シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

サレジオ学院中学校

2026年01月掲載

サレジオ学院中学校【算数】

2025年 サレジオ学院中学校入試問題より

ある会社が管理する高速道路では、「時速40km以下で低速走行あるいは停止発進を繰り返す車列が、1km以上かつ15分以上継続した状態」を渋滞(じゅうたい)といいます。渋滞の説明にはある程度の幅があるため、渋滞の長さが同じ「渋滞3km」でも渋滞具合は異なります。そこで、その会社では、図1のような表示板で、渋滞の長さと渋滞を通過するのにかかる時間で渋滞具合を表しています。
また、図2の表示板のように、渋滞区間の車列の長さと現在地から主要な場所までの所要時間を交互に表示することで、渋滞具合を表すこともあります。

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この問題では、渋滞具合を次のように考えます。

まず、渋滞区間における平均速度を比べて、それが遅い場合をより激しい渋滞とします。
それが同じ場合、渋滞している区間が長い場合をより激しい渋滞とします。

このとき、次の問いに答えなさい。
ただし、渋滞している区間以外の高速道路では、車は時速90kmで走行するものとして計算しなさい。また、一般道路と高速道路をつなぐ出入口をICと表します。

(問1)次のア~オは、図1のような表示で、渋滞具合を表しています。
この中で最も激しい渋滞を選び、記号で答えなさい。
ア 3km10分
イ 4km20分
ウ 6km25分
エ 8km40分
オ 10km45分

(問2)空らん にあてはまる数を答えなさい。
図2の表示板は、太宰府ICから24kmの距離にある高速道路上の地点Aで表示されているものです。渋滞がなければ地点Aから太宰府ICまで分で着きます。
しかし、実際は30分かかるので、渋滞が起きていることが分かります。そこで、渋滞具合を図1のような表示で表すと「3km分」となります。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、このサレジオ学院中学校の算数の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

(問1)エ

(問2)①16分 ②16分

解説

(問1) 

渋滞具合を比べるとき、まずは渋滞区間の平均速度を比べます。

ア 3÷\(\frac{10}{60}\)=18(km/時)

イ 4÷\(\frac{20}{60}\) =12(km/時)

ウ 6÷\(\frac{25}{60}\) =14.4(km/時)

エ 8÷\(\frac{40}{60}\) =12(km/時)

オ 10÷\(\frac{45}{60}\) =13\(\frac{1}{3}\)(km/時)

このうち、最も遅いのは、イとエの12km/時です。

次に、渋滞区間の平均速度が同じ場合、渋滞区間を比べて、長い場合をより激しい渋滞とします。つまり、イとエのうち、区間が長いのはエの8kmの方です。よって、最も激しい渋滞は、エの「8km40分」となります。

(問2) 

①渋滞がなければ、車は高速道路を時速90kmで走行します。
つまり、24km先の大宰府ICまで、24÷90×60=16(分)で着きます。

②渋滞区間を通過するのにかかる時間を求めます。
渋滞区間は、表示板より、3kmです。
つまり、24-3=21(km)は渋滞がないため、車は時速90kmで走行します。
渋滞がない区間を走行するのにかかる時間は、21÷90×60=14(分)です。
よって、渋滞区間を通過するのにかかる時間は、30-14=16(分)です。
したがって、この区間は「3km16分」と表示されます。

日能研がこの問題を選んだ理由

「渋滞」にまきこまれると、たいていの人はマイナスの気持ちを持つでしょう。しかし、高速道路の表示板のおかげで、そのマイナスの気持ちが少しやわらぐことがあると思いませんか?

例えば、「ここから渋滞11km45分」という表示を見たら、「この渋滞から45分で抜けられるんだ」と見通しを立てることができるので、安心感につながります。また、「この先渋滞3km」「インターチェンジまで30分」という表示を見たら、「もうすぐ渋滞なら、少し速度を落とそう」とか「お手洗いに行っておこう」など、気持ちや行動を整えておくことができます。また、表示を見比べて「こっちの渋滞の方がマシだから、こっちに行こう」などの判断をすることもできます。

このように、渋滞が始まる場所で「渋滞の長さと、通過するのにかかる時間」を示したり、渋滞が始まる手前の場所で「渋滞区間の長さと、現在地から主要場所までにかかる時間」を示したり、表示板の表し方は様々です。

ところで、「激しい渋滞」とは、いったいどのようなものなのでしょう? 渋滞は、距離が長い方がより激しいといえるのか、それとも、時間が長い方がより激しいといえるのか。どちらも渋滞をもたらす要素といえるので、激しさを比べようとするには、比べるための基準を設ける必要があります。

今回の問題は、渋滞についての様々な情報を読み取り、どちらの方がより激しい渋滞といえるのかを考える出題です。問題文中に渋滞具合の基準が提示されていて、(問1)はその基準に沿って、最も激しい渋滞を選択します。(問2)は、ある表示の仕方を、別の表し方をするとどうなるかを考えます。

この問題に取り組んだ受験生は、渋滞の表示板を見たときに「どのくらいの激しさの渋滞なんだろう」と、意識するようになるのではないでしょうか。そして、渋滞について、もっと深く考えてみたくなったりするかもしれません。日常生活と算数の接点をうまく引き出した、興味深い問題として、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。