シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

逗子開成中学校

2025年07月掲載

逗子開成中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.いい面、悪い面の両側面から事象を捉える問題

インタビュー1/3

まずはこの問題の出題意図を教えてください。

竹田先生 この問題は「ゴミ問題」を扱った身近なテーマで、将来子どもたちが大人になるにあたり考えなければならない課題のひとつとして取り上げました。他にもいろいろ課題はあるものの、このテーマを選び出題をすることとなった経緯としては、答えがひとつに決まるものではなく、「いい面もあれば悪い面もある」という両側面から物事を捉えられるような出題にしたいというコンセプトが最初にあったからです。つまり、ゴミを少なくする工夫として挙げた例が、実はゴミを増やす側面もある、といった逆の観点も見られるといった具合に、複合的に物事を考えられる受験生に入学してきてほしいという思いから作られた問題となっています。

解答としてはいい面、悪い面それぞれの理由を書くことになる問題ですが、どちらの理由においてもいろいろな答えが出てくるだろうという想定は事前にありましたか?

竹田先生 そうですね、複数あり得るかもしれないとは思っていました。とはいえ、条件をかなり絞ったので、「食品ロスを避ける」「容器のかさが多くなる」といった解答が多くなるだろうと想定していましたし、実際、受験生が書いてきたものは、この二つの解答が多かった印象です。

社会科/竹田 直也先生

社会科/竹田 直也先生

視点がどんなによくてもこちらが求めている解答として成立していないものは×に

誤答で特に印象的でかつ記憶に残っているものなどありましたら教えてください。

竹田先生 間違いで記憶に残っているものとしては、「容器を小さくするとゴミを処理しやすくなるから」といった解答ですね。ゴミの量を減らすことではなく処理のしやすさを指摘している解答がいくつか見受けられました。そういう視点は小学生として面白いなと感じたものの、こちらが問いたいゴミの量に関する課題とは少々違うかなと思いました。

場面設定も身近なものですし、ひらめいたら「確かに」と気づきが得られる問題だと思います。

竹田先生 「複数視点で違う角度から」といった部分を問いたかったので、作問段階ではかなり工夫しましたね。

あと惜しいと思ったうちの一つが、「食品ロスになるから」といった解答です。こちらは、「なぜ食品ロスが増えるのか」といった部分が書かれていなくて、部分点は与えるにとどまりました。おそらく理解はしていたと思うのですが、理由まで書けていれば受験生の考えていることがこちら側にもはっきり伝わるのに、と少々残念に思いました。

合っているか合っていないかはもちろん大事ですが、その過程の説明における過不足で差がついたといった印象でしたか?

竹田先生 そうですね、そこで差がついたかな、という感じです。「なんでそうなの?」って突っ込みたくなりながら採点していた記憶があります。

ほかにも、この問題の前の導入として、最終処分場の話題を出しているので、その最終処分場について言及している答案が一定数あったと記憶しています。ただし、この問題はあくまでも「食べ物を小分けにパックして販売すること」がごみを少なくするかどうかが論点なので、最終処分場の話にまではふみこむ必要はありません。導入として、最終処分場の埋め立ての話を立てていたために使いたくなってしまったのかな、といった解答がいくつかありました。

おそらくそのように書いてしまった受験生は、読解力もあり考える力もあったと思うのですが、「そういうことじゃないんだよな」「ごめんね」と思いながら採点していましたね。

逗子開成中学校 本館

逗子開成中学校 本館

練りに練られたストーリー性のある「調べ学習」調の設問

この設問で太郎君と二郎君が二人でやりとりをしていて、それぞれの立場や見方で背景にあるものに目を向けようとする感じがとても素敵だなと思いましたし、各々が興味を持って「次こういうことを調べようよ」「いいね」って言って終わるというストーリー性も素晴らしく感じました。

竹田先生 ありがとうございます。こういう会話は中学の授業などで調べ学習などをしている際にも見られます。自分の意見を押し付けるのではなく、人の言っていることを踏まえて「じゃあ」と+αの会話を加えることができるような子も結構いると感じています。そういう場面からもヒントを得ながらこういう会話をしていってほしいなという思いも問題に盛り込みました。

学校としては、覚えることはもちろん大事だと思うのですが、自分なりに調べて意見を述べたりすることを大事にしていますし、海洋教育の分野や総合学習の分野でもその点は取り組んでいるところです。生徒たちの中にはうまくしゃべれる子もいればなかなか言葉にできない子もいるので、学校としてやっていきたいという思いもあって、このような調べ学習の場面を設定したというのもあります。

逗子開成中学校 掲示板

逗子開成中学校 掲示板

いろいろな角度から与えられた素材を社会科的に読み取っていくことが重要

竹田先生 受験生には、文章だけではなくデータなども含めていろいろな角度からさまざまな社会科的な素材を読み取れるようになってもらいたいと思っています。小学校でも、そういったことは学んできていると思いますので、多角的に評価してあげられるほうが勉強してきたことをより発揮できるのではないかと感じています。

今年度は新聞記事を使った記事の読み取り的な出題をしています。そういった社会科的な資料を読み取り、いろいろな角度から自分なりの考えを深めていくことができるといいなと思い、ここ数年は現在のような出題スタイルにしています。

ちなみに、テーマ設定は最初に行うのですか?

竹田先生 そうですね。昨年の一次入試は最初にテーマ設定をする方向性で作問を進めました。でも、必ずしもそうでなくてもよいのでは?とは思っています。大事なのはいろいろな角度からさまざまな素材を社会科的に読み取っていくことだと考えていますので、学校としてはそういったものが問えるような入試問題にブラッシュアップしていければよいと思っています。

できるだけ複数パターンの解答が出ない工夫を

この問題、解答としてはいろいろ書けそうです。書き手の組み立て方によって答えが〇×△にわかれてしまう非常に練られた問題だと思うのですが、そのあたりはどうお考えですか?

竹田先生 作問は教員でチームを組んで行っていますが、「解答が無限に想定されてどれも正解になるんじゃないかといった問題だと、入試問題としてあまりふさわしくないのでは?」といったことはチーム内でもかなり議論したポイントです。

学校としてはきちんと考えられる子を正当に評価してあげたいので、こちらが伝えている手掛かりに乗っかってきちんと書ける子、またこちらが求めていることに合わせてかみ合った答えを出せる子であってほしいと思います。

なかには想定外の答えがあって、「これも正解だな」というものについて、それはそれですごく面白いと思うのですが、作問段階ではできるだけ答えを絞り込めるようにしていく工夫をしなければならないと感じます。その部分はどの記述問題でも論点となっていて、かなり工夫を施していますし、一番時間がかかる部分だと感じます。

生徒を教えている中で課題に感じるところを入試問題にも反映していることと思います。身近なことに関心を持ってほしいというのは、どの学校の先生も考えていることだと思いますが、ゴミ問題というテーマがこんなに広がっていく問題というのは、ある意味入試問題の究極の形ではないかと感じました。

竹田先生 今回、新聞記事を問題に入れてみたのですが、近年新聞を読む子やニュースを見る子が減ってきていると言われています。昔自分が小さい頃は親が朝ニュースを見ていて、それをよくわからないながらもなんとなく見ていましたし、親が新聞を取っていたのでテレビ欄や写真ぐらいは見ていたと思うのですが、うちでも新聞は取っていませんし、テレビも子どもが好きなものを見ています。

新聞記事はすこし硬いしなかなかとっつきにくいですが、そういうものにも触れて少しでも読み取ってくれるといいなと思い、大問3の問1は新聞をからめた問題を作成しました。

逗子開成中学校 海洋教育センター

逗子開成中学校 海洋教育センター

インタビュー1/3

逗子開成中学校
逗子開成中学校1903(明治36)年創立の神奈川県下最古参の男子私立中学校。東京の開成中の分校「第二開成中」として設立されたが、ほどなく独立。中学募集は一時中断したが、86(昭和61)年再開。近年の目覚ましい学校改革の試みは、バランスのとれた学校像の確立を目指すものとして注目されている。2003年(平成15)年に創立100周年を迎えた。
建学の精神『開物成務』にのっとり、「真理を探究し、目標を定め、責務を果たす」ことのできる人材の育成が教育の目標。レベルの高い学問を修めさせると同時に、独自の海洋教育や映像教育、コンピュータ教育等を駆使し、国際社会で活躍すべく、単なる進学校にとどまらない21世紀の新しい教育の創造を目指している。
逗子海岸に臨む校地には、ヨット工作室や宿泊施設もある海洋教育センター、本格的映写機と音響システムを備えた徳間記念ホール、コンピュータ棟やセミナーハウス、研修センターなどの充実した各施設が並ぶ。自習室も完備している。教育環境を見事に整備し、高い塀を廃した開放的な発想から、世界にはばたく人材が育っていく。
逗子開成の授業には演習が多く取り入れられている。問題を解く力や表現する力を、すべての教科・科目で身につけ、バランスのとれた基礎学力を育成している。学年によって教科、レベルは異なるが、習熟度別授業を実施。補習だけでなく、通常授業の効果をさらに上げる「特習」もある。中3から選抜クラスが新設され、学年ごとに入れ替えがある。高2からは文系・理系にコース分けをする。土曜日には各種講座や行事を実施するが、教師、保護者、生徒の好奇心がぶつかり合う土曜講座は世界・体験・達成・地域の4分野100講座以上とバラエティ豊か。
中1の時にヨットを製作するのは有名で、中3までの全員が逗子湾で帆走実習を行う。海洋教育と並び映像教育をも柱とする同校では、年5回映画鑑賞会が行われており、学校にいながらにして名作を鑑賞できる。中3では全員がニュージーランドに。高2の研究旅行はマレーシア・ベトナム・韓国・沖縄・オーストラリアのコース選択制で実施。中2~高2の希望者には1週間のエンパワーメントプログラムのアメリカ研修、カナダ研修、3ヶ月間の短期留学、1年間の海外長期留学がある。また、中1・中2では、校内における異文化英語プログラムなどがあり、語学以外に様々な体験ができる。奉仕活動にも熱心。