出題校にインタビュー!
富士見中学校
2025年08月掲載
富士見中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
2.カイワレ大根をオレンジジュースで育てたらどうなる? 甘くなる?
インタビュー2/3
中学1年生は植物の栽培を題材に、1年間かけて探究する
中学1年生では、どのような学びを展開しているのでしょうか?
酒井先生 中学1年生には、5月に「カイワレ大根を育ててみよう」と声をかけ、種を10粒ずつ渡しました。育て方は自由で、各自が好きな方法で栽培し、データを取ってくるという宿題を出しました。そこから生まれた疑問をもとに、夏休みには新たな実験プランを立てるという課題につなげていく予定です。
ただ「大きくなった」「成長が早かった」といった感想ではなく、理科では数値として計測できるデータを集めることが重要です。そうした視点を中学1年生の段階から身につけてほしいと思い、練習の意味も込めて取り組んでいます。
富士見中学校 校舎
疑問を「ヒレ」のように継ぎ足して広げる
酒井先生 これは最近の授業で行った活動です。カイワレ大根の栽培をきっかけに、自分の中に湧いた疑問を「魚のヒレ」のように継ぎ足して書いていくというワークをしました。まずは3分間、自分の疑問を紙に書き出します。その後、グループで隣の子の用紙を見て、色ペンを使って自分の疑問を赤いヒレとして追加していきます。見開きいっぱいになるほど、たくさんの疑問が書き込まれました。
その中から、自分が一番気になった問いを選び、それを検証するための実験を考えてくるのが夏休みの宿題です。2学期にはグループで実際に実験を行い、データを集めてスライドを作成。3学期には発表会を行います。
壮大な取り組みですね。
酒井先生 ぜひ発表会を見に来てください。生徒たちが「すごく楽しい!」と思ってくれることを目指して取り組んでいます。
富士見中学校 プリント
生徒の問いが学びを深める
問いは自然に出てくるものですか?
酒井先生 1学期には小学校の復習も兼ねて植物について幅広く学びました。その中で、「なぜ先生がカイワレ大根の種を渡したのか?」というところから問いを立てる子もいれば、「同じアブラナ科の植物と比較したらどうなるか?」という視点で考える子もいます。本当にさまざまなプランが出てくるので、夏休み明けが楽しみです。
「問題集の何ページをやってきなさい」といった宿題にはしたくないんです。理科として、データ処理や分析に慣れていくことが大切ですし、1人1台iPadを持っているので、それも活用してほしいと思っています。
遊び心のある図案で、学習意欲を引き出す
問いを書き込むプリントはオリジナルですか?
酒井先生 はい、生物科で作成したオリジナルのプリントです。ここ数年、中学1年生の生物の授業では、3学期に発表会を行う流れが定着しています。
発表会はとても面白いですよ。例えば、「水ではなくオレンジジュースで育てたらどうなるか?」「本当に甘くなるのか?」という仮説を立てて、その甘さをどう測定するかを考えたり。「大根の辛み成分って何?」「辛みを抑えるにはどうすればいい?」といった問いも出てきます。教科書には載っていないような疑問が、子どもたちの中からどんどん湧いてくるんです。そういう探究を、生物の授業の中で大切にしています。
中学1年生からしっかり鍛えられるのですね。
酒井先生 皆さん、中学入試を通してしっかり勉強してきてくれています。中学1年生の生物の1学期の内容は、受験勉強で身につけたことが中心なので、改めて「覚えなさい」と教える必要はありません。
それよりも、自分の疑問を深めたり、みんなで話し合って実験プランを立てたりするほうが、絶対に楽しいですよね。そういう時間を多く取りたいと思っています。実験も多めに取り入れていますが、中学2年生では高校1年生の「生物基礎」の内容を先取りしているので、決してゆっくりではありません。
富士見中学校 掲示物
理論と実験がつながる体験を、記憶に残してほしい
物理の授業では、どのような取り組みをされていますか?
前田先生 物理は生物と違って、理論が先にあるのが特徴です。最近、高校1年生の授業で「力学的エネルギーの保存」をテーマにした実験を行いました。まずは計算で理論値を予測し、その後に実験で測定します。
例えば、理論的には速度が1.2m/sになると予測される場面で、実際の実験では1.18m/s程度の値が出ます。生徒たちはその近さに驚き、「本当にこんなに近いんだ!」と感動します。
予測よりも小さい値になるのは、糸の摩擦などによるエネルギーのロスが原因で、誤差として自然なものです。しかし、逆に予測よりも大きな値が出る場合は、明らかな操作ミスです。こうした誤差の理由を考えることも、実験の大切な要素です。後半では「なぜ誤差が生じたのか?」という問いを班で議論し、理論と実験のつながりを深めていきます。
ただ「楽しかった」で終わるのではなく、計算ばかりで「つまらない」と感じることもなく、理論と実験が結びついた体験として記憶に残るようにしたいと思っています。
富士見中学校 物理室
式がイメージを伴うものになる瞬間
前田先生 現実の世界では、エネルギーは完全に保存されなければなりません。授業ではその保存則を計算式で示し、実際に実験してみることで、理論通りの結果が得られる体験をします。そうすると、式がただの記号ではなく、イメージを伴った理解へと変わっていきます。
実験プリントを提出させると、保存則の立式自体を間違える生徒もいます。「何を考えながら実験していたのかな?」と思うこともありますが、再提出のやり取りの中で「確かに理論値と一致していますね」と気づき、理解が深まる生徒もいます。そうした体験が、物理の学びにおいて非常に大きな意味を持つと感じています。
生徒の発想が、深い学びのスタートになる
目に見えないものを教えるのは難しいですよね。
酒井先生 私たちはまず「楽しく学ぶ」ことを大切にしています。生徒の考えを引き出し、それを聞いた上で「じゃあこういうアプローチをしてみよう」とやり取りができる授業のほうが、お互いにとって楽しいですよね。
前田先生 生徒から学ぶことも多いです。「そんな発想があるんだ」「こんな勘違いをするんだな」と、驚かされることもあります。
酒井先生 勘違いから生まれた結果によって、「そういう捉え方をしていたんだ」と気づくこともあります。カイワレ大根は1週間ほどで発芽するので、失敗しても「もう一度10粒あげるから、別の方法でやってみよう」と声をかけると、生徒たちは自分でどんどん新しい方法を考え出します。
「土じゃなくてティッシュで育ててみよう」「光をまったく当てなかったらどうなる?」「セロハンで色を変えてみたら?」など、アイデアが次々に出てきます。実験が好きな子は、先行研究を調べて「こういう実験を誰々さんがやっていたので、試してみました」と、自分で進めていくこともあります。
それって、とても大事なことだと思っています。新しい実験をするときには、過去の研究を確認することが必要です。そうした経験を中学の段階で積ませることも、理科教育の大きな目的のひとつです。
富士見中学校 図書室
インタビュー2/3
1924(大正13)年に富士見高等女学校として発足。40(昭和15)年に財団法人山崎学園が経営を引き継ぎ、47(昭和22)年に富士見中学校、48(昭和23)年に高等学校を設立。山崎学園は、山種グループの総帥・山崎種二(初代理事長)が教育事業に進出するために設立。