シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

栄東中学校

2026年03月掲載

栄東中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.算数の学習に楽しく、粘り強く取り組んでほしい、それが問題作成の原動力

インタビュー1/3

自分の頭で考えて問題を解く力を試したかった

この問題の出題意図からお話いただけますか。

佐々木先生 機械的にパパッと解いていこうとしてもそれができないように、自分の知識を活用して解いてもらえるような問題を出したいという意図をもって出題しました。この問題はいろいろな解き方があると思いますので、暗記ではなくて、受験生が自分の頭で考えて問題を解く力を試すことができたのではないかと思います。

情報がたくさんあるが故に、先生がおっしゃったように考え方もたくさんあって、入試では最短の方法で解きたい。そのためにはどう解くか、というところまで考えてほしい問題なのかなと感じました。

佐々木先生 正答率は全体では69.4%、約7割でした。合格者は80.7%、不合格者は58.5%ですから、差がついた問題になりました。

数学科/佐々木 真先生

数学科/佐々木 真先生

見たことがない問題でも粘り強く

江副先生 入試では1問でも多く正解したい。そんな中、知っている問題が出ていると、安心して取り組めると思うのですが、これは見たこともやったこともない問題なので、少し嫌だったと思います。そういう問題も乗り越えていくような粘り強く取り組める子が本校の校風に合うのかなと思いますし、この先、大人になっていく過程で大事な要素かなと思います。

最後、どうしてもわからなかったら、直感で真ん中の数を3倍するとか、そんな解答もあったのでは?

佐々木先生 そうですね。誤答はさまざまでしたね。

この入試は今年の受験生にとって、特に最上位の受験生が最初に受ける入試である可能性が高いですよね。

小原先生 塾の先生と話をしていると、絶対に受かるレベルの受験生が✕をもらってしまうこともあって、本校の入試は「怖さがある」という話を聞くことがあります。

江副先生 1月の前半ですからね。2月がメインの子もいますので、仕上げる途中ですよね。この問題は、1つの糧にしてもらう問題という位置付けと思っていただけるのかなと考えています。

栄東中学校 自習室

栄東中学校 自習室

大谷選手のホームラン数を答えに

この問題の意図はパターン化されている問題ではなく、自分の頭で考えて解く力を見たいということでしたが、その位置付けで、他にも候補にあがっていた問題はいくつありましたか。

佐々木先生 作問のチームがありまして、その人たちは大体夏休みあたりに一生懸命考えて、夏休み明けぐらいに持ち寄って、江副のほうでまとめて素案を作ります。その後も10回、20回と集まって、そこから構成やら何やらガチャガチャ動かすということを何回もやって形になるのですが、この問題は私が作った段階からほぼ変わっていません。ちょっと数字をいじった程度です。

江副先生 最初に彼が作ったときは、答えが54だったんですよ。話し合っていたとき、大谷選手がホームランを54本打っていて、「さらにホームランを打ったら数を変えてください」と注文をつけていたんです。

佐々木先生 1本打ったので、55本になるように変更しました(笑)。受験勉強は大変ですから、過去問をやるときに少しでも楽しめる要素があればと思いました。

小原先生 僕らがこれはいいと思っても、正答率が3割程度と、ちょっと難しすぎてしまったりします。文章を読んでもらえなかったりすることもあり得ます。毎年いいレベルでいい問題を作れればいいのですが、なかなか難しいですね。

貴校の入試問題はこれに限らず、どことなく遊びの要素というのか、楽しませようという要素がいろいろ見えますね。

一生懸命突き詰める生徒が多い

江副先生 生徒も大学受験までの6年間、勉強をやるとなると苦しいはずなんですよ。ですが、生徒は「楽しい」と言うんですね。苦しみながらも、部活や行事と勉強を両立させています。多くの生徒が一生懸命突き詰めてやるほうが楽しいと思ってくれるので、我々も楽しく、一生懸命やるということを心がけています。

楽しく問題を作られているところが、毎年恒例となった「会話」の問題に表れていますよね。

江副先生 会話文は大学入試が新傾向に変わって文章が長くなる前から出しています。センター試験が共通テストになって、太郎くん、花子さんの会話が共通テストの数学の問題でも出るようになって、「それを見据えてですか」と聞かれたこともありましたが、我々はそれより前からやっていました。

その意図や狙いがあれば教えてください。

江副先生 数学の授業の中でもグループを作って、わかった人が他の人に教える時間をわりと取っています。本校の生徒たちは楽しんで一生懸命やってくれます。雑談になるようなことはなく、本当にその問題の解き方に関して一生懸命考えて、思ったことを伝えて、伝わったら嬉しいと感じてくれます。本校の生徒のいいところだと思うところを意識した出題で、そうしたことに関心のある子に受験してほしいという思いがあります。

それからもう1つ、試験では単純に「何々を求めなさい」という出題になりがちですが、それだと惜しいところまで考えられていても点になりません。あるいはあきらめてしまいます。そうならないようにしたいと思いました。考える過程を穴埋めしながら会話にしていくことで、考えも少しまとまっていくようになると思います。結果として難しい問題でも挑戦してくれると思いますし、ここまで考えられたね、という評価もできるので、入学試験としても合うのではないかと思っています。

栄東中学校 鉄道研究部

栄東中学校 鉄道研究部

伝わりやすさを求めて会話文を採用

小原先生 数学は厳密に伝えようとすると、言葉が長くなります。そして、つまらない方向に行きがちです。それよりも日常の柔らかい感じの会話口調で表現したほうが、伝わりやすいだろうということで、会話文での出題が始まりました。設定としては、小学生、中学生レベルの児童・生徒の会話ということになっています。

江副先生 初めて会話文を出したときは、「手紙を書きなさい」という問題につなげるための、リード文のような感じでした。考えを記述しなさいというのは、小学生にとって厳しいお題だと思うんです。でも設定として、「ここがわからないから教えてほしい」と言われたら、「どこまではわかっていて、どこからがわからない子なんだろう」と想像できる子は想像すると思うんです。そうすると、どこまで説明を書けばいいのかもわかりますよね。つまり、手紙の問題を作りたい、という思いが、会話文が生まれるきっかけだったのです。実際に作ってみたら、だんだん作問者たちもスキルを上げてきて、今に至っています。

普段の生徒の様子がよく出ている会話ですね。

小原先生 これで本当に伝わるのか。心配になります。そこであらためてきちんと読んでみると、「やっぱり何を言っているかわからないね」となって、書き直すことも多く、せめぎ合いがいろいろあった末にできあがっているんですよ。

江副先生 本当にリアルにしゃべっている言葉を文字にすると、なんだかわからない部分が発生します。ひとつひとつ確認しながら進めていくので、入試問題を作ることが大変かと問われば、確かにそうですね。

栄東中学校 図書室

栄東中学校 図書室

インタビュー1/3

栄東中学校
栄東中学校平成4年に中学校が開校し、中高一貫教育が開始された。時代の変化に先駆けて、アクティブ・ラーニングを取り入れ、「①授業、②校外学習、③キャリア、④部活動」という4つを軸に分けて展開している。授業での工夫という枠を超えて、生徒の学びの場すべてをアクティブ・ラーニング実践の場ととらえ、学校そのものがアクティブ・ラーニングの場である。特定の教員が実践するのではなく、全教員がアクティブ・ラーニングの実践者であることが最大の特徴である。
大学入試結果は教育の成果であり、そこにいたるプロセスと大学卒業後、社会で生きる力の育成に関する学校としての方針をアクティブ・ラーニングという理論に基づいて計画して実践している。授業は常に見学可能であり、教員同士がいつでも授業を見せ合う環境となっている。中1の入学時点では人の前でプレゼンテーションすることが苦手な生徒でも、中3までの間に至極当然のこととなっていくということである。
建学の精神「人間是宝」の理念は、『人間はだれもがすばらしい資質を持った、宝の原石であると考え、その原石を磨き上げ、文字通り本当の「宝」として育てること』であり、そのために、校訓「今日学べ」(今日のことは今日やり、勉強も仕事も明日に残さない)を掲げている。
広大な敷地には、勉学に専念するための充実した施設があり、先生方も遅くまで生徒たちの学びにつき合うことも多いという。勉強だけではなく、多くのクラブ活動も盛んであり、それは学校での生活すべてがアクティブ・ラーニングであるということに通じている。