シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

共立女子中学校

2025年11月掲載

共立女子中学校【社会】

2025年 共立女子中学校入試問題より

共子さんのクラスでは, お楽しみ会の3つの案について順位をつけて投票してみました。
クラスの人数は40人で, 以下はその結果です。後の各問いに答えなさい。

〔第1希望:ドッジボール 第2希望:ビンゴ大会 第3希望:映画鑑賞 〕……… 19人
〔第1希望:映画鑑賞 第2希望:ビンゴ大会 第3希望:ドッジボール〕……… 13人
〔第1希望:ビンゴ大会 第2希望:映画鑑賞 第3希望:ドッジボール〕……… 8人

(問1)この結果をふまえて決める時, お楽しみ会でおこなう内容にどのような違いが出ると考 えられますか。次の文の空らんにあてはまるものの組み合わせとして, 正しいものを後のA~Dから1つ選び, 記号で答えなさい。

  • 最も多くの人が第1希望に選んだものにするのであれば, になる。
  • 第1希望に選んだ人が多かった2つの案に絞って再び投票をするならば, になる可能性が高い。
  • 第1希望に3点, 第2希望に2点,第3希望に1点を配点するならば, 最も得点が高くなるのはである。

(A)〔あ:ドッジボール い:ビンゴ大会   う:映画鑑賞〕
(B)〔あ:ドッジボール   い:映画鑑賞    う:ビンゴ大会〕
(C)〔あ:ビンゴ大会      い:ドッジボール  う:映画鑑賞 〕
(D)〔あ:ビンゴ大会  い:映画鑑賞    う:ドッジボール〕

(問2)お楽しみ会で何をするかについて, 公正・公平という観点からあなたはどのような決め 方が良いと考えますか。理由とともに説明しなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この共立女子中学校の社会の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

(問1)B

(問2)1人1票という公平な条件なので、多数決の結果にしたがって決定するのがよい。

解説

(問1)
まず、には、第1希望をドッジボールとする人数が一番多いことからドッジボールが入ると考えられます。

次に第1希望が多かった2つの案というのはドッジボールと映画鑑賞ですが、第1希望にビンゴ大会を選んだ8人の第2希望は映画鑑賞であることから、これら8人は映画鑑賞に投票する可能性が高いと考えられます。そのためには映画鑑賞が入ると考えられます。

第1希望に3点、第2希望に2点、第3希望に1点を配点して計算すると、ドッジボールが78点、映画鑑賞が74点、ビンゴ大会が88点となり、にはビンゴ大会が入ると考えられます。

(問2)
「公正」・「公平」という言葉には、判断にかたよりがないこと、といった意味があります。クラスにいるさまざまな意見の人、例えば、ドッジボールを第1希望にした人にも、第3希望にした人にも「自分の意見が受け止めてもらえたのだな」と納得してもらえる決め方があればそれにこしたことはありません。第1希望だけで決めるのか、決選投票で決めるのか、点数を計算して決めるのか、そもそも多数決以外の方法で決めるのか。問題をとおして気がついた、多数決の特ちょうもふまえて案を考えてみましょう。

日能研がこの問題を選んだ理由

国政や、国連の総会などでも多数決の方法がとられています。しかし、多数決の方法は多数で決まった意見であっても、得票数によっては、「反対」や「別案」の票の総数のほうが多くなることや、少数意見が反映されづらく、多数派の意見ばかりが採用され不公平になるという可能性があります。

この問題の大設問は、お楽しみ会の内容の決め方を題材にしています。大設問は、学生2人の会話から始まり、多数決の考え方が用いられる場面を思い起こしながら話が進みます。受験生にとっても無理なくイメージができたのではないでしょうか。問6(1)で行われた第1~第3希望のアンケート結果の内訳をみると、「多数決」といっても、第1希望だけ見るのか、再度得票数の多い2択で決選投票を設けるのか、第2、第3希望の意見にも意味を持たせるのかによって結果のとらえ方が変わってくる、ということがわかります。そして(2)では改めて、公正・公平に決めることに目を向けていきます。

受験生も、(1)、(2)と説明に沿って順をおって考えるうちに、第1希望をドッジボールに選んでいる人は多い、しかし、その人数が最多数なのか……と、数字の意味やとらえ方、意見の決め方に、自然と目が向いたのではないでしょうか。どうやら、多数決の結果からわかることは、「一番多い」ということだけではなさそうです。

学校生活はもちろん、友人、家族との間で、さらには社会に出ても、「多数決」に出あうことはきっと多いでしょう。その時に、この問題で取り上げられたような視点を持っていたら、気づけることは多いでしょう。日常生活で発見をもたらす問題であると考え、日能研はこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。