出題校にインタビュー!
学習院女子中等科
2025年12月掲載
学習院女子中等科の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
2.理科の入試問題形式は長年大きく変わっていない
インタビュー2/3
続いて全体構成の話なのですが、理科の問題はいつも綺麗に2ページに収まっていて、この中にたくさんの考えどころや解かなければならない問題が収められているのはすごいと感じます。2ページに収めるのは伝統となっているのでしょうか?
また記述問題も多いと感じますが、昔からたくさん出題しているのでしょうか?それとも近年増えてきたのでしょうか?
増渕先生 入試問題は昔からずっと2ページ構成で作成しています。来年以降変わらないと断言はできませんがおそらく変わらないと思います。また記述問題に関しても昔から出題していますので、今に始まったことではありません。
理科の場合、「記述問題を必ず〇割作ってこよう」と打ち合わせをして問題を持ち寄っているわけではないですが、結果として例年の形式になっているのかなと思います。先ほど髙橋先生も話していましたが、採点の揺れもありますので、最後まで解答を見ていったのちにもう1回立ち返って見返すことはあります。
本校の場合は合格発表が入試の翌日なので、受験生や保護者の方から「もう少し早くできないか?」といった意見も頂戴しています。ただ、教科の先生が受験生の答案全部に目を通すとなると、当日に合否判定できるとは言えないところがあり翌日発表とさせていただいています。どの教科も答案を書いた受験生のことを思って丁寧に読みとっています。
理科全体の入試問題を作る上で大切にしていることはありますか?
栗原先生 皆さん勉強して準備をされて受験に臨まれているわけですから、それが少しでも報われるようにといった想いはあります。ですから、見たことがないものが題材であっても、これまで勉強してきたことと組み合わせて答えが出てくるようなものであったり、小学校の教科書に載っている問題だったり、受験生が入試問題に取り組んだときに「これ見たことある」とか「勉強してきたことだ」というものを発揮できる問題を交えながら作問する点は意識しています。
見たことあるものばかりだとつまらないですし、30分と60点といった縛りがある中で、受験生がこれまでに積み上げてきたものをどうやって出してもらえるかを考えて作問しています。
理科/増渕 哲夫先生
理科教員が総出で作り上げる入試問題
作問においてですが、一人の先生がというわけでなく、同じ分野の先生方でやりとりしながら「このテーマについてはこういう聞き方ができそうだ」みたいに練りながら最終的な形にしていくのでしょうか?それとも分野を超えたやりとりとかもあるのでしょうか?
増渕先生 入試問題に関しては、理科教員みんなで持ち寄って全員で検討します。全部の分野をみんなで見てだんだん形にしていきますが、専門の教員だと逆に気づかないこともあるので、他分野の教員がまっさらな目で見て、「この聞き方だとよくわからない」とか「こういう扱いをしていいのか?」といった意見をもらいながら作問していきます。
リード文や問いかけの言葉の選択は、注意深く検討されているのでしょうか?その際に何か気を付けている点はありますか?
増渕先生 過去にどういう形式の問題だったというのはお互いみんな分かっていますので、そういった点をベースにして新しいものを取り入れています。結果として唐突な形になることはなく、使っている語彙も過去のものと照らし合わせて整合性があるものを使っています。
進度より深度を大事にした教育方針
増渕先生 学校の教育目標のひとつとして、「進度よりも深度」を大切にしています。もちろん、ある程度「進む」ことも必要ですが、先生が一方的に話すだけでは、実の伴った「深さ」はなかなか実現できないと思います。やはり思考を深めていく部分では、じっくり考えさせるためにこちらも噛み砕いて、あるいは様々な方向から対象に迫って深みに持っていくところまで授業を行っています。
もちろん基礎的なところである程度早く進まないといけないところはパパッと進みつつ、「ここは」というところでしっかり考えさせるようにするイメージですね。
「進度より深度」というのは、皆さん共有されているのですか?
増渕先生 各教室にその言葉が貼ってあるわけではないですが、学習院女子中等科・高等科の授業は浅い内容では価値がないと思っています。生徒も学習意欲のある子たちが入学してきますから、科目に関わらず普通のことについては十分に分かっている子が多いと思います。
そこでさらに生徒に「面白い」と思ってもらうには、もう一段深い内容を教えていく必要があります。それぞれの教員が深さに誘う方法は様々ですが、深さを追求する点については、各々が意識をしながら教材研究をしたうえで展開されていると感じています。
髙橋先生 私は現在、中1と中2、高3で授業を持っていますが、高3は大学入学後にやってみたい自分の研究テーマがあったり、もう少し先の将来まで考えたりするので、私自分が経験してきた研究テーマや今現在取りざたされている研究テーマなどをなるべく話すようにしています。
授業では、教科書レベルの内容説明だけで終わらないように、なるべくいろいろなことを思い浮かべながら、自分の生活のどことつながっているのかを考えてもらったり、将来思い出してもらえたりするといいな、と思いながら日々授業を行っています。
自分が生徒のときに授業で行って楽しかった実験を今の生徒たちにも伝えていきたい
栗原先生 私は中3と高2を担当しています。中3は社会科の公民とからめて、例えばノーベル賞とかイグノーベル賞などが取り上げられると、理科的にはどういう研究で賞をもらっているのかなど少し深掘りをしていきます。リチウムイオン電池が話題になった時は、ちょうど電池を学んでいる時だったので、どういう仕組みでどこがすごいのかといった解説を1コマの授業内でずっと説明したこともありました。
高2に関しては、彼女たちが中学生の時はコロナで実験が思うようにできなかったこともあり、1学期は2時間続きの授業のうち、最初の1時間は講義を、次の1時間は実験で確認するといったことをひたすら行っていました。そこで実験の腕もかなり磨かれたことでしょう。
私は本校の卒業生なのですが、自分が生徒のときに行った実験を思い出して授業で展開することもあります。中等科でも高等科でも授業中にたくさん実験をしていたので、それらをできるだけ引き継いで提供していけたらいいなと思っています。
先生が通っていた頃と今の学校の雰囲気は似ていますか?
栗原先生 当時は「進度より深度」という言葉はありませんでしたが、専門分野を深く掘り下げる先生がたくさんいらっしゃって、「この先生はここのところにすごく時間をかけるよね」といった部分は今でも生き続けていると思いますね。
理科/栗原 ゆきの先生
理科でも書くことに十分な時間を取るような形の授業を実践
書くことは理科でも大事にしているのですか?
髙橋先生 そうですね。私は高校生の授業をプリントで進めていくのですが、プリントのどこかに生徒が時間を取って考えたうえで記述するような課題を設定しています。もちろん、どうしてもただ説明をするだけになってしまうような単元もありますし、問題集に載っているような問題を載せるだけのこともありますが、できるだけ身近で疑問に思えるような課題を拾ってきて、考える時間・書く時間も取れるようなプリントを作成するよう心掛けています。
理科の中でも各先生によって学習進度は異なるのですか?
髙橋先生 理科に関しては、分野では分けているものの縦割りはしていないです。たとえば、週で4時間理科があったら3時間私が授業をして、1時間はもう一人の教員が授業をしています。
増渕先生 英語などは時間数が多いため、学年の全クラスを持って教えるということはできません。その分密な話し合いをされていますね。
確かに進む方の進路は合わせることはできても、深さを合わせていくのは人それぞれですので難しいですよね。
生徒には考える力を付けてあげたい
授業の中でされている発問(問いかけ)ですが、どのような力を育てたいと思いながら事前に準備されているのでしょうか?
髙橋先生 「比較ができるようになる」「条件を考えられるようになる」「仮説を立てられるようになる」といった力が、らせん的に小学生から中学生、高校生でも育てていきたい力です。そういった力を成長させながら、併せて発想力や想像力、問題解決能力も付けられるようにしていきたいですね。
あとは、考える時間があるのとないのとでは大きな差が生まれると思っているので、考える時間を与えてあげたいですね。「この問題は考えてくれるけどこっちの問題は考えてくれない」といったことはありますし、常に考えてくれる子もいれば、他の生徒の考えていることを聞いているだけの子もいます。わざわざ考える時間を取ってあげないと考えることをしない生徒も少なくないので、いろいろな発問を通して一瞬でもいいから考えてくれたらいいな、いろいろな角度から物事を見て取れるようになってもらいたいな、と思って授業に取り組んでいます。
実際に「考える力がついたな」というのを、授業の中で具体的に感じられることはありますか?
髙橋先生 中1の最初の頃には全然手が進まなかった生徒や何を考えたらいいのかわからなかった生徒が、中2になった途端、生物の授業をしている最中に倫理的な質問をしてくることがあったり、「地理でやっていた内容とこの部分が一緒だったんですけれど、これは考え方として合っていますか」といった理科だけに限らない質問をしてくれたりした時には、「いろいろ準備してやってきてよかったな」と感じました。
左:生徒たちが作成したたくさんのレプリカの中に本物の化石が1つだけ混じっている/右:図書館を建てる際に行われた本校のボーリング調査の結果を本物の岩石と共に地学教室前の廊下に展示
インタビュー2/3
1847(弘化4)年、京都で開講された公家の学習所がその起源。1885(明治18)年に華族女学校開校、創立140年を迎える。1906年学習院と合併し、学習院女学部となる。1918(大正7)年に学習院から女学部が分離して女子学習院となる。1947(昭和22)年、宮内省の所管を離れ、私学として現校名に。1999(平成11)年から高校募集停止。