シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

山脇学園中学校

2025年10月掲載

山脇学園中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.季節の移ろいについて意識させられる問題

インタビュー1/3

まずは出題意図について教えてください。

岡野先生 毎年、本校では大問3でこういった意見論述型の設問を出しているのですが、今回このテーマを選んだ理由のひとつに、私自身が古典分野を専門にしている点が挙げられます。古典の世界では、季節感・季節の移ろいはとても大事です。とはいえ生徒の中には、「古典は現代じゃないんだからいらないんじゃないの?」といった意識がある生徒もいて、なかなか古典の世界観が浸透していかないのが現状です。たとえば、授業中に、「この植物はどの季節のもの?」と聞いたとしても返答がないということもあります。そういった背景から、こういった季節感に意識を持ってほしいと思ったこともあり、作問しました。

季節感について書こうと思ったのには、コロナ禍を経験したことが要因としてありました。コロナで生徒がリモート授業になり、朝礼もZoomでやるような状況でしたので、「外に出られないけれど、何か日々の変化を感じられることはないかな?」と思いながら、朝赤坂の街を歩いていたところ、ツバメが飛んでいるのを見かけ、「ツバメがもう来たんだ」と思って朝礼で話題にしたことがあります。

それまで「東京ってそんなに季節感がない街だな」と思っていたのですが、実は周りを見渡したら意外とたくさん季節を感じられるものがあることに改めて気付き、その時のことを思い出したらこういう設問が出来上がりました。

本文には、1月30日から2月3日ごろの入試の時期には、「『鶏始めて乳す』と称され」とありますね。

岡野先生 そこは、ちょうど入試前後にそういった区分があるんだとわかってもらえるといいな、といった想いから意識して入れた一文です。

堀江先生 本校では、一般入試がA・B・Cの3回、1日、2日、4日とあって、国語では難度および形式ができるだけ同じになるように作問しており、A・B・Cいずれでも、出典のある長めの文章2題と、このような短い文章題1題を出しています。短い文章題の方は、テーマが重ならないように人文系、社会科学系、自然科学系の文章を担当者で分担して作成しています。この設問は人文系の文章となっています。

国語科主任/岡野 円先生

国語科主任/岡野 円先生

先生自身が作文した文章で出題

この文章は岡野先生ご自身が書かれた文章だそうですが、なぜ自分で書かれた文章を出題されるに至ったのでしょう?

岡野先生 本校の取り組みのひとつに「総合知」がありますが、そこでは、あらかじめ正解が決まっている問いに答えるのではなく、正解のない問いに対して自ら考え、答えを模索していく姿勢を大切にしています。この大問の出題にあたっても、本校ではそういった力を育んでほしい、という思いから文章を書いたものです。

堀江先生 以前は、短い文章問題も出典のあるものから出題していたのですが、これだけ短い文章から問題を作るのはなかなか難しいです。大問1と2では、出典のある題材の文章を読ませていますので、大問3で教員が作文した文章で出題するようになりました。

文章の文字数は決まっているのですか?

岡野先生 試験時間が決まっていますので、あまり字数が増えると読む量が増えて受験生が大変になってしまうため、毎回同じぐらいの文字数になるように調整しています。

二段落目の「しかし~」から一気に現代に引き寄せ、問題意識のアンテナを立てている点が、受験生にとって自分ごととして捉えられているかどうかが重要なポイントだと感じました。

岡野先生 すでに何回か文章を書いていますが、その際には今この山脇にいる生徒たちにも考えてほしいテーマを選ぶようにしています。

言語選択の基準として、「このレベルで問いを作ろう」といった話し合いはされるのですか?

堀江先生 出典があるものだと「注釈をつけるかつけないか」といったことはかなり議論しています。「読む時に必要な情報かもしれないけどこの場合はなくてもよいのでは?」とか、「この注釈って現代の小学生に本当に必要か?」といったことも検討します。

山脇学園中学校 ラーニングフォレスト

山脇学園中学校 ラーニングフォレスト

一歩踏み込んで自分ごととして捉えられているか

実際に受験生の解答はどのようなものがありましたか?

岡野先生 いろいろな解答があったのですが、この空欄の直前で、「現代でも日常生活で季節の移ろいを見ることはできる」といったことが書かれていて、「さらに」ともう一歩踏み込んで季節の移ろいを見ないといけなくなっています。そのため、ただ見るだけの解答だと完全な正解とはならず、部分点対象の解答となりました。自分で能動的に動き、季節の移ろいを行動として取り入れるところまで書けているかどうかという視点で正解かどうかを判断しています。

たとえば「花を見る」という解答だと、見るだけで取り入れたとはならないわけです。ですから、花であれば「自分で季節ごとに花を植える」、「花を飾る」というように、自分で行動をとるところまでの描写が必要です。

あとは、「暑い日は半袖を着る」「薄着にする」といった季節感ではなく単なる日常の温度変化で終わっているものも部分点対象の解答として見られたものです。

こちらの模範解答として、「季節の素材を使った料理を作る」「季節に合った素材の服を着る」「部屋を模様替えする」といったものは用意していたものの、特に料理について書かれた解答は多かったです。ただ、「スーパーで季節の野菜を見る」といった解答が結構あったのですが、見るだけでは取り入れたことにはならないので減点としました。

それ以外にも、具体的すぎる解答といったものもありました。たとえば「桜の花を見る」といったもので、アイデアとしてはいいのですが、「さらに、~ことで」の本文の該当箇所に当てはめなければいけませんので、そこに合わないと減点となってしまいます。それがこの問題で差がついた部分かもしれません。

受験生のご家庭の様子も見える解答もありそうですね?

岡野先生 たとえば、ふだんからスーパーに保護者の方と一緒に買い物に行ったりしていれば、今旬のものがどういうものなのか気づくかもしれないですね。

季節感を感じないことの問題というよりは、「東京都内にも季節感を感じることは結構あるのに実は気づいていないだけなんだよ」という問題提起をしたかったので、こういう設問になったといえますね。季節の変化に気づく人もいれば気づかない人もいるわけですが、季節の移ろいに気づかないともったいないなって思います。

山脇学園中学校 ラーニングフォレスト

山脇学園中学校 ラーニングフォレスト

得点率は高め

ほとんどの受験生は、〇もしくは△だった印象ですか?

岡野先生 この問題の得点率が約66%で、白紙解答はほとんどなく、部分点はある程度もらえるけれど満点となるとそこまで多くはなかった問題です。全く知らない内容ではないので、何かしらの解答は書けるけれども、こちらが要求するレベルまで持っていけるかどうかで差がついた問題だといえます。実際には、解答の中に季節を表す言葉が入っていれば部分点はあげていて、その他3段階ぐらいの基準を作って採点しました。

堀江先生 解答欄に細かくぎっしり書いてきた子もいましたし、書いているうちに気分が乗ってきてしてしまったのか、そこで文が完結してしまい、「こと」に繋がらない解答も見られました。

正答率や書かれた内容などは、先生が想定されたものでしたか?

岡野先生 だいたい6割程度になると思っていたので、想定範囲内かなと思います。白紙解答についてはほとんどないだろうなと思っていましたし、書けなかった受験生はよほど時間が足りなかったか、この設問を後回しにしようと考えたものの戻ってこられなかったんだろうなと推測しました。

山脇学園中学校 校舎内

山脇学園中学校 校舎内

インタビュー1/3

山脇学園中学校
山脇学園中学校1903年に山脇玄、山脇房子夫妻により牛込白銀町に設立された。3年後には赤坂檜町に新校舎を建設し、移転とともに高等女子實脩学校となった。1908年には高等女学校令にあわせて山脇高等女学校と改称し、1935年には東洋一の女学校の校舎と称された白亜の新校舎を、現在の地である赤坂の丹後町に建設、移転した。
初代校長山脇房子は、建学の精神を「高い教養とマナーを身につけた女性の育成」とした。創設当時、明治という時代の中にあって、「良妻賢母」が女子教育の目標とされることが多い中、夫妻の理想は、欧米諸国のレディに見劣りしない教養ある女性を育成することにあった。2023年で創立120周年を迎え、豊かな教養と高い人間性を育む伝統の継承と、未来社会で活躍する力の育成をめざしている。
国際社会で活躍する志と資質を育成する「イングリッシュアイランド」、科学を通じて社会に貢献する志を育てる「サイエンスアイランド」、蔵書を収納する書架に加え、グループワークやプレゼンエリアを備えた探究活動の拠点となる「ラーニングフォレスト」のほか、最大300の自習席を配置した「セルフスタディアイランド」など、施設も充実している。これらの施設も活用し、人文・社会・自然の各分野の視点を融合した「総合知」をコンセプトに、探究活動や教科横断型授業で、社会で活用できる実学的な学びを実施している。
中学1年では「琴」、中学2年で「礼法」を習う。ダンスは体育とは別で6年間必修である。体育祭で踊る、中学3年の「メイポールダンス」と高校3年の「ペルシャの市場にて」は、山脇学園の伝統となっている。