シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

中村中学校

2025年12月掲載

中村中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.小学生にとっての「ウェルビーイング」を聞いてみたかった

インタビュー1/3

自分の言葉で表現できるかを問う問題

この問題の出題意図からお話いただけますか。

菊地先生 この5行問題は、文学的文章と説明的文章のどちらかで出題しています。どちらで出すかは決めていません。毎回テーマも題材も変わります。今回は説明的文章で5行問題を作りました。そのときに、「ハピネス」はともかく、「ウェルビーイング」という言葉は、世の中ではよく目にする言葉ですが、小学生にはあまりなじみがなく、初めて聞く子も多いのかなという気もしました。それでも出題したのは、知っていてほしい言葉だと思ったからです。それが出題意図の一つでした。説明文を出題するときは、読んでためになるような文章を心がけて選定していますので、小学生には難しいかなと思いましたが、これから目にするであろう言葉をまず知ってほしかったのです。
もう一つは、そういう難しい言葉でも、本文をじっくりとゆっくり読んでもらえれば、受験生なりに理解はできるだろうというところでしたので、ウェルビーイングを分かって、それが自分の言葉で表現できるかを問いたいと思いました。
これらは、5行問題に共通している意図になります。

5行問題は、だいぶ前から、出題されていますよね。文学的文章と説明的文章のどちらで出題するかは、どのように決めているのですか。

菊地先生 題材を選んでから決めています。5行問題を念頭に、ということはなく、国語科の専任の教員が入試に適した作品を選んで、文学的文章を1つ、説明的な文章を1つを持ち寄ります。

真壁先生 10名ほどの教員が大問2番用、大問3番用をワンセットにして持ってくるので、20個ほど文章が集まったところから作問が始まります。分量や、内容の語彙の難しさなどから、入試問題として使い勝手がいいものかどうか、どこを使いたいか、みたいなことを議論して絞っていきます。5行問題を1つ出すというのは形として決めていますので、題材を絞っていく中で、並行して5行問題を書かせることができるかどうかも話題に上ります。文学的文章と説明的文章の組み合わせも考えながら、最終的に決めていくという感じです。

国語科/菊地 貞志 先生

国語科/菊地 貞志 先生

概ね「ウェルビーイング」を理解できていた

この問題に関する受験生の反応はいかがでしたか。どのような解答が多かったでしょうか。

菊地先生 解答例を書いていただきましたが、実際にそういう反応も多かったです。「継続するのがウェルビーイングだよね」というとらえ方です。一方「嬉しくて、わっと気分が上がる、一過性で終わるものはハピネスだよね」というようなとらえ方をしている受験生が多かったと思います。
残念ながら白紙の受験生もいました。あとでやろうと思っていたら、時間が間に合わなかったとか。そういうところの差は出ましたが、概ね一生懸命考えてくれた様子を感じることができました。受験生がこの文章を読んで、そういうことに気づいてくれれば十分だと思います。受験勉強をすることによって、周りの気遣いなどに気づけるようになってくれたら嬉しいですね。

差し支えなければ、正答率を教えてください。

菊地先生 10点満点の問題で、トータルの平均は5点弱という感じでした。採点はなるべく1人の教員が行うようにしています。ある程度の分量(4行以上)で説明できているか。ウェルビーイングについて書かれているか。そのために何を努力をしているか。大体そういう項目で点数化していきます。

真壁先生 5行問題の採点の仕方はある程度決めていて、A(10点)・B(7点)・C(4点)・D(0点)、4段階の基礎点評価で採点していきます。大体複数の要素を求めていることが多いので、複数の要素をきちんと答えられているか、というところで見ていきます。さらにそこから分量の問題や誤字脱字などがあれば減点して、最終的な得点をつけていきます。

今回の場合でいえば、①具体的なウェルビーイングの状態、②そのためにどのように注意して生きていこうと思うか。その2点を聞いているので、「その問いに答える形で書いてください」と説明会等ではお伝えしています。例えば、失敗の話だった場合は、あなたが今までに失敗したことを具体的に挙げて、そうならないようにするにはどうしたらいいですか、という問い方をするので、その答えに肉付けをした形でまとめて、書いてもらえれば大丈夫です。

中村中学校 教室

中村中学校 教室

入試でも読んでためになる作品を選びたい

毎年の定番の問題なので、楽しみにしている受験生もいると思います。

菊地先生 そうですね、説明的文章を選ぶ段階で、受験といえども、国語で文章を読んでもらうのであれば、読んでためになる作品を選びたいというポリシーがずっと昔からあります。そこを受験生に受け取ってもらえるかどうかはわかりませんが、何かを得られたり、新しい発見があったり、勉強になったり、ホッとしたりする文章を採用したいというのは、共通認識としてあります。

真壁先生 国語科の教員の中には、割と新しいものをどんどん読んで題材を選ぶのが得意な人もいれば、少し時間は経っているけれど読ませてみたいなということで、古典的なというか、名作を持ってくる人もいます。多彩な作品を織り交ぜて選ぼうと思っているので、純粋に文章としていいものになってきます。毎年、この時期になると、「これがいいんじゃないか」「あれがいいんじゃないか」「これとこれを組み合わせるといいんじゃないか」みたいな議論を十分にやるので、結果的に新しいものに偏らず、納得のいく題材選びができているのではないかと思います。

中村中学校 校舎内

中村中学校 校舎内

問われていることが書けていれば◯

記述問題では論理的であるかどうかを採点のポイントに挙げる学校が多いような気がするのですが、その辺はいかがですか。

菊地先生 特に論理的であるかどうかだけを重視しているわけではありませんね。

真壁先生 5行問題の採点者を固定しているわけではないんですね。この文章を持ってきた人、作問した人がこの問題の採点を担当することが多いのですが、その時の出題の流れによるのかなと思います。本文の展開を重視した上での5行問題のときもあって、その場合はやはりそこをちゃんと踏まえているかが1つポイントになってくると思います。
ただ、結果的に本文で言っていることと一致させていなかったとしても、発想を広げて書けていて、それが評価できることもあります。文学的文章の時はそういうパターンが結構あるのですが、そういう場合は論理性というより、自分が書いた文章の理由付けがきちんとできているか、などがポイントになってくるので、形は5行問題ですが、その時の設問によって採点のポイントは変わるかなと思います。

今回のウェルビーイングの問題では「持続性」がないといけないですよね。

菊地先生 そうなんです。現実にそれができるかどうかはちょっと置いておいて、1番多かった答えは、「友だちや家族とずっと仲良く生活していく」というものでした。そのための注意点として、「自分自身の健康を維持する」「生活習慣をきちんとして病気をしない」などと書いている子が多かったです。

「5行問題」は10年出し続けて定番問題に

5行問題の平均点は今回が5点弱ということでしたが、例年は何点ぐらいなんですか。

真壁先生 例年でも同じくらいじゃないですか。

菊地先生 特に今年はよくできたとか、できなかったとかという印象はないので、例年半分あたりじゃないかと思います。平均点が極端に2点、3点になることはないですね。

5行問題は10年ぐらい出されていると思うのですが、受験生の反応や、書く分量、あるいは内容に変化を感じていることはありますか。

真壁先生 5行問題を始めたときは私が教科主任で、当時、自分の考えを書くような出題が少しずつ出てきたような状況でした。国語科でもちょっとやってみようか、という軽い気持ちで考え始めたような記憶があります。「◯か×かではなく、△をつけるので、とにかく一生懸命書いてほしい」というようなことを、すごく一生懸命、説明会などでお話していたことを思い出します。その当時と比べると、毎年出し続けているので、受験生の5行問題への抵抗感が薄れたというか、浸透したのかなという感じはします。一方で、受験業界の動きもこの10年で結構変わってきていて、本校の立ち位置というか、募集の状況も変わってきている感じがします。

今年の夏の説明会で、この問題の解説をしたときに、「一般受験を考えている」というお母さんから、「『記述が苦手で、5行問題はもう間に合わないし、大変だから捨てなさい』と塾に言われたのですが、捨てたほうがいいのでしょうか」と言われたんですね。あわてて「捨てないでください」と言いました。お母さんも「そうですよね」みたいな反応でした。「話を聞いていたら、捨てなくていいような気がして……」とおっしゃっていました。入学してから結構書く機会が多いので、一生懸命書いてほしいです。

中村中学校 校舎内

中村中学校 校舎内

インタビュー1/3

中村中学校
中村中学校明治36(1903)年、渋澤栄一と並ぶ明治屈指の実業家中村清蔵により、私立深川女子技芸学校として創立される。初代校長に女子教育の第一人者戸野みちゑを迎え、小名木川のほとりに校舎を新築し、現在の中村学園の前身である中村高等女学校として開校したのが明治42(1909)年。教育機関が乏しかった大正時代に”下町の華族学校、中村”の基礎が築かれた。
関東大震災、東京大空襲などにより校舎を3度焼失しながらも、まさに不死鳥の如く復活を遂げ、創立時と変わらぬ精神のもと常に時代のニーズを捉えた変革を続けながら未来を見通した教育を追求してきた。現在、緑豊かな清澄庭園を臨み、落ち着いた環境のなかで6年間のびのびと過ごせる。本館最上階にある図書室「コリドール」からは四季折々の自然風景が楽しめ、東京スカイツリーも見ることができる。
授業時間を確保し、学力を向上させる週6日制。1年生後期から数学・英語の習熟度別授業を導入されている。4年生からは、目的に応じたコース制を採用している。全教員が2~3人の生徒をチューターとして受け持ち、面談等を通じて有効なアドバイスをしながら、進路決定まで担任と二人三脚でサポートする。学習環境等、諸般の事情により家庭で集中して学習できない生徒は、夜の8時まで自学自習の場所と機会を提供する制度もある。
朝のホームルームのうち10分間は「朝読書」の時間。静かな時が流れたあと、落ち着いた雰囲気で1時間目の授業がスタートする。さらに週に1度、洋書の日を設け、多読が推奨されている。また、「読書ノート」を活用し、感じたことや考えたことを言葉にして書き記すことで、インプットしたことを深化させる読書体験を積み上げる。
中学2年が全員参加する「国内Winter School」は、「深川めぐり」を土台とし、歴史(江戸、中村学園)・人物(松尾芭蕉・伊能忠敬)・食文化(深川めし)・文化(祭り・相撲)・隅田川といったテーマを設定し、英語で紹介する3日間のプログラム。2日目に、フィールドワークとして地元深川を外国の方に案内する。各グループに1人のネイティブの教員がつき、スピーキングトレーニング・発音リスニングトレーニング・プレゼンテーションの仕方・テーマ別学習を行い、最終日には英語でプレゼンテーションも実施する。Reading・Listening・Writing・Speakingの4技能だけでなく、コミュニケーション力・プレゼンテーション力をも磨く。中学2年・3年希望者参加 の11日間のプログラムとして、8月の11日間、アメリカ・コロラド州デンバーの現地校などを訪問する「海外SUMMER SCHOOL」もある。基本的に現地学生の家にホームステイし、同じ生活体験を通して活きた英語を体得する。
部活動も盛んである。全国優勝30回以上を誇る伝統あるバレーボール部をはじめ、11の運動部があり、文化部は、吹奏楽や演劇、ハンドベル、中村ならではのボランティア等、15ある。文化祭「清澄祭」は、英語発表会のEnglish Dayを含む盛りだくさんな3日間で、クラスや学年、部活動など活躍の場がたくさんある。