シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

山脇学園中学校

2025年10月掲載

山脇学園中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.探究の基礎となる力を学ぶ「知の技法」

インタビュー3/3

学校の授業を中心とした話を伺いたいのですが、御校の国語科の授業の特徴について教えてください。

岡野先生 国語は「文章を読む、書く」といったすべての教科の基本になるものだと考えていますので、すべての土台になる力をつけることを教員同士意識してやっています。ですから、文法も大事だけど読むのも書くのも大事だというスタンスで教えています。

本校の中1、中2では「知の技法」という授業がほぼ各週で行われます。そこでは文章だけではなく、たとえば絵画作品や歌の歌詞といったものから自分が得るものを言語化して相手に伝える、相手が言ったものを自分の中で落とし込んで比較する、そういった練習をする時間を設けています。そこで生徒はたくさんの文章に触れながら、答えがひとつではない問いに答えを出す技術を学んでいきます。

知の技法は国語の時間の中にあるのですね。教材はオリジナルのものを使っているのですか?

海老原先生 基本にはそうですね。出典のある作品をアレンジしながら教材に落とし込み、授業の中で展開していく形を取っています。

「知の技法」は、今から約15年前に「多読多筆」として実施していました。とにかく「たくさん文章を読もう」というところからスタートし、本一冊読んでそれを要約したり、自分の意見を書いたりしたあとで友達と共有する、といった授業を行っていました。その後、10年前に「知の技法」となり、グループで話し合って意見共有をし、お互いの意見に対してコメントを言うような形にリニューアルされました。毎年ブラッシュアップを重ねています。

堀江先生 この「知の技法」は、もともと国語科の中だけにあったものが、他の教科ときちんとつながるような「総合知」の科目(英語の表現力や対話力、データ収集・分析ができる科学の活用力などを育成)であることを、全教員が共有したうえで実施できるカリキュラムとなっています。

国語科/海老原 圭介先生

国語科/海老原 圭介先生

教科研修や他の教員の授業を参観するなどを通じて教員自身も成長していく

岡野先生 また、教科研修も頻繁に行っています。生徒が成長しているのなら、我々教員も成長していかないと生徒に追いつくことができませんので、教員同士集まって、現状課題など時間をかけて熱く議論します。

堀江先生 校長も、「生徒と教員は相似形をなす。生徒にあれだけ『チャレンジしなさい』『失敗してもいいから新しいことやってみなさい』って言っているなら、まずは教員がそれをやらなくては!」と言っていますね。

知の技法以外の授業は、各先生に一任されているのですか?

岡野先生 ベースの部分や進度は各教員みんな揃えていますが、内容ややり方、話し方などは教員ごとに違います。教員ごとの個性を出しつつ、どこかのクラスだけ突出するようなことがないようにして、どのクラスでも同じレベルの授業ができるようには意識しています。その一環として、年に2回ほど1か月間の授業参観期間を設けており、教員同士で授業を見合いながら意見を交わしたりしています。これは国語科にとどまらず、全教員が参加する取り組みとなっています。

さらに授業アンケートも実施していまして、教員自身が自分の授業を評価するだけでなく、生徒に授業の感想を尋ねたり、生徒自身が授業への取り組みを振り返ったりする機会も設けています。そこで得られたアンケート結果をもとに、授業をさらに改善していくきっかけとしています。

山脇学園中学校 校舎

山脇学園中学校 校舎

生成AIは活用するものも使い方は慎重に

昨今話題の生成AIは授業に使われていますか?

堀江先生 はい、学校でガイドラインを定めた上で、教師も生徒も活用しています。たとえば、英語だと英作文の添削などに使っていますし、探究の授業でも、テーマを決める際の壁打ちの相手として生成AIが使われています。

海老原先生 2023年頃、ChatGPTの3.0が登場した当初は、教員の間でも生成AIを知る人はほとんどいませんでしたが、それでも「知の技法」の教材として導入されることになりました。当時のChatGPTは、ただ問いかけに応じて返答をする程度のまだ粗削りな存在でしたが、今では膨大な情報の中から最適な答えを導き出すことができる実に有用なツールへと大きく進化しているのを感じます。

岡野先生 とはいえ危惧している点もあって、生成AIを使うことによって「自分らしさが」どんどん消えていってしまうように思います。たとえば、生成AIで書いた志望理由書は誰が書いても結局同じようなものになってしまいます。

AIの進化に合わせて、自分の体験もそれに追いついていく必要があり、そこは自ら見つけ出して実際に経験してほしいと思います。

山脇学園中学校 SSl

山脇学園中学校 SSl

選ばれた9名が学年全員の前でプレゼンする「ビブリオバトル」

他に国語科ならではの行事はありますか?

海老原先生 そうですね、「ビブリオバトル」を中1で行っています。中学1年生は、1学期に基本的な読解を学び、2学期には絵画を鑑賞したり歌謡曲の歌詞を解釈したりします。3学期にはビブリオバトルを行い、互いに書籍を紹介し合います。そして、最後は学年全員が講堂に集まり、各クラスの代表がその場で発表を行います。

まずクラス内でグループに分かれ、グループごとに代表を選出します。その後、クラス全体で投票を行い、最終的な代表を選出します。昨年度は、こうして選ばれた8クラスの代表と帰国生クラスの代表、計9名が講堂で発表を行いました。

このビブリオバトルを通じ、生徒全員が優れたプレゼンを目の当たりにすることで、さらなる刺激を受けるようで、中2年になると学年全体のプレゼンスキルが底上げされていく、そうした相乗効果も生まれています。さらに、ビブリオバトルで紹介された本は、ラーニングフォレスト(図書館)に展示されて、有名になった本は結構借りられるといった循環も起きています。中2の「知の技法」では、この発展として、今年度から「文学探究」を行っています。

ビブリオバトルでは、人前で話すのが苦手な生徒も1回は発表するのですか?

海老原先生 そうですね。一番小さな構成人数で言うと3~4人の中でまずはやってみよう、というところからスタートします。それならハードルも高くないので、プレゼンが苦手な生徒も発表できるレベルです。

30人ほどの前で発表するとなると、話が上手な子や堂々とした子は人を引きつける話術で本を紹介しますし、さらにクラス代表ともなれば、そのプレゼンのうまさは群を抜いていますね。

山脇学園中学校 イングリッシュアイランド

山脇学園中学校 イングリッシュアイランド

自由記述が苦手な子は「添削してもらう」&「何度も書き直してみる」

国語の記述問題で「自分で考えて書きなさい」といった自由記述的な問題を苦手にしている受験生も多いと思います。そのような受験生に何かアドバイスなどあればお願いできますか?

岡野先生 採点していても、型通りに何か書こうとしているのは見て取れるのですが、実際聞かれている設問に対する答えになってなかったり、語尾が全部「思いました。」だったり、一文がすごく長かったりというケースは多いです。

その対策として一番いいのは、誰かに書いたものを見せてそこでアドバイスしてもらったり、添削してもらったりしてもう一回書き直してみること。書いて終わりではなく、何回も推敲するのが大事です。

あとは設問を読み返して、自分の答えが設問に対する答えとしてきちんと成立しているか、キャッチボールができているかを検証してみる。一度書き終えたらそこで終わり、ではなく、終わったあとにもう一回設問を読み返して自分の答えを見てみる。その際、一呼吸置いてから読み返すと、自分の答案を冷静に見ることができます。

記述問題における1点2点の部分点は大きいです。よく普段の授業でも、「記号問題って〇か×かで明確に点数が出るけど、記述問題なら書けば部分点がもらえる可能性がある得点源なんだよ」と、記述を苦手にしている子にはアドバイスしています。

山脇学園中学校 イングリッシュアイランド

山脇学園中学校 イングリッシュアイランド

入試対策には過去問が重要

最後に、山脇学園中学を受験しようと考えている受験生へのメッセージをお願いいたします。

岡野先生 本校を目指す方は、ぜひ過去問にしっかり取り組んでもらいたいと思います。過去問は、単に知識や解答力を試すだけでなく、どのような力を見極めようとしているのかを知る大事な手がかりになるものです。

その際、ただ「正解だった」「間違えた」という結果に一喜一憂して終わらせるのではなく、「どのようにすればこの答えにたどり着けるのか」「この問題はどんな意図をもって出題されているのか」といったところまでじっくり考えてほしいと思います。そうした振り返りを繰り返すことで、自分の弱点や思考の癖にも気づくことができますし、入試本番での柔軟な対応力にもつながります。

山脇学園中学校 教室

山脇学園中学校 教室

インタビュー3/3

山脇学園中学校
山脇学園中学校1903年に山脇玄、山脇房子夫妻により牛込白銀町に設立された。3年後には赤坂檜町に新校舎を建設し、移転とともに高等女子實脩学校となった。1908年には高等女学校令にあわせて山脇高等女学校と改称し、1935年には東洋一の女学校の校舎と称された白亜の新校舎を、現在の地である赤坂の丹後町に建設、移転した。
初代校長山脇房子は、建学の精神を「高い教養とマナーを身につけた女性の育成」とした。創設当時、明治という時代の中にあって、「良妻賢母」が女子教育の目標とされることが多い中、夫妻の理想は、欧米諸国のレディに見劣りしない教養ある女性を育成することにあった。2023年で創立120周年を迎え、豊かな教養と高い人間性を育む伝統の継承と、未来社会で活躍する力の育成をめざしている。
国際社会で活躍する志と資質を育成する「イングリッシュアイランド」、科学を通じて社会に貢献する志を育てる「サイエンスアイランド」、蔵書を収納する書架に加え、グループワークやプレゼンエリアを備えた探究活動の拠点となる「ラーニングフォレスト」のほか、最大300の自習席を配置した「セルフスタディアイランド」など、施設も充実している。これらの施設も活用し、人文・社会・自然の各分野の視点を融合した「総合知」をコンセプトに、探究活動や教科横断型授業で、社会で活用できる実学的な学びを実施している。
中学1年では「琴」、中学2年で「礼法」を習う。ダンスは体育とは別で6年間必修である。体育祭で踊る、中学3年の「メイポールダンス」と高校3年の「ペルシャの市場にて」は、山脇学園の伝統となっている。