シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

横浜雙葉中学校

2026年01月掲載

横浜雙葉中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.社会科は1つのワードから気づいたり考えたりする教科

インタビュー1/3

どこに気づくか。何に気づくか。

この問題の出題意図からお話しいただけますか。

山本先生 「ジェンダー」や「ジェンダーギャップ」は、今、世の中全体で話題になっているので、それをテーマにしてみたいという思いがありました。分野ごとにいろいろ差がある形で投げかけたことに関しては、ジェンダーギャップという問題を単にひとくくりにして考えるのではなく、分野や場面や場所によっても違うのだ、ということを考えてほしいという意図がありました。

例えば、このデータを見ると、経済と政治のギャップは大きいのですが、教育ではそれほどギャップが大きくないように見えます。ところが最近、「女子は地元の国公立に進学したほうがいい」とか、理系、文系でいえば、「女子は理系より文系の方が向いている」といった男女の性別の差によって進路のアドバイスや指導をされることがあるといったことが、話題になりました。だとすると教育でも場面によってジェンダーギャップが大きいとも言えます。ジェンダーギャップを題材にして、そうした関心を多くの人が持てるようになればいいと思っています。

社会科主任/山本 隆太郎先生

社会科主任/山本 隆太郎先生

この問題の正答率は5割弱

政治分野で女性進出が少ないという話題は、大人はよく耳にしますが、正答率はどうだったのでしょうね。

山本先生 正答率で言うと5割弱ぐらいでした。全体の平均点は少し上なので、他の問題と比べると若干正答率は落ちていると思います。

その要因は2つあるように思います。1つは、グラフを提示して少し大がかりに聞いてくることに対して、小学生が身構えてしまい、何を考えていいかわからない、ということがあったのではないか。もう1つは、世の中で話題になっているとはいえ、ジェンダーギャップの話は小学生にとって、少し距離の遠い難しい話題だったのではないかと思っていますが、いかがでしょうか。

先生方は、もう少し点を取れると予想していましたか。

山本先生 問題を作っているときに、この問題ですごく点を取れるとは思っていませんでした。ただ、この問題に限らず、「誰も点を取れない問題を作るのはよそうね」という話はいつもしているので、5割弱取れていれば、出してよかった問題だったと考えています。

小学生がイメージできるように検討を重ねた

宇野先生 私は生徒会の担当をしていますので、「ジェンダーギャップ」はよく、生徒会の生徒たちが他校の生徒会と行うディベートのテーマなどで取りあげるものなので、小学生には小難しいテーマでも中学、高校になれば興味関心が出てくるのだろうと思っていました。

それから、ここに出てくる数値についてですが、この数値がどのような計算によって出てきたものなのか、詳細を載せることも考えたのですが、そうすると小学生にはなじみのない言葉が多く出てきてしまい、イメージを作りにくそうだったので、詳細は載せず、大きな枠組みの中で、小学生がどのくらいイメージできるのかということを考えて出題しました。

小学生にはグラフにある条件をきちんと把握して答えようとする姿勢が必要ですよね。

山本先生 はい。グラフだけでなく文章の資料をふまえて答えてもらう問題も時々出すのですが、そこに出されている文章もきちんと条件や内容を把握して答えを考える必要があります。文章の資料が問題として出されているのは、そこから何か考えてほしい、答えにつなげてほしいという意図があって載せていますので、すみずみまでよく読んだ上で答えを考えてほしいですね。問題を作っている時も、答えをいろいろ想像しながら作っています。

横浜雙葉中学校 正面玄関

横浜雙葉中学校 正面玄関

日本の政治や経済の数値が低い=良くないだけで終わらせない

比較の対象をメキシコとアイスランドにした理由を教えてください。

宇野先生 この大問全体のテーマが「選挙イヤー」になっていまして、「選挙」という切り口でを考えたときに、ちょうど、メキシコとアイスランドで国政選挙があったからです。

アイスランドはジェンダーギャップの少ない国なんですね。

山本先生 よく取り上げられるのが内閣の閣僚の集合写真で、この2国は女性が多いですよね。

日本は全然下なんですね。

山本先生 この数値で見ると相当低いですよね。ただ、この数値だけで論じていいかどうかは、また別問題だと思うのです……。この問題で社会科として大切にしたいのは、政治は良くなくて健康は良い、といった結論よりは、さまざまな指標や数値を使うことで社会のいろいろな面が見えてきて、そこから社会について考えることができるということに気づくということです。

できるかぎり世の中の話題について聞きたい

では、この設問を超えて、社会科の入試問題全体の構成や全体に関する考え方についてお伺いしたいのですが、いかがでしょうか。

山本先生 例えば、法律、税金の問題や安全保障の問題について詳しいとか、身のまわりの世の中のこと、歴史のこと、世界のことでもいいのですが、社会問題について、ちょっと背伸びしてでも考えられる子は、社会科としては大歓迎なので、世の中で話題になっていたり、ニュースになっていたりする時事問題的なものは、出題したいと思っています。

また、グラフや資料も、世の中を考えるときには必要です。自分なりにその文章やデータなどを読み取って、こうなのかな、ああなのかな、と考えることが社会を理解することの第一歩だと思います。そうした面を試験でも聞いてみたいので、資料などを使った問題を少しでも出したいと思っています。

大問はいつも3題構成ですか。

山本先生 そうですね。決めているわけではないのですが、だいたい歴史、地理、公民の順で出題しています。原則として各分野をバランスよく、ほぼ均等に出させていただくことを心がけています。

吉田先生 受験生にとっては、たぶんいつもと同じ形のほうが安心できますよね。

はい、そうですね。少し大きめの記述問題を1題入れていましたよね。

山本先生 そうですね。(記述問題は)本当はもっとたくさん出したい気持ちもあるのですが、なかなかそうはいかないところがあります。受験なので公平に採点しなくてはいけないので、問題を作る時から、採点する時のことを考えて作っています。そうすると、そこまで多くの記述問題は用意することができません。

宇野先生 いつも教員たちで問題を作っているときに、「社会科的な見方や考え方が特にできる子には、社会科ボーナス得点をあげたくなるね」ということが話題になります。特に優れた解答にはプラス50点あげたくても現実的には他の問題とのバランスもあってできませんが。
また問題の中に面白い、興味深い資料を使うことも意識しています。より良い資料を探したり、選んだりすることは私たち、社会科の教員にとっても楽しくて、問題を作ることが私自身の学びでもあると思っています。

横浜雙葉中学校 中庭

横浜雙葉中学校 中庭

記述問題では、聞かれていることに答えること

今年の1回目の大問1-問15の記述問題の採点についてお話しできることがあればお願いします。

山本先生 資料にある幅広い要素を含めて答えてほしいのですが、試験では時間的なこともあるので、なかなか難しいかもしれません。資料をよく読むと、ただ単に戦争で乱暴行為があるんだということだけではなく、乱暴行為がある種の褒美のような形で許されていることもあるのだとも読み取れますし、軍隊が意外と大名の言うことを聞いてくれなくて困っている、軍隊の統制を取るのが難しいというところも、気づこうと思えば気づけると思います。

また、戦争の話とは少し離れて、最後のところで、神様の名前がたくさん出てくると思うのですが、昔の人が神様をすごく大切したというのも1つの読み取りだと思うんですね。その辺が出題する側も面白いなと思っていて、どういう答えが返ってくるのかなと期待しながら出しました。

採点が難しそうな問題ですよね。

山本先生 基本的には問われていることに、ずれずに答えられていれば、なるべく丸をつける形にしていますので、一般的な採点とあまり変わりません。受験生の皆さんも心配せずに答えてほしいです。

受験生は結構書いていましたか。

山本先生 結構書いてくれていました。小学生なので言葉足らずに感じる解答もあるのですが、こういうことを言いたいんだな、ということを汲み取れる範囲のものも丸をつけています。文章を書くことに、苦手意識があるのか、書かない子も時々いますが、そういう子は毎年ほんの数える程度です。多くの受験生は何かしら書いてくれます。

横浜雙葉中学校 校舎内

横浜雙葉中学校 校舎内

インタビュー1/3

横浜雙葉中学校
横浜雙葉中学校1872(明治5)年、創始者である幼きイエス会のマザー・マチルドが来日、横浜で教育と福祉活動を開始した。1900年に横浜紅蘭女学校を開校。その後、1951(昭和26)年に雙葉、1958年に横浜雙葉と校名を変更して現在に至る。2000(平成12)年には創立100周年を迎えた。
「徳においては純真に 義務においては堅実に」を校訓に、一人ひとりが自分を積極的に表現し、他の人と心を開いてかかわり、能力や資質を磨いて社会に役立てようとする「開かれた人」の育成を心がける。そのために「開かれた学校」を目指し、21世紀をたくましく生きるための知性と感性を伸ばす教育が行われている。
横浜港を一望する中区山手町のなかでも、最も異国情緒あふれる一角に位置する。敷地内の修道院跡地に、聖堂・視聴覚室などを備えた高校校舎と特別教室があるが、2003年には図書館やITワークショップなど、最新の情報技術やグローバル教育に対応した新校舎が完成。
45分×7時間授業で、どの教科も、思考力を養うものが多くなっている。特に英語はテキストの『プログレス』を軸に、中1から週6時間の授業や、外国人教師による英会話の授業など、非常に意欲的。数学は中1から数量と図形に分ける。中3から英・数は習熟度別編成となる。理科は実験が多く、生徒が興味を持てるよう組み立てられている。2期制なので、1年間は42週と公立中学の3学期制・35週より多い。定期テストは年4回だが、「小テスト」は随時各教科で行い、進度が遅れぎみの生徒には指名による補習も行う。高2から文系・理系に分かれ、幅広い選択制で進路に柔軟に対応。毎年東大に合格者を出すほか、難関私大にも多数の合格者を出している。医療系への進学者が多い。中3~高2の希望者にフランス語講座がある。
学校週5日制。年間を通じて朝の祈りや、講演会の放課後の自由参加の講座など自己を見つめる行事や企画も多い。文化祭をはじめ多くの活動が、生徒会を中心に計画される。クラブ活動は、文化部が20、運動部5のほか、聖歌隊やボランティアを行うTHE EYESという団体がある。ハイキング部、新聞部は全国大会にも出場する実績を誇る。しつけに厳しいといわれるが、教師たちは服装や持ち物検査は行わず、生徒たちが自分でけじめをつけて行動するよう求める。制服はジャンパースカート。2002年から夏季制服が登場。ブラウスは白と青、スカートは紺とチェックの2タイプずつで、組み合わせ自在。2023年からはスラックス、2024年からは夏のポロシャツも導入され、動きやすいと生徒にも好評。中3から高2の希望者がシンガポール、マレーシア、カンボジア、アメリカ、オーストラリアなどを訪れ交流するプログラムが続けられている。