シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

横浜雙葉中学校

2026年01月掲載

横浜雙葉中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.横浜という立地がリアリティを生む社会科の授業

インタビュー2/3

授業で大切にしているのは気づきや驚き

授業を中心とした学校の活動についてお伺いしたいのですが。

山本先生 社会科は先取りをして、知識をたくさん覚えることには重きを置いていません。カリキュラム的にもあまり無理が無いように、急がずに進めています。授業の中でいろいろな資料や事例を提示し、それぞれの教員が自分なりのものの見方を紹介することを大切にしています。各教員がフルに自分の力や人間性を生かしてやっている、と言えます。

多くの資料や事例がとびかう形になるのでしょうか。

山本先生 多くの話を紹介して、でも通り一辺倒ではなく、違う見方もできるし、違う切り取り方もできるということに気づいてもらいたいと思って生徒に投げかけます。分析のスキルと言うより、気づきや驚きを社会科のテーマの中から引き出していきたいです。

社会科/宇野 真理先生

社会科/宇野 真理先生

なるべく身近に自分のこととして考える

教科書によく出ているような事柄であっても、別角度の資料を提供するということですね。それが入試問題にもつながっているのですね。

山本先生 そうですね。私の日本史の授業では、例えば平安時代など古い時代の話をするときに、その時代の国家の統治機構について説明し、こういう評価ができるだろうということを話します。そして加えて、今の現代の国家のあり方と、つながるところもあれば、全然違うところもある。そういう投げかけをよくしています。そういうことばかりを話しているとなかなか進まないのですが、今の中・高生は社会や社会問題への意識や関心は非常に高いので、だんだん自分たちで社会を切り取ることができていくはずだと思っています。

宇野先生 私は公民の授業の中で、教科書に出てくる内容や覚えた知識が、現実の社会で今この瞬間に動いていたんだということに気づいてほしいという思いのもとで話題に上げています。過去に起きたことが現在にどうつながっているかを知って、なるべく身近に、自分ごととして考えてもらえるよう、情報を提供するようにしています。

また、法律などを学ぶときには、「ルールを決めることはボーダーを決めることでもあるので、救われる人とどうしても外れてしまう人が出てしまうことにもなり得る」というように、そのルールがあることによる社会の多面的な見方について、考える時間を作るようにもしています。それは高校や大学で扱うような内容だと思うのですが、中学3年生の公民の授業でも折に触れて、考えてもらっています。

横浜雙葉中学校 図書館

横浜雙葉中学校 図書館

公民ではスクラップノートを実施

宇野先生 中3の公民ではスクラップノートの作成を1年間をかけて実施しています。自分が興味をもった新聞記事を切り抜いて、分析や調べ物を行うものです。授業の中で先ほどお話したような話をした後には、いろいろな裁判例や事件を切り口に、この法律の裏にはこういうことで困っている人がいるのではないか、という考察を加える生徒も増える印象があります。

スクラップノートとはどういうものですか。

宇野先生 ノート自体の指定はしていませんが「自分自身のモチベーションが上がるもの」をおすすめしています。市販のスクラップ用のノートを使っている生徒もいれば、普通のノートを使っている生徒もいます。基本的には、(左ページに)自分が選んだ新聞記事を貼ってもらい、右ページの使い方は生徒に任せています。ただ、歴代の先輩たちがいろいろと工夫した例があるので、初めにそれを見せています。生徒によっては、新聞スクラップに関するキャラクターを作って、そのキャラクターに必ず何か一言、コメントさせるようなまとめ方をして、一層深い、鋭い調べ学習につながっている生徒もいます。他にも、グラフや図を書く生徒などいろいろですが、高2、高3になって、志望理由書を書くときの参考にしたという生徒もいたので、必ず日付と新聞名を記載してもらっています。

横浜雙葉中学校 聖堂

横浜雙葉中学校 聖堂

社会への意識や関心を表現できる生徒も多い

山本先生 横浜雙葉の高校生は、見ていると学校生活のさまざまな場面で社会的な話題や問題を話し合い、まとめていることが多いので、そういう機会を社会科の授業の中であえて提供する必要はないなという気がしています。

高校の担任をしていると、大学受験のために、社会問題と関連づけて自分の志望理由書を書く生徒が多く、手伝うこともよくあるのですが、受験のために頑張って考え出してきたのだなと思うのと同時に、社会のことにいろいろな視点で考えられるようになっていると感じることが多いです。そんな時に、授業でいろいろな切り取り方やものの見方をして提示していることが、身になってるのだという実感はあります。

高2の校外学習は生き様に触れる旅

社会科全体で取り組んでいることはありますか。

山本先生 校外学習として中3は京都、奈良へ。高2は長崎に行って、被爆のことや、また本校はキリスト教の学校なので、キリスト教弾圧の話、潜伏キリシタンの話などに触れます。その事前準備としてロングホームルームなどで社会科の教員が話すこともあります。事前学習をやりすぎると先入観をもってしまうこともあるので、こういった問題について、どのような見方がされているのか、どのように考えうるのかを投げかけることが多いです。

現地では潜伏キリシタンが多かった地域も訪問するなど、キリスト教の学校ならではの、他の学校が行かないようなところにも行きます。また、教会で神父様からお話を聞いたり、世界遺産・国宝である大浦天主堂の一般の人が立ち入れないところにまで入れていただいたりしています。引率で一緒に現地へ行くと、生徒たちが「これ、授業で話を聞いたことだ」などと言いながら熱心に見ていて、うれしくなります。

吉田先生 中高の教育では「自分はどう生きるべきか」が大きなテーマになると思います。日頃から宗教の授業で神父様のお話を聞いたり、教員からも多くの話を聞いたりする一方、自分の生き方については迷いながら現地へ行くと思うのですが、長崎の地で聞くキリシタンのお話や、海外から日本にやってきて、日本人のために尽くしてくださった方々のお話など、いろいろな生き様を実際に見て感じるものや、聞いて感じるものがある校外学習になっています。

横浜雙葉中学校 校舎

横浜雙葉中学校 校舎

インタビュー2/3

横浜雙葉中学校
横浜雙葉中学校1872(明治5)年、創始者である幼きイエス会のマザー・マチルドが来日、横浜で教育と福祉活動を開始した。1900年に横浜紅蘭女学校を開校。その後、1951(昭和26)年に雙葉、1958年に横浜雙葉と校名を変更して現在に至る。2000(平成12)年には創立100周年を迎えた。
「徳においては純真に 義務においては堅実に」を校訓に、一人ひとりが自分を積極的に表現し、他の人と心を開いてかかわり、能力や資質を磨いて社会に役立てようとする「開かれた人」の育成を心がける。そのために「開かれた学校」を目指し、21世紀をたくましく生きるための知性と感性を伸ばす教育が行われている。
横浜港を一望する中区山手町のなかでも、最も異国情緒あふれる一角に位置する。敷地内の修道院跡地に、聖堂・視聴覚室などを備えた高校校舎と特別教室があるが、2003年には図書館やITワークショップなど、最新の情報技術やグローバル教育に対応した新校舎が完成。
45分×7時間授業で、どの教科も、思考力を養うものが多くなっている。特に英語はテキストの『プログレス』を軸に、中1から週6時間の授業や、外国人教師による英会話の授業など、非常に意欲的。数学は中1から数量と図形に分ける。中3から英・数は習熟度別編成となる。理科は実験が多く、生徒が興味を持てるよう組み立てられている。2期制なので、1年間は42週と公立中学の3学期制・35週より多い。定期テストは年4回だが、「小テスト」は随時各教科で行い、進度が遅れぎみの生徒には指名による補習も行う。高2から文系・理系に分かれ、幅広い選択制で進路に柔軟に対応。毎年東大に合格者を出すほか、難関私大にも多数の合格者を出している。医療系への進学者が多い。中3~高2の希望者にフランス語講座がある。
学校週5日制。年間を通じて朝の祈りや、講演会の放課後の自由参加の講座など自己を見つめる行事や企画も多い。文化祭をはじめ多くの活動が、生徒会を中心に計画される。クラブ活動は、文化部が20、運動部5のほか、聖歌隊やボランティアを行うTHE EYESという団体がある。ハイキング部、新聞部は全国大会にも出場する実績を誇る。しつけに厳しいといわれるが、教師たちは服装や持ち物検査は行わず、生徒たちが自分でけじめをつけて行動するよう求める。制服はジャンパースカート。2002年から夏季制服が登場。ブラウスは白と青、スカートは紺とチェックの2タイプずつで、組み合わせ自在。2023年からはスラックス、2024年からは夏のポロシャツも導入され、動きやすいと生徒にも好評。中3から高2の希望者がシンガポール、マレーシア、カンボジア、アメリカ、オーストラリアなどを訪れ交流するプログラムが続けられている。