かって進んでいこうという仲間を見つけて、この人と協力し合いたいという気持ちを、お互いに持てるような人を見つけて、助け合って、協力し合って、世の中にいろんな困難があると思うのですが、解決が難しそうなことでも、自分ができそうなことを探して、諦めずに挑戦し続けてくれるような、そういう人物になってほしいと思っています。

だから、問題を解けるだけでは足りなくて、せっかく数学を学ぶので、その過程として、解けなくて困っている子がいたら助けようとか、逆に助けてもらおうとか、協力し合うということを、ぜひたくさん経験してほしいです。お互いそれで高めていけるんだと、1人じゃうまくいかなかった、一緒にいてくれてよかったと思えるような経験をたくさんして卒業していってほしいなと思っています。

インタビュー3/3

栄東中学校
栄東中学校平成4年に中学校が開校し、中高一貫教育が開始された。時代の変化に先駆けて、アクティブ・ラーニングを取り入れ、「①授業、②校外学習、③キャリア、④部活動」という4つを軸に分けて展開している。授業での工夫という枠を超えて、生徒の学びの場すべてをアクティブ・ラーニング実践の場ととらえ、学校そのものがアクティブ・ラーニングの場である。特定の教員が実践するのではなく、全教員がアクティブ・ラーニングの実践者であることが最大の特徴である。
大学入試結果は教育の成果であり、そこにいたるプロセスと大学卒業後、社会で生きる力の育成に関する学校としての方針をアクティブ・ラーニングという理論に基づいて計画して実践している。授業は常に見学可能であり、教員同士がいつでも授業を見せ合う環境となっている。中1の入学時点では人の前でプレゼンテーションすることが苦手な生徒でも、中3までの間に至極当然のこととなっていくということである。
建学の精神「人間是宝」の理念は、『人間はだれもがすばらしい資質を持った、宝の原石であると考え、その原石を磨き上げ、文字通り本当の「宝」として育てること』であり、そのために、校訓「今日学べ」(今日のことは今日やり、勉強も仕事も明日に残さない)を掲げている。
広大な敷地には、勉学に専念するための充実した施設があり、先生方も遅くまで生徒たちの学びにつき合うことも多いという。勉強だけではなく、多くのクラブ活動も盛んであり、それは学校での生活すべてがアクティブ・ラーニングであるということに通じている。