シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

横浜雙葉中学校

2026年01月掲載

横浜雙葉中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.神父様や先生のお話がシャワーのように降り注ぐ日々の豊かさ

インタビュー3/3

卒業生から学ぶ「しなやかさ」

キャリア教育はどのように扱っていますか。

吉田先生 横浜雙葉では、キャリア教育の一環として、卒業生を招いてお話をしていただく機会を設けています。社会のさまざまな場面で活躍している卒業生が多いですが、活躍といっても、目立つ仕事だけではありません。誰からも注目されない小さなところでも、困っている人を支えようと考え、行動している卒業生が多くいます。そうした話を聞くと、「生き方にはいろいろあっていいんだ」と改めて感じますし、生徒自身が「自分はどんなふうに生きたいか」を考えるきっかけにもなっています。

私たちが「ロングホームルーム」と呼んでいる特別活動の時間や、総合学習の中で、また放課後の自主参加による”雙葉アカデミア”において、卒業生のお話を聞く場を設けています。その中では、社会で避けて通れないジェンダーの視点や、男性の育休取得の増加といった社会の変化、また育児や介護の問題について「自分だったらどうしてほしいか」といった観点で考えることの重要性も語られます。生徒たちはもちろん、大人である私たち教員も、多くの気づきをもらう時間になっています。

卒業生を見ていると、育児や介護など人生の大きな場面で、「女性だからやるべき」とか「男女同じように分担すべき」といった固定した考え方に縛られない人が多いと感じます。むしろ、対等な人間関係の中で「今の状況では、私とあなたのどちらがやったほうがより良いか」と柔軟に判断し、選択できるしなやかさを持っています。たとえキャリアが中断されたとしても、また別の新たな場面で力を発揮して活躍している卒業生もいて、本当に素敵だと思います。

広報部長/吉田 敦子先生

広報部長/吉田 敦子先生

創立者の生き様を生徒も意識

それは土壌によるものですか。

吉田先生 生徒にとって大きいのは、創立者であるマザー・マチルドの生き方に触れてきた経験だと思います。シスター方が日本に来たとき、すぐに女子教育を始めたわけではありませんでした。まず身寄りのない子どもたちを見て「この子たちのために動かなければ」とお世話をすることから活動を始め、その後求められて学校を開いていったのです。

困っている人に手を差し伸べ、自分にできることを行うという姿勢を、生徒たちは6年間を通して自然と学んで育っていきます。私自身も長く勤める中で、その精神が息づいていることを強く感じています。

生徒さんは積極的ですか。

山本先生 もちろん学校生活の中で、「やりたい人」と言ったときに臆する生徒もいて、もっとチャレンジすればいいのに、と思うこともあります。積極的かどうかは生徒それぞれですし、状況に応じて異なります。でもそれはおそらく、女性・女子だから一歩引かなくてはならないというような考えだからではないと思うんです。この環境にいると、そもそも女の子だから引くという発想がないので、そこがいい環境だろうなと思います。

6年間、女子だからこうしようとか、男子にまかせよう、というようなことを考えずに過ごすということは、しばしば指摘されますが、やはり女子校の良さなんだろうと思います。先入観や、何かこうあるべきだという考えから一度離れて、違う発想で、違う次元で物事にアプローチしたり、自分の行動を決めたりすることができる。それは、社会科の教員としてとても嬉しいことです。

横浜雙葉中学校 校舎内

横浜雙葉中学校 校舎内

いろいろなところに興味をもってほしい

小学生に向けて、メッセージをお願いします。

山本先生 社会科的な話で言うと、やはり背伸びしていろんなことに興味をもてる人がいいなと思うんです。例えば、子ども議会のような場所で「地域の交通安全について議論しました」などというニュースを耳にすると、身近なことを題材にするのは、それはそれで良いことだし、大切なことなのですが、もっと大人びたというか、例えば日本の安全保障について議論してもいいんじゃない、と思うんですよ。そのぐらいの気概をもっている子もいいなと思います。

テーマは、人によっては環境問題かもしれないし、安全保障かもしれないし、法律かもしれない。一般的には子どもがとっつきにくそうなことに、どんどん関心を持って、ああだ、こうだと言える子になってほしいです。そういう力は中学校に入ってからも伸ばしていけるので、もちろん、そうじゃなければダメだとは思いませんが……。そういう生徒が入ってきてくれたら、社会科としては嬉しいです。

宇野先生 今回は「ジェンダーギャップ」がテーマでしたが、女性ならではの視点があるとするならば、男性ならではの視点もあります。そして男女という性別のくくりを取り払って、自分と相手という原点に戻って考えなければいけないことが、世の中には多くあります。今、それに気づいていないのなら、中高の授業が気づくきっかけになれたらと思います。それは社会科に限らず、さまざまな教科が同じような気持ちで授業をしていると思いますので、入試問題の中でも気づいてもらえたら嬉しいです。

山本先生 これは高校生にも大学受験を前にして時々話すのですが、10代と、40代で、何かがうまくいかなかった場合のリスクを考えると、10代はリスクがとても小さいと思います。まだまだ人生が長くあるので、その中でいくらでも修正が可能だからです。なので、受験は本当に心配事が多いと思いますが、小学生に残された時間を考えると、失敗したらどうしようなんて考えすぎなくて良いわけです。何もしなくても未来はみなさんのものになって、みなさん自身で変えられるのですから、自分のペースで進んでいってほしいです。

横浜雙葉中学校 生徒ホール

横浜雙葉中学校 生徒ホール

インタビュー3/3

横浜雙葉中学校
横浜雙葉中学校1872(明治5)年、創始者である幼きイエス会のマザー・マチルドが来日、横浜で教育と福祉活動を開始した。1900年に横浜紅蘭女学校を開校。その後、1951(昭和26)年に雙葉、1958年に横浜雙葉と校名を変更して現在に至る。2000(平成12)年には創立100周年を迎えた。
「徳においては純真に 義務においては堅実に」を校訓に、一人ひとりが自分を積極的に表現し、他の人と心を開いてかかわり、能力や資質を磨いて社会に役立てようとする「開かれた人」の育成を心がける。そのために「開かれた学校」を目指し、21世紀をたくましく生きるための知性と感性を伸ばす教育が行われている。
横浜港を一望する中区山手町のなかでも、最も異国情緒あふれる一角に位置する。敷地内の修道院跡地に、聖堂・視聴覚室などを備えた高校校舎と特別教室があるが、2003年には図書館やITワークショップなど、最新の情報技術やグローバル教育に対応した新校舎が完成。
45分×7時間授業で、どの教科も、思考力を養うものが多くなっている。特に英語はテキストの『プログレス』を軸に、中1から週6時間の授業や、外国人教師による英会話の授業など、非常に意欲的。数学は中1から数量と図形に分ける。中3から英・数は習熟度別編成となる。理科は実験が多く、生徒が興味を持てるよう組み立てられている。2期制なので、1年間は42週と公立中学の3学期制・35週より多い。定期テストは年4回だが、「小テスト」は随時各教科で行い、進度が遅れぎみの生徒には指名による補習も行う。高2から文系・理系に分かれ、幅広い選択制で進路に柔軟に対応。毎年東大に合格者を出すほか、難関私大にも多数の合格者を出している。医療系への進学者が多い。中3~高2の希望者にフランス語講座がある。
学校週5日制。年間を通じて朝の祈りや、講演会の放課後の自由参加の講座など自己を見つめる行事や企画も多い。文化祭をはじめ多くの活動が、生徒会を中心に計画される。クラブ活動は、文化部が20、運動部5のほか、聖歌隊やボランティアを行うTHE EYESという団体がある。ハイキング部、新聞部は全国大会にも出場する実績を誇る。しつけに厳しいといわれるが、教師たちは服装や持ち物検査は行わず、生徒たちが自分でけじめをつけて行動するよう求める。制服はジャンパースカート。2002年から夏季制服が登場。ブラウスは白と青、スカートは紺とチェックの2タイプずつで、組み合わせ自在。2023年からはスラックス、2024年からは夏のポロシャツも導入され、動きやすいと生徒にも好評。中3から高2の希望者がシンガポール、マレーシア、カンボジア、アメリカ、オーストラリアなどを訪れ交流するプログラムが続けられている。