シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

品川女子学院中等部

2025年09月掲載

品川女子学院中等部の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.入学後どんな学びが得られるかのメッセージが盛り込まれた入試問題

インタビュー2/3

御校の入試問題からは、自分で問題を発見し、いろいろな人を巻き込んで問題解決に一歩踏み出す人を求めているのがにじみ出ていると感じます。これは普段の中高生の指導とも共通点があるのではないかと思うのですがいかがですか?

平川先生 確かに起業体験プログラムや、身近な社会問題の解決策を探るCBLといった探究の授業につながるようなイメージを持ちながら作問している感じはあるかもしれませんね。
入学後をイメージして入試問題を作っている教科は多いと思います。たとえば、理科だったら実験観察が多いので、入試問題でも実験観察に関する問題を出そうと考えていますし、社会も実社会に目を向けるような問題を出そうと意識しています。

河合先生 地理の場合ですと、中学入学後の総合学習では、1年生だと身近にある課題を見つけてもらいますし、2年生になると自分の知らない日本国内におけるどこかの課題を見つけるということで京都への宿泊行事があります。3年生になると未知の世界やグローバルな世界に飛び込んでみようといったスケールの大きな話になっていきます。

このように、身近なところから少しずつ遠くの課題を見つけることを入学後に繰り返していくのですが、さまざまな課題を自分のこととして置き換えて解決していける子に入学してきてほしいと思っていますし、入試問題は「こういったことをこの学校では学べるんだよ」というメッセージをしっかり込めて作っているつもりです。

広報部/平川 悟 先生

広報部/平川 悟 先生

品川女子学院で身に付ける「起業マインド」

身近にある課題を発見するとは、実際どのようなことをするのですか?

河合先生 以前の中1の総合学習では、クラスごとに割り振って「身近を知ろう」というテーマで品川神社など近隣のいろいろな場所を探索するといった授業を行っていましたが、現在は木更津にある「クルックフィールズ」に行って環境問題に触れるなど、SDGs的な体験をする機会を作っています。クルックフィールズは「農業」「食」「アート」を軸とした複合施設なのですが、2泊3日の宿泊行事を通じて自然農園を体験します。

名越先生 1日目はクルックフィールズがどういうものかを学び、2日目は自分たちが興味のある分野に分かれてしっかりと1日使って学び、その夜には自分たちがこの経験を通じてどういうことを学んだのかプレゼンを行います。入学してわずか1ヶ月たらずで全員の前でプレゼンしないといけないんですね。そして、最終日は少し遊んでから帰る流れとなりますが、デザイン思考を学び、それを実践して帰ってくるといった感じです。

また中2では京都、中3ではニュージーランドに行きます。京都も普通ならみんなで寺社仏閣に行って終わりですが、たとえば、「和菓子や寺社仏閣といったものに対しての問題点とは何だろうか?」といったテーマを自分たちで考え、その問題点に対しどういうアプローチで解決できるのかを考えるために取材先を自分たちで選定して、実際に取材しに行きます。

そこで話を聞いて知り得た情報を、帰ってからみんなで議論してまとめたものを「私たちはこういう仮説を立てました。でも実際行ってみたらこうでした」といった具合に、京都の商工会議所の人たちの前でプレゼンをします。これが結構大変です。

品川女子学院中等部 掲示物

品川女子学院中等部 掲示物

企業訪問やフィールドワークを通じてビジネスを学ぶ

河合先生 生徒は、会社がそもそもどういう仕組みで成り立っているのかわからないままスタートすることになるので、京都の老舗の企業などにインタビューに行き、かなり踏み込んだ質問をしながらいろいろと教えていただいています。

京都に行かれた際に取材に伺うということは、事前にアポを取って行かれるわけですか?

河合先生 そうです。大体1ヶ月から2ヶ月くらい前に電話をかけて「〇〇ぐらいにお邪魔してお話を伺いたいのですが」とアポ取りをしています。

相手の企業もきちんと受け入れてくれるのですか?

河合先生 業界によっては受け入れていただけないケースがあります。たとえば、和菓子業界だと最近は観光客の方が「お菓子づくり体験をしたい」というニーズが増えているようで、「取材と体験をセット」といったパック商品のようになっている場合は、私たちがお願いしたい取材の趣旨に合わなくなってしまいます。

名越先生 また、寺社仏閣についてはそれぞれの寺社仏閣によりけりです。観光客よりも地域密着のところでは「ぜひお願いします!」となりますし、一方で大きなところに行くとNGであることは多いです。

結構生徒さんも緊張しながら電話しているのではないでしょうか?

名越先生 本校では、中1の時から文化祭の発表に向けていろいろと調べるにあたり、企業や外部団体に「取材したいのですが」と電話をかける機会があるので、企業や寺社仏閣に電話すること自体は物応じせずに対応していると思います。

品川女子学院中等部 図書館

品川女子学院中等部 図書館

大学受験を意識した授業を展開

御校の社会科の特徴について教えてください。

名越先生 私たちが普段の授業で意識しているもののひとつに「大学受験」があります。たとえば、探究の試験を行う際には4つぐらいのグラフを見ることもありますが、そのような問題に出くわしたとしても決して戸惑わないでほしいと思っています。

社会科はどうしても知識に頼らないといけない部分もありますが、最近は考えさせる問題や考えを述べさせる大学入試問題も増えていますので、そのような問題が出題されても柔軟に対応できるようにしていかないと、といった想いはいずれの教員も持っていると思います。

社会科の入試問題は、科目ごとに専門の先生が作られるのですか?

名越先生 そういったケースもありますが、歴史の教員が歴史の問題を作るとどうしても偏重しすぎることがありますので、たとえば歴史の教員が地理の問題を作ってみる、といった具合に別の科目の教員が専門の教員のアドバイスを受けながら問題を作ることはあります。ただし、公民だけは法律的な要素や権利的な要素もあるため、比較的公民の教員が作るようにしています。

教科ごとで先生方が集まって情報共有するようなことはありますか?

名越先生 普段から教科会議を週1で行っていますし、入試に関しては作問や構成についての話し合いを授業のない時間に行ったりしています。

授業自体の進め方は、個々の先生に任せているのでしょうか?

名越先生 それぞれの教員がバラバラに教えてしまうと「こっちのクラスで教えたものがあっちのクラスでは教えていなかった」というような問題が当然出てくるので、ノートやプリント類は基本的には統一しています。

とはいえ、授業の進め方に脚本があるわけではありませんので、ある先生は大げさにしゃべる一方で、別の先生は冷静に淡々と授業を進めるといった違いはあるかもしれないです。

品川女子学院中等部 カフェテリア

品川女子学院中等部 カフェテリア

「デザイン思考」を活用して課題解決を実現

先ほどの話で出てきた「デザイン思考」というワードですが、おそらく社会科と馴染みがありそうな気がします。普段から問題を見つけて解決していく、といった授業が行われているのですか?

名越先生 本校では、生徒が中1の段階からずっとデザイン思考を体現してしまっているので、たとえば中3の新聞記事発表も「デザイン思考で考えなさい」と言うと、意外と身近で困っていることを突き当てたりすることができるんですね。自分たちで「何が問題なのか、それに対してどういう仮説があるのか調べてみよう」と自ら積極的にどんどん貫いている印象です。

今の本校にはディベート評価ができる教員がいるので、ディベートを授業に取り入れています。生徒たちも中2・中3ぐらいになると、質問に対してどう答えるのが適切かを理解できるようになっています。ですから、社会科というよりいろいろな場面で生徒たちが自らデザイン思考を応用して使っているのが見てとれますね。

平川先生 また、社会問題を発見し、多様な人を巻き込んで解決に向けて一歩踏み出すのに必要な「起業マインド」については、入学前から「こういう力をこの学校では身に付けてほしい」と生徒に言い続けています。

「デザイン思考」と「起業マインド」は、生徒全員にベースとして持ってもらいたい力ですし、教員としては持たせたい力としていろいろなプログラム内で実践しています。

起業体験プログラムは3年間学ぶことができるもので、中3でスタートしてもっと学ぼうと思う生徒は高1・高2でも引き続き学ぶことができます。自由度の高い学校ですので、いろいろなことを学んでいる生徒は数多くいますよ。

名越先生 教員側も6割の確率でうまくいきそうなら否定はせず、「とりあえずやってみれば」と言ってしまう校風はあるかもしれません。だからというわけではありませんが、デザイン思考は特に本校の生徒にマッチしていると思います。

御校は非常に元気な子が多いイメージがあるのですが、そういった学びの部分から来ているものなのでは?と感じます。

平川先生 もちろん、「デザイン思考」や「起業マインド」を学びたくて入学してきている子もいますし、親御さんが「うちの子は引っ込み思案なので、この学校でぜひ学ばせたい」と本校を選ばれている方もいますしね。

品川女子学院中等部 校舎内

品川女子学院中等部 校舎内

社会人から教わる放課後「特別講座」

社会科の授業でどこかに出かけることはありますか?

名越先生 授業で連れていくのは大変なので、基本的に出かけるのは総合学習の授業として学年全員で出かける形になります。

平川先生 あとは希望者のみとなりますが、放課後の特別講座で社会科的な学びを得ることもあります。不定期ながら特別講座は単発ものだったり3回4回のシリーズものだったりとさまざまあります。

先日も半導体関連企業が本校に来てくれて、中学生相手に半導体を作る工程を教えてくれたり、作業をさせてくれたりということがありました。企業側も人材を育成していかないといけないという事情もあってか、品川女子学院ではこういった特別講座をやっているのを知っていて、会社の宣伝や社会貢献活動のアピールの一環として企画を持ち込んできてくれる企業や外部団体が多くあります。

品川女子学院中等部 講堂

品川女子学院中等部 講堂

インタビュー2/3

品川女子学院中等部
品川女子学院中等部1925(大正14)年に荏原女子技芸伝習所が開設。戦後、品川中学校・高等学校となる。1990(平成2)年には制服を新しくし、1991年に現校名に。2004年には高校募集を停止し、完全中高一貫体制に移行。受験にも十分対応できるシステムで学力の向上をはかる。創立100周年を迎える2025年には新校舎が完成した。新校舎は学年ごとにフロアを分けており、廊下が広く、さまざまな活動ができる。
「世界をこころに、能動的に人生を創る日本女性の教養を高め、才能を伸ばし、夢を育てます」というミッションのもと、社会の問題を発見し、多様な人を巻き込みながら解決に向けて一歩踏み出す「起業マインド」を育てる。そして、「28歳になった時に社会で活躍できる女性を育てる」という「28プロジェクト」に取り組んでいる。総合学習での社会人との協働や起業体験は、学習への動機付けともなっている。平日の補習・講習と年4回の担任面談で、きめ細かい進路指導をおこなっている。
コミュニケーション能力の育成や、国際社会で活躍するための基礎となる英語能力の育成に力を入れ、英検指導もおこなう。完全中高一貫体制で、独自のシラバスに沿って高2までに無理なく大学進学に対応できる学力を身につけ、高3で進路に応じた選択科目や演習によって実践的学力を養成する。中学では基礎力を鍛えるため、補習や講習もきめ細かい。高校生は20:00まで学校で自習が可能。
国際化教育プログラムも充実しており、海外留学生のうけ入れ、オーストラリア、イギリス、ニュージーランドの姉妹校への留学、中3の修学旅行(ニュージーランド)などで「生きた英語」「異文化」を学ぶ。宿泊行事、合唱祭、文化祭、体育祭、芸術鑑賞、校外学習など行事も多種多彩。茶道・華道・着付けの指導もある。クラブは38あり、バトン、ダンス、吹奏楽部などが部員が多い。利用者の多い図書館の蔵書は40,000冊。