シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

富士見中学校

2025年08月掲載

富士見中学校【理科】

2025年 富士見中学校入試問題より

富士子さんは小学生の弟の太郎(たろう)君から, 夏休みの宿題の相談を受けています。

太 郎 5月に学校でアサガオの種をまいたんだ。今, 自分の鉢(はち)で育てているんだけれど, ずいぶんと大きくなってきたよ。夏休みには鉢を持ち帰ってアサガオの観察記録をつけることになっているんだ。

(中略)

富士子 観察して気が付いたことや疑問はメモしておくと良いわよ。疑問については, いっしょに考えてみようね。様々な根拠(こんきょ)をもとに結果について考えていく作業を, 難しい言葉で「考察」って言うんだけれど, とても楽しいのよ。

太 郎 なんだか難しそうだなぁ…。お姉ちゃん, たよりにしています!

(問)アサガオの葉やくき, つるには白くて細かい毛がたくさん生えていました。特にくきやつるに生えている毛は, くきやつるがのびる方向とは逆向きに(ななめ下に向かって)生えていました。なぜこのような毛がたくさん生えているのでしょうか。この細かい毛がアサガオにとってどのように利点となるのか, 根拠をもとにあなたの考えを述べなさい。
(例)細かい毛が逆向きに生えることで(根拠)なり, (利点)から。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この富士見中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

例1(細かい毛が逆向きに生えることで)
根拠:支えとなるものに引っかかりやすく(なり、)
利点:つるを巻きつけて上にのびることができる(から。)

例2(細かい毛が逆向きに生えることで)
根拠:こん虫がくきやつるをのぼったり、くきにふれたりしにくく(なり、)
利点:こん虫に食べられにくくなる(から。)

解説

アサガオのくきやつるに生えている細かい毛は、のびる方向と逆向きに(ななめ下に向かって)たくさん生えているという情報が示されています。

このような毛の生え方になっていることには、いくつかの理由があると考えられます。

たとえば、「アサガオのつくり(構造)と成長の仕方」という点に目を向けてみましょう。アサガオはくきやつるを巻きつけながら、上にのびていきます。このとき、下向きに毛が生えていることで、巻きつくものに対して引っかかりやすくなり、下に落ちずに、上へとのびていくことができると考えられます。

次に、「アサガオと他の生物の関わり」という点に目を向けてみましょう。アサガオにやってくるこん虫の中には、くきやつるから汁を吸おうとするこん虫もいます。細かい毛がたくさん生えていることで、こん虫が毛の中に入りにくくなるので、アサガオは汁を吸われにくくなると考えられそうです。また、くきやつるはのびていく先の方がやわらかく、汁を吸おうとするこん虫もやわらかい部分へ向かっていくでしょう。そのときに、こん虫が進もうとする向きとは反対の下向きに細かい毛がたくさん生えていることで進みにくくなり、汁が吸われにくくなると考えることもできそうです。

細かい毛が下向きに生えている理由は他にもあるかもしれません。もし、あなたが利点として考えたことがあれば、そのように考えた根拠とともに表現してみてください。

日能研がこの問題を選んだ理由

アサガオは、学校で育てて観察したり、家の周りで咲いているのを見かけたりと、わたしたちにとって身近な植物のひとつです。アサガオをさわったときに、くきやつるに細かい毛が生えていることに気が付いたという経験がある人もいるでしょう。一方で、くきやつるに生えている細かい毛の量や、毛が生えている向きにまで着目している人は少ないかもしれません。

この問題では、観察したようすとして、細かい毛の生え方が提示されています。問題に取り組むことで、子どもたちは「アサガオのつくり(構造)と成長の仕方」や「アサガオと他の生物の関わり」などについて、自分なりにつながりを推測していくでしょう。また、なぜそのように推測したのかという根拠も明らかにしながら説明する必要があるので、自然と筋道を立てて考察することになるのです。

じっくりと観察したからこそ気が付くことがあり、そこから疑問が生まれます。その疑問に対して、根拠を明らかにして自分の考えを説明するという科学的な思考の流れを、子どもたちは入試問題を解きながら体験できるのです。この問題がふくまれる大設問はすべてアサガオをテーマとしていて、観察をもとに考察したり、実験をもとに考察したりと、さまざまな視点からアサガオについて考察していくことができる問題といえます。

このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。