シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

富士見中学校

2025年08月掲載

富士見中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.「身近な植物をじっくり観察したことはありますか?」

インタビュー1/3

知識を総動員して考える力を問いたかった

今回のアサガオの問題には、どのような出題意図があったのでしょうか?

酒井先生 理科は「暗記科目」と思われがちで、苦手意識を持つ受験生も少なくありません。だからこそ、「理科は暗記だけではない」ということを伝えたいと思っています。今回のアサガオの問題では、生物の形態と機能の関係を自分で考え、言葉にする力を見たいと考えて出題しました。
アサガオは、小学1年生から育てて観察する身近な植物です。でも、気になったことを調べたり、自分で仮説を立てて検証したりするのは、まだ難しい年齢ですよね。だからこそ、自分なりの仮説を立てて、「こうかな?」と考えたことを言葉にする楽しさを、問題を通して感じてもらえたら嬉しいです。

スケッチの際、子どもたちはアサガオの白い細かい毛まで描きますよね。ふさふさした毛に気づくけれど、そこで止まってしまうことも多いようです。

酒井先生 そうなんです。なんとなくイメージで描いてしまう子も多いですが、中学1年生の授業では「見た通りに描きなさい」と伝えています。昆虫の観察でも、「足が曲がっていたり、1本なかったりしたら、そのまま描いていい」と教えています。昆虫の足は6本だからといって、勝手に描き加える必要はありません。気づいたことはたくさんメモして、理由は後から考えればいい。これは入学直後から強く伝えていることです。

理科/酒井 聡子先生

理科/酒井 聡子先生

子どもたちの発想は豊かで楽しい 「あなたの考え」を聞く問題に、自由な発想が集まった

解答にはどんなバリエーションがありましたか?

酒井先生 本当にさまざまな答えがあって、採点が楽しかったです。「こんな考え方もあるんだ」と驚かされることも多く、大人では思いつかないような仮説をたくさん出してくれました。
例えば、「毛が逆さに生えているから、雨が降ったときに水がすっと落ちて、根元に集まりやすくなる。だから効率よく水を吸収できるのでは?」という答えには、確かにそうかもしれないと感じました。他にも、「柔らかい葉や芽に雨水がとどまって蒸れて腐らないようにしている」といった思考も面白かったですね。

子どもたちの自由な発想が光りますね。

酒井先生 普段は答えを丸暗記するような勉強をしている受験生も、こうした問題に出会うと「知らないから考えられない」と思ってしまうことがあります。それはとてももったいない。最近は小学校でも探究的な活動が盛んで、自分の考えを言葉にする力が育ってきていると感じます。苦手意識を持たず、観察が好きだったり「なぜだろう?」と疑問を持てる子には、ぜひこうした問題を楽しんでもらいたいですね。

富士見中学校 富士見生の声を届ける

富士見中学校 富士見生の声を届ける

受験生が挙げた根拠が利点になっていれば◯ 事実と異なっていても、筋が通っていれば評価対象に

どんな答えを想定していましたか? 正答率は?

酒井先生 難しい問題だと思っていたので、正答率は低いかもしれないと予想していました。でも、実際には多くの受験生がしっかり書いてくれて、何も書かずに提出した子はほとんどいませんでした。自分の言葉でチャレンジしてくれたことが嬉しかったです。仮説としてあり得ることを書いてくれた子には、0点にはしていません。結果的に、正答率は予想以上でした。

前田先生 「事実とは違うけれど、書いた子にとっては根拠があり、それが利点につながっていれば◯」という確認を、理科の教員全員で事前に行っていました。だから、そうした回答も評価対象になっています。

酒井先生 実際とは違っていても、筋が通っていればいい。そういう柔軟な視点を大切にしています。

富士見中学校 校舎内

富士見中学校 校舎内

理科全体で入試問題を検討する時間は大切 物理・化学の先生との意見交換が新たな気づきに

ストーリー性のある問題作成は大変では?

酒井先生 生物科の中ではOKでも、理科全体に出すと物理や化学の先生から「わかりにくい」といった意見が出ることがあります。私たちにとって当たり前の考え方が、他分野の先生には伝わりにくいこともある。逆もまた然りです。だからこそ、理科全体で入試問題を検討する時間はとても重要だと感じています。

問題作成には時間をかけているのですね。

酒井先生 9月はとても忙しいです。夏の間にしっかり準備して、9月に意見を出し合いながら作り上げています。入学した生徒たちが「アサガオの問題だったよね」「ウサギのフンの問題だったよね」と話してくれると、「それ、私が作った問題!」と嬉しくなります。記憶に残る問題を作れたことが、何よりの喜びです。

富士見中学校 掲示物

富士見中学校 掲示物

インタビュー1/3

富士見中学校
富士見中学校1924(大正13)年に富士見高等女学校として発足。40(昭和15)年に財団法人山崎学園が経営を引き継ぎ、47(昭和22)年に富士見中学校、48(昭和23)年に高等学校を設立。山崎学園は、山種グループの総帥・山崎種二(初代理事長)が教育事業に進出するために設立。
「社会に貢献できる自立した女性の育成」を教育目標に掲げ、創設者・山崎種二の精神を受け継いだ学びを展開している。24年度より、米・金融・芸術の3分野を柱とする教育プロジェクトをスタート。実体験を通して課題解決力や発信力を磨き、未来を切り拓く力を育成。
「米」では、中1生が全員田植えから商品化・販売まで行う「コメ探究」に挑戦。農業の現場に触れ、現代の社会が抱える問題を学ぶ。中2生は都市型農業の発信地でもある地域の練馬区を舞台とした「ねりま探究」をお粉い、持続可能な食の在り方を探究していく。
「金融」教育は女子にこそ必要と考え、自分でお金をマネジメントするだけではなく、自他の幸福のためにお金を活用できる人を育成していく。そのためにファイナンシャルセンターを新設し、専門職による指導体制を整え、先進的な教育を実施。
「芸術」では、学校が所蔵する400点以上の美術品を教材に本物に触れる授業が展開。実際に日本画制作も行う。
池袋から西武池袋線で15分の中村橋駅から徒歩数分の環境にある。現在の校地には、中高校舎、体育館のほか地下温水プール、高3自習室、学習ホールなどを備えた50周年記念館、550名収容の山崎記念講堂、百人一首なども行われる茶室・和室などがある。各教室は冷暖房完備で校内はすべて無線LAN。図書館 ”Learning Hub”(略してL-Hub/エルハブ)は別棟となっており、“学びの核”として授業でも頻繁に使われる。
さらに、海外研修や留学、海外大学進学を支援するグローバルセンター、週6回スクールカウンセラーが常駐する「お話の部屋」、看護師の配置など、安全で安心な学習環境も整備。6年間を通じ、学びも生活も全力で取り組める環境となっている。
ほぼ全員が大学進学を希望し、24年度は90%が大学へと進学。国公立早慶上智ICU理科大GMARCHといった難関大学への進学率は50%を超える。大学との教育提携も進み、現在では東京理科大学、日本女子大学以外に、25年度は北里大学との連携も実現。特に理科大との連携プログラムは豊富にあり、自然科学系に進学する生徒は40%を超える。
自主性が重んじられ、校則は生徒会総務を中心に学校と話し合いを進めながら変化している。生徒会活動やクラブ活動が活発。中1のクラブ活動参加率は100%以上。また、全ての教員がクラブ顧問を務めている。特に人気があるダンス部は全国大会などで活躍。専門の器具を設置し活動する体操競技部や、温水プールがあるため水泳部は一年中活動ができる。