今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!
佼成学園女子中学校
2025年11月掲載

2025年 佼成学園女子中学校入試問題より
- 問題文のテキストを表示する
ドローン(無人航空機)を利用した宅配サービスのベンチャー企業(きぎょう)の大谷さんと田中さんが実験計画について話をしています。会話文を読んで, 次の問いに答えなさい。
大谷さん:「会社では, 都市部での宅配ドローンの計画も考えています。」
田中さん:「それは具体的にどんな計画ですか。」
大谷さん:「はい, 高さの異なる6つの円柱の形をしたビルがあります。真上から見ると図1のように正五角形の頂点の位置と, その真ん中の位置に並んでいます。この6つのビルの屋上に宅配ドローンの離着陸(りちゃくりく)ポイントを設置します。ドローンはビル①→②→③→④→⑤→⑥の順番に移動します。図1の[ア]の方角からドローンが移動した様子を見ると, 図2のように見えました。ドローンはビルとビルの離着陸ポイントを結んだ直線上を移動します。」

(問)ドローンが移動した様子を図1の[イ]の方角から見た場合, どのように見えますか。図の離着陸ポイントの点と点を直線で結びなさい。ただし, 手前のビルに隠かくれて見えないところは線を引かないようにします。
中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この佼成学園女子中学校の算数の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)
解答と解説
日能研による解答と解説
解答

解説
問題の条件より、ドローンは①→②→③→④→⑤→⑥の順に移動します。そこで、問題の図1をもとに、[イ]の方角から見たときに見えるビルの番号を調べると、次の図のようになります。

次に、移動経路が手前のビルに隠れるところには線を引かないことに注意して、ドローンの移動経路をかきこんでいきます。
①→②の移動
①と②を直線で結びます。このとき、移動経路の手前に④のビルがあるので、左下の図の点線部分は見えません。実際にかきこむ線は右下の図のようになります。

②→③の移動
②と③を直線で結びます。このとき、移動経路の手前に④のビルがあるので、左下の図の点線部分は見えません。実際にかきこむ線は右下の図のようになります。

③→④の移動
③と④を直線で結びます。このとき、移動経路の手前にビルはないので、かきこむ線は次の図のようになります。

④→⑤の移動
④と⑤を直線で結びます。このとき、移動経路の手前に⑥のビルがあるので、左下の図の点線部分は見えません。実際にかきこむ線は右下の図のようになります。

⑤→⑥の移動
⑤と⑥を直線で結びます。このとき、移動経路の手前にビルはないので、かきこむ線は次の図のようになります。

(参考)
このドローンの動きを真上から見ると、次の図のようになります。
真横(イの方角)から見たときには感じ取れなかった移動距離が見えてきます。

- 日能研がこの問題を選んだ理由
この問題では、ある方向から見たときのドローンの移動の様子が示された図をもとに、別の方向から見たときの移動の様子をとらえます。このときに必要なチカラは、2次元で与えられた情報から、動きを3次元的にとらえる「空間把握力」です。
まずは、イの方角から見たときに見えるビルが、それぞれどの番号のビルなのかを判断しなければなりません。そのために、真上から見た図と、イの方角から見た図を正しく対応させる必要があります。
それに加えて、ドローンがビルの前を通るのか、ビルに隠れるのかを判断するために、見る方向に合わせて、手前と奥の関係を正しく把握することも求められます。「手前のビルに隠れて見えないところは線を引かないように」の文言からも、学校の先生方のこだわりがうかがえます。
立体図形の問題では体積や表面積を求める問題が多い中、空間把握そのものに焦点を当てたところに、この問題の他に類を見ない独創性を感じます。また、ドローン技術の商業化という、現在・近い将来の話題を取り上げ、交通が3次元化する未来を見据えた問題ともいえます。交通が2次元だったときは紙・画面の上で考えられるような事柄も、3次元になることで、紙面上で考えるのは難しくなります。未来の交通網はどのように整備されていくのだろう…。そんな想像も膨らむ問題です。
このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。