今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!
フェリス女学院中学校
2025年08月掲載

2025年 フェリス女学院中学校入試問題より
- 問題文のテキストを表示する
次の文章を読んで後の問に答えなさい。
(略)
なぜ建築家に空想力が必要なのか。建築の設計をする際、解決しなければいけない課題やクリアしなければならない条件は無数にあり、法規(き)(建築の法律のこと)も当然ある。そのうえで、人々の夢や思いを重ねていく。ともすると、課題や問題解決に注力してしまいがちだ。でも課題解決だけでは、機能的なものはつくれても、人を感動させられるものはつくれない。また、みんながいいと思えるような、多数決のようなものを目指して機能的にすぐれた建築はできても、人を感動させるものはできない。すべてをちょうえつしたうえで人を感動させられる“場所”をつくるのには、空想力が必要だと思っている。
空想と想像にはちがいがある。空想には変態さがある。この言葉を誤解しないでほしい。辞書を引いてみると、変態の言葉の意味の一つに――ふつうとちがう状態。一ぱん的な感覚からかけはなれた趣(しゅ)向・方向性という意味でこう定的に用いられる場合もある、と書いてある。僕が言いたいのは、この辞書にあるように、自分の感覚や欲求、しょう動を純すいに、どん欲に追い求めていくことだ。
(略)
(小堀哲夫『建築家のアタマのなか』より)
下に示すのは、同じ著書にある別の一節です。これを読んで、後の問に答えなさい。
今、大阪<注1>・関西万博のパビリオン<注2>の設計をしている。
空想の始まりは、クラゲだった。
クラゲを見ているとあきない。
いつまでも動き続ける、ゆらゆらと遊んでいるーークラゲは水のようで生き物なのか、動物なのか植物なのか、オスなのかメスなのかよく分からない。
だけど、クラゲには永遠の命を感じる。
よく分からないけれども、とても魅(み)力的に見える。
今この世の中にあるものは何かになろうとしている。何かにならなければいけない。だけど、クラゲはいつまでもゆらゆら水の中で遊んでいる。
訳が分からないものの、象ちょうとしてのクラゲ、僕はクラゲのような建築をつくりたいと思った。
大きな傘(かさ)の、ゆらゆらと動いている建築。
〈注1〉二〇二五年大阪で開さい予定の日本国際博覧会のこと
〈注2〉展示館
(問)あなたも一つのパビリオンを設計することになりました。
①どのようなテーマで作りますか。
②どのようなパビリオンを作りますか。
具体的に百八十字以内で書きなさい。
中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、このフェリス女学院中学校の国語の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)
解答と解説
日能研による解答と解説
解答例
[例1]
①変化することを楽しむ
②私は、建物全体を様々な生きた植物を組み合わせていくパビリオンをイメージした。建築当初に咲いた花が枯れていっても、別の花が咲き、パビリオンのイメージは変わっていくだろう。また、様々な樹は、期間中に新たな葉を茂らせ、枝を伸ばして生長していくことで、建物全体の形態も変わる。訪れる度に新しい装いを見せ、想定外を楽しむことのできるパビリオンになればと考えている。
[例2]
①帽子
②大きな庇が、ぐるりと建物全体を囲むようなパビリオンをイメージした。大阪の夏は日差しも強烈で暑い。パビリオンの帽子のような大きな庇が来場者の休める木陰を作る。さらに、ミストシャワーのようなものがあってもいいだろう。帽子であるので、庇は上げ下げができ、建物内の日差しも調整できる。合わせて、断熱材を使用して建造する。そんな、パビリオンを私は作ってみたいと思った。
解説
設問に示されている、小堀さんの同じ本の中にある「別の一節」から、①の「テーマ」と、②の「パビリオン」の具体をおさえます。一節から読み取れる「よく訳が分からないけれど、魅力的に見えるもの=クラゲ」というのが、①の「テーマ」に当たります。また、一節の最後にある「大きな傘の、ゆらゆらと動いている建築」というのが、②の「パビリオン」の具体に当たります。こうした手がかりをもとに、自分の設定した「テーマ」と、作りたい「パビリオン」の具体がつながるように、自分なりの「空想」を発揮します。
- 日能研がこの問題を選んだ理由
大阪・関西万博の「パビリオンを設計することにな(った)」という設定で、どのようなテーマで、どのようなパビリオンを作るのかと子どもたちに問いかけています。入試から、およそ二か月後に開催される万博のパビリオンを設計するという、子どもたちの心をわくわくさせてくれる設問となっています。
設問のもとになっているのは、建築家・小堀哲夫さんの『建築家のアタマのなか』(幻冬舎)という本から抜粋された文章です。大阪・関西万博の「クラゲ館」の設計を担当した小堀さんは、文章のなかで、人を感動させる、その人にしかできない建築を設計するうえで、空想力が必要だと述べています。そして、大人になると頭で考えることから始め、人の目や評価を気にして、子どものころはよくやっていた空想をやめてしまうとも述べています。
「空想力を失わずに大人になってほしい、そうすれば、小堀さんの言うように、人に感動を与える、あなたにしかできない仕事ができるかもしれない」――子どもたちが将来、大人になって仕事をするときの指針となるようなメッセージを、設問から読み取ることもできそうです。
このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。