シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

富士見中学校

2025年08月掲載

富士見中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.子どもが「やってみたい」という気持ちを大事にしていますか?

インタビュー3/3

理科への苦手意識は、もしかしたら“勘違い”かもしれない

理科が苦手な子にとって、授業が辛くなることはありますか?

前田先生 「電磁気に入ります」と言うと、「苦手だったんです」と言う生徒は多いです。でも、中学1年生の授業で電磁気を扱ったときには、毎回電流計と電圧計を使ってキットを組み、電流を測定するという実験を2か月ほど続けました。

直列回路では電流が一定、並列回路では電圧が一定といったことを、毎回の実験で体感していくうちに、「苦手」と言っていた子も「実験は大丈夫です」と言うようになりました。できる・できないは別として、「やれた」という経験が残るんです。それを乗り越えた先にテストがあると、意外としっかり準備してくる。苦手だと思っていたのは、実は“勘違い”だったのかもしれないと感じることがあります。

酒井先生 それ、すごく”あるある”ですよね。中学校に入って、小学校で学んだ内容を改めて扱ったときに、「ああ、そうだったんだ」と気づいて、理科への苦手意識が薄れるという話はよく聞きます。

前田先生 実験をしたり、友達と話したり、プレッシャーのない状態で学ぶことで、「あれ? 自分、理科って苦手じゃないかも」と気づくことがあるんですよね。もちろん、小学校での学びが土台にあるからこそ、そうした気づきが生まれるのだと思います。

富士見中学校 図書室展示

富士見中学校 図書室展示

理科の世界と現実の世界をつなげる

理科に苦手意識を持つ子が、楽しさを感じられるような工夫はありますか?

酒井先生 アニメでも漫画でも本でも雑誌でも、テレビ番組でもいいんです。まずはきっかけをつかんでほしい。身の回りのものをよく見て、触って、匂いを嗅いでみる。たとえば「かき氷用の氷を作った」とか「パンケーキを焼いた」とか、アサガオを観察して虫がいて「わ~っ」となった、そんな体験からでもいいんです。
生徒たちには「虫が気持ち悪いって言うけど、それって実は“好き”ってことかもしれないよ」と話しています。「気持ちが向いているってことは、興味があるってこと。無関心じゃないってことだから」と言うと、「確かに」と納得してくれます。
「羽だけ見てごらん」「足の先端だけ見てごらん」「どうしてこのような構造になっているのかな」などと伝えると、ミクロの視点で新しい見方ができるようになります。「自分との違いを知ると、世界が豊かになる」と話すと、中学1年生は素直なので「へぇ~」とうなずきながら聞いてくれます。高校生になると、さらに深い話にも乗ってきてくれるので、こちらも楽しいですね。

前田先生 私は自分が見ている世界を生徒に伝えることを意識しています。テストのためではなく、教養として知識を広げると、世界の見え方が変わって楽しくなるからです。
たとえば、私は月を見たときに「地球に引っ張られているんだなぁ」と思いながら見ています。物体が円運動するには、中心に向かって力が働いていなければなりません。縄跳びを回すとき、先端が円を描くのは、自分が縄を引っ張っているからですよね。それと同じです。

高校1年生に熱の授業をしたときには、「ガスコンロに火をつけてフライパンを置くと、まずフライパンに熱が伝わり、そこから水に熱が伝わっていく。私にはそのエネルギーの流れが見えています。皆さんには見えていますか?」と問いかけました。
学んだことが現実の世界でどうつながっているかを伝えることで、生徒たちが「冷蔵庫の中でペットボトルがへこんでる。あ、気体が収縮してるんだ」と気づけるようになってくれたら嬉しいですね。

富士見中学校 理科実験室

富士見中学校 理科実験室

問題を解く“プロセス”を大切にしてほしい

最後に、受験生に向けてメッセージをお願いします。

酒井先生 「なぜ?」という問いや疑問を大切にしてほしいです。たとえば「ペットボトルがへこんだのはなぜ?」というような、身近な疑問でいいんです。そういう疑問が出たときに、ぜひ調べてみてください。
親御さんと一緒に考えるのもいいと思います。家庭で一緒に考える楽しさを感じてほしい。学校でもグループで調べて、検討して、結論を出すという活動をしています。家庭でも同じように、誰かと一緒に考える時間を持って、理科を好きになってくれたら嬉しいです。

好奇心旺盛な子はもちろん歓迎ですが、自分の考えや疑問を声に出せることがとても大切です。「わからないことを、わからないと素直に言える」ことが、自分の力を伸ばすきっかけになります。正解じゃないと発言してはいけない、というマインドではなく、「わからないからこそ、みんなで考えよう」という姿勢でいてほしいですね。
理科を知る楽しさ、考える面白さを大切にして、入試をゴールにせず、中学・高校と学びを深めていってほしいと思います。

前田先生 問題を解いて答えが出たときの達成感はもちろん大事ですが、そこに至るまでの試行錯誤のプロセスも忘れないでほしいです。
「最初はこう思っていたけど、実は違った」という経験の中で、「なぜ自分はそう思ったのか」を振り返ることが、より深い理解につながります。自分の途中経過を大切にすることが、理科の学びをより豊かにしてくれると思います。

富士見中学校 校舎内

富士見中学校 校舎内

インタビュー3/3

富士見中学校
富士見中学校1924(大正13)年に富士見高等女学校として発足。40(昭和15)年に財団法人山崎学園が経営を引き継ぎ、47(昭和22)年に富士見中学校、48(昭和23)年に高等学校を設立。山崎学園は、山種グループの総帥・山崎種二(初代理事長)が教育事業に進出するために設立。
「社会に貢献できる自立した女性の育成」を教育目標に掲げ、創設者・山崎種二の精神を受け継いだ学びを展開している。24年度より、米・金融・芸術の3分野を柱とする教育プロジェクトをスタート。実体験を通して課題解決力や発信力を磨き、未来を切り拓く力を育成。
「米」では、中1生が全員田植えから商品化・販売まで行う「コメ探究」に挑戦。農業の現場に触れ、現代の社会が抱える問題を学ぶ。中2生は都市型農業の発信地でもある地域の練馬区を舞台とした「ねりま探究」をお粉い、持続可能な食の在り方を探究していく。
「金融」教育は女子にこそ必要と考え、自分でお金をマネジメントするだけではなく、自他の幸福のためにお金を活用できる人を育成していく。そのためにファイナンシャルセンターを新設し、専門職による指導体制を整え、先進的な教育を実施。
「芸術」では、学校が所蔵する400点以上の美術品を教材に本物に触れる授業が展開。実際に日本画制作も行う。
池袋から西武池袋線で15分の中村橋駅から徒歩数分の環境にある。現在の校地には、中高校舎、体育館のほか地下温水プール、高3自習室、学習ホールなどを備えた50周年記念館、550名収容の山崎記念講堂、百人一首なども行われる茶室・和室などがある。各教室は冷暖房完備で校内はすべて無線LAN。図書館 ”Learning Hub”(略してL-Hub/エルハブ)は別棟となっており、“学びの核”として授業でも頻繁に使われる。
さらに、海外研修や留学、海外大学進学を支援するグローバルセンター、週6回スクールカウンセラーが常駐する「お話の部屋」、看護師の配置など、安全で安心な学習環境も整備。6年間を通じ、学びも生活も全力で取り組める環境となっている。
ほぼ全員が大学進学を希望し、24年度は90%が大学へと進学。国公立早慶上智ICU理科大GMARCHといった難関大学への進学率は50%を超える。大学との教育提携も進み、現在では東京理科大学、日本女子大学以外に、25年度は北里大学との連携も実現。特に理科大との連携プログラムは豊富にあり、自然科学系に進学する生徒は40%を超える。
自主性が重んじられ、校則は生徒会総務を中心に学校と話し合いを進めながら変化している。生徒会活動やクラブ活動が活発。中1のクラブ活動参加率は100%以上。また、全ての教員がクラブ顧問を務めている。特に人気があるダンス部は全国大会などで活躍。専門の器具を設置し活動する体操競技部や、温水プールがあるため水泳部は一年中活動ができる。