今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!
逗子開成中学校
2025年07月掲載
2025年 逗子開成中学校入試問題より
- 問題文のテキストを表示する
太郎くんと次郎くんは、ごみ問題について調べる中で、ごみを埋め立てる最終処分場が、残り平均23.5年しか使えない(2021年度時点、『日本国勢図会2024/25』より)ことを知りました。次の会話文は、最終処分場をできるだけ長く使うために何ができるのか、について2人が話している場面です。これを読んであとの問いに答えなさい。
太郎:まずはどのようなごみが最終処分場に埋め立てられているのか、その例を調べて図にまとめてみたよ。ぼくらが出したごみは、ごみ収集車で集められて焼却や破砕(はさい)などの処理がされ、最終処分場に運ばれているんだね。
次郎:そのまま埋め立てるのではなく、焼却や破砕の処理をしてから埋め立てることは最終処分場を長く使うた
めの工夫の一つだと考えられるね。
太郎:確かにそうだね。あと、この図をつくってみたら、最終処分場までたどり着くものを減らすためには、ごみをなるべく少なくすることが大切だとわかったよ。
次郎:それはそうだね。意識して探してみると、なるべくごみを出さないための工夫はいろいろなところでおこなわれているんじゃないかな。
太郎:次はそういう例を2人で調べてみようよ。
次郎:いいね!
(問)太郎くんは、再資源化する以外の方法でごみを少なくするための工夫として、下のような例をあげましたが、次郎くんは、この工夫はごみを増やす可能性もあるのではないか、と指摘(してき)しました。下の例を、①太郎くんがごみを少なくするための工夫だとした理由、②次郎くんがごみを増やす可能性もあるのではないかと指摘した理由として考えられることを、それぞれ説明しなさい。
中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この逗子開成中学校の社会の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)
解答と解説
日能研による解答と解説
解答例
①消費者が食べきれる量を選べるようになるので、食品ロスを減らすことができるから。
②小分けにする分、必要な容器が増えるので、容器のごみが増えるから。
解説
まず、「食べ物を小分けにパックして販売すること」について、食べ物を小分けにせず販売した場合と比べて、何が「ごみ」となるのかに目を向けます。そのうえで、小分けにすることが「ごみを少なくする」場合と、「ごみを増やす」場合の両面を考えます。
食べ物を小分けにパックして販売することで、消費者は一度にどれだけの量を買うのかという選択肢が増えます。これは、食べきれないなどの理由で、本来食べられるのに捨てられてしまう「食品ロス」の削減につながり、「ごみを少なくする」と考えることができます。
一方で、食べ物を小分けにパックして販売することは、その分だけ容器も必要となります。使い終わった容器がごみとなることから、「ごみを増やす」可能性があると考えることができます。
- 日能研がこの問題を選んだ理由
逗子開成中学校の今年の入試問題は、大設問が3つの構成で、どの大設問でも「ごみ」がテーマとなっています。この問題では、中学1年生の太郎くんと次郎くんが、ごみ問題について調べている場面がえがかれています。
「ごみを少なくする」ことについて、太郎くんはひとつの工夫を考えました。一方で、次郎くんは異なる視点から、「ごみを増やす可能性」を指摘しています。この問題では、なぜそのように考えられるのかという理由を、太郎くんと次郎くんのそれぞれの視点から説明します。
問題に取り組むときには、相手の考えの背景をさぐるために、根拠や着眼点に目を向けることが大切です。さらにこの問題は、社会の課題を考えていくときにも、解決策として有効だと思える方法であっても、それとは異なる角度からも考えてみると、別の課題が生じる可能性があるということも投げかけているように感じられます。そうしたこともふまえた上で、この問題からは、よりよい社会の実現のために私たちができることを、多角的な視点から考えていこうというメッセージも感じることができます。
このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。