シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

品川女子学院中等部

2025年09月掲載

品川女子学院中等部の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.地理的な「距離感」を掴んでもらいたいと思って出題した問題

インタビュー1/3

まずは出題意図について教えてください。

名越先生 昨今、インバウンドという大きなテーマが取り上げられていますが、受験生に注目してもらいたかったのが「距離感」です。たとえば関東に住んでいる場合、意外と大阪と奈良、また京都と奈良が近いのを知らず、ものすごく遠いイメージを持っている人は結構多いと思います。それをディズニーランドや横浜といった距離感と同じようにつかんでもらい、関西の都市って行き来しやすい、地理的なイメージをつかんでもらいたいといった問題です。

あとは外国人がどれだけ訪問しているのか、京都と奈良といった2つの都市の観光もそれほど苦も無くできるんだ、といった点を捉えてほしいという想いもありました。インバウンドで外国人が数多く訪問し、日本はどう変わったのか?といった大きなテーマの中で、オーバーツーリズムなどの時事問題も受験生は学んでいてほしい、という掲示でもありますし、本校では中学校2年生の宿泊行事で京都に行くこともあって、京都への距離感といった地理的要素を加えていった結果、このような問題になりました。

この問題は記述問題となっていますが、正解の条件として何が書かれていると完全正解になるのでしょう?

名越先生 距離的には京都-奈良、大阪-奈良ともに電車だと40分ほどで移動できるため、京都や大阪に戻ってしまうことが多いといった内容だったり、あとは客室数のグラフから極端にホテルが少ないために宿泊先として奈良を選びにくい、といった回答が考えられました。特に大阪と京都とはしごする人も多いので、京都を中心としながら電車で奈良や大阪に行こうといった感じのものが書けていれば正解としています。

回答はそれなりに予想されていたものが多かった印象でしょうか?

名越先生 設問で「資料1.2より考えられることを説明しなさい」と言っているものの、「距離的に短いから」「ホテルが少ないから」といった具合に、距離に関するものと宿泊施設に関するもの、どちらかに偏っていた解答は多かったです。

昨今、2つ以上のグラフや表を読み取らせるような問題を出題してみたりするのですが、どちらかしか読み取らない子は思った以上に多く、なかなかできてくれないのを痛感しました。

2つの点に触れている解答は、1つしか書かれていない解答に比べて点数は高くなるのですか?

河合先生 2点満点の問題なので2点を超えるということはありません。ですから、どちらか一方しか書かれていないと1点となります。

社会科/名越 寛 先生

社会科/名越 寛 先生

小学生にとって「55分=遠い」

誤答にはどのようなものがありましたか?

河合先生 東京-鎌倉間の55分を「遠い」と認識した子たちが一定数いまして、「遠くて宿泊ができないから」といった解答がありました。それだと質問していることと答えが逆になってしまい、資料の読み取りが逆転してしまった誤答が見受けられましたね。

平川先生 実際には、大阪に宿泊して、奈良の法隆寺に日帰りで行ってくるのと同じぐらいの感覚なのですが、東京-鎌倉が日帰りで行けるという感覚がない子だと「遠い」と思ってしまうのでしょうね。

名越先生 大学生ぐらいになると、東京から横浜に遊びに行くといったら 30~40分ぐらいとわかるでしょうが、小学生だと近くのショッピングモールが最も遠い娯楽施設だったりするわけで、東京-鎌倉間の55分は、小学生にとってはかなりハードルの高い距離なのだと改めて感じました。

実際、小学生は自分たちが住んでいる街の宿泊施設が多いか少ないかなんて考えながら生活しているはずがないので、日帰りできるというイメージで物事を捉えていくと、結局どちらかの要素しか書けない解答になってしまうのだと思います。

ほかに答案を見て何か気づいた点はありましたか?

名越先生 実際に旅行で関西圏に行ったことのある子であれば、ある程度距離感をつかんでいると思いますので、現地に行くのはとても大事なことだと思います。2点満点を取れた子は、「近くにホテルがなかった」とか、「京都に泊まり、奈良に行った」といった経験がおそらくあったと思います。そういう体験を交えて答えられた子の解答はしっかりと書けていたはずです。

品川女子学院中等部 図書館

品川女子学院中等部 図書館

正答率は5割弱と低め

ちなみに、出来としてはどんな感じでしたか?

河合先生 平均点は2点満点で部分点を含めて0.94点でしたので、全体として正答率は5割行かない感じでした。逆に「距離的に短い」「ホテルが少ない」のどちらかを書いていれば1点はもらえるので、0点解答は少なかったです。

作問した先生側からすると、大体予想通りの正答率だったのでしょうか?

名越先生 正直「もう少しできたのではないか?」と思ったのですが、2つのデータを絡ませて答えるにあたり、どう答えていいのかわからない子が多いな、とは感じました。

河合先生 最終的に読み取るデータは2つになりましたが、実は問題作成の段階では3~4つのデータ掲載も検討されました。具体的には、ホテルの客室数や実際に訪れている観光客数、鉄道の利用者数などのグラフもあったほうがよいのでは?と検討段階では挙がったものの、さすがに3~4つも使っていたら何点の問題になるんだ、ということで2つに落ち着きました。

また、地図も本当はもっとたくさんの都市の掲載を考えていました。関東だとディズニーランドのある舞浜や横浜、新宿も検討しましたが、複雑にしすぎると余計にわからなくなってしまう可能性が高かったので、自分が行ったことがない場所でもなんとなく置き換えて考えられそうなのがいいかな、とシンプルに削った結果、最終的には出題した形になりました。鎌倉を残したのは、昔ながらの観光地ということで結びつけて考えてほしかったからです。

名越先生 実際、大阪-京都間も40分、大阪-神戸も30分ほどで移動できるなど、思ったより近いんですね。さらに、大阪から1時間半かければ琵琶湖にも行けます。関東に住んでいるとそんなに近い感覚はないと思いますし、女子校ということもあって鉄道移動にはあまり興味のない子も多いと思いますが、男子校でこの手の問題が出題されていたら、もっと正答率がよかったかもしれないですね。

品川女子学院中等部 校舎内

品川女子学院中等部 校舎内

インタビュー1/3

品川女子学院中等部
品川女子学院中等部1925(大正14)年に荏原女子技芸伝習所が開設。戦後、品川中学校・高等学校となる。1990(平成2)年には制服を新しくし、1991年に現校名に。2004年には高校募集を停止し、完全中高一貫体制に移行。受験にも十分対応できるシステムで学力の向上をはかる。創立100周年を迎える2025年には新校舎が完成した。新校舎は学年ごとにフロアを分けており、廊下が広く、さまざまな活動ができる。
「世界をこころに、能動的に人生を創る日本女性の教養を高め、才能を伸ばし、夢を育てます」というミッションのもと、社会の問題を発見し、多様な人を巻き込みながら解決に向けて一歩踏み出す「起業マインド」を育てる。そして、「28歳になった時に社会で活躍できる女性を育てる」という「28プロジェクト」に取り組んでいる。総合学習での社会人との協働や起業体験は、学習への動機付けともなっている。平日の補習・講習と年4回の担任面談で、きめ細かい進路指導をおこなっている。
コミュニケーション能力の育成や、国際社会で活躍するための基礎となる英語能力の育成に力を入れ、英検指導もおこなう。完全中高一貫体制で、独自のシラバスに沿って高2までに無理なく大学進学に対応できる学力を身につけ、高3で進路に応じた選択科目や演習によって実践的学力を養成する。中学では基礎力を鍛えるため、補習や講習もきめ細かい。高校生は20:00まで学校で自習が可能。
国際化教育プログラムも充実しており、海外留学生のうけ入れ、オーストラリア、イギリス、ニュージーランドの姉妹校への留学、中3の修学旅行(ニュージーランド)などで「生きた英語」「異文化」を学ぶ。宿泊行事、合唱祭、文化祭、体育祭、芸術鑑賞、校外学習など行事も多種多彩。茶道・華道・着付けの指導もある。クラブは38あり、バトン、ダンス、吹奏楽部などが部員が多い。利用者の多い図書館の蔵書は40,000冊。