今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!
獨協埼玉中学校
2025年07月掲載
2025年 獨協埼玉中学校入試問題より
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バスケットボールはシュートを打ってゴールに入れ, 得点を競うスポーツです。シュートには, 成功すると2点になるシュート(2点シュート)と3点になるシュート(3点シュート)があり, 点数はシュートを打った場所によって決まります。AチームとBチーム が対戦するとき, 次の問に答えなさい。ただし, この問題では,2点シュートと3点シュートのみ考えることとします。
(問)次のことがらのうち, Aチームが必ず勝つといえるものを①~⑤の中から2つ選びなさい。
- ①AチームはBチームより15本多くシュートに成功した。
- ②AチームはBチームより15本多く3点シュートに成功した。
- ③Aチームは35本, Bチームは20本のシュートに成功した。
- ④Aチームの得点は85点で, Bチームより15本多くシュートに成功した。
- ⑤両チームの成功したシュートの合計数は85本で,Aチームは, Bチームより15本多くシュートに成功した。
中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この獨協埼玉中学校の算数の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)
解答と解説
日能研による解答と解説
解答
③、④
解説
①~⑤のそれぞれの場合について、同点になる例や、Bが勝つ例がありうるかどうかを考えます。
①AチームとBチームのシュートの本数の差だけ決まっています。ですから、シュートの本数や、2点シュートと3点シュートの内訳は自由に決めることができます。
例えば、Aチームが2点シュートだけを115本成功させ、Bチームが3点シュートだけを100本成功させたとします。
このとき、Aチームは2×115=230(点)、Bチームは3×100=300(点)となりBチームが勝つので、Aチームが必ず勝つとはいえません。
②3点シュートの本数の差だけ決まっています。ですから、2点シュートの本数は自由に決めることができます。
例えば、3点シュートを成功させた本数が、Aチームが15本、Bチームが0本だとします。このとき、Aチームは3×15=45(点)となります。もし、Bチームが2点シュートをさらに25本成功したとすると、2×25=50(点)でBチームが勝つので、Aチームが必ず勝つとはいえません。
③それぞれのシュートの本数が決まっています。ですから、Aチームの得点ができるだけ低くなり、Bチームの得点ができるだけ高くなる場合を考えます。
Aチームがすべて2点シュート、Bチームがすべて3点シュートを成功させたとすると、Aチームの得点は2×35=70(点)、Bチームの得点は3×20=60(点)です。
このことから、どのような場合でもAチームの得点の方が高くなることがわかるので、Aチームが必ず勝つといえます。
④Aチームの得点とシュートの本数の差が決まっています。ですから、Bチームの得点ができるだけ高くなる場合を考えるために、Aチームのシュートの本数が最も多くなる場合を考えます。
85÷2=42余り1より、2点シュートが42-1=41(本)、3点シュートが1本であれば、シュートの本数が最大になります。このとき、Bチームのシュートの本数は41+1-15=27(本)より、27本すべてが3点シュートだったとしても、3×27=81(点)で、85点のAチームが勝ちます。
このことから、どのような場合でもAチームの得点の方が高くなることがわかるので、Aチームが必ず勝つといえます。
⑤和差算の考え方を使うと、問題文より、Aチームは(85+15)÷2=50(本)、Bチームは85-50=35(本)成功したことがわかります。つまり、それぞれのシュートの本数が決まっているので、③と同様に考えます。
Aチームの成功させたシュートがすべて2点シュートだとすると2×50=100(点)、Bチームの成功させたシュートがすべて3点シュートだとすると3×35=105(点)となり、Bチームが勝つので、必ずAチームが勝つとはいえません。
以上のことから、必ずAチームが勝つといえるのは、③、④のときです。
- 日能研がこの問題を選んだ理由
獨協埼玉中学校のこの問題は、バスケットボールの得点を題材にした、論理的思考を味わう問題です。この問題は、2点、3点という1本あたりの点数はわかっている上で、①~⑤のそれぞれについて判断します。チームの総得点、シュートの成功した本数、シュートの成功した本数の和・差などの条件が設定されていて、その条件のときに、「Aチームが“必ず”勝つといえる」かどうかを考えていきます。面白そうではあるけれど、反面、何から考え始めればよいのか、試験当日に悩んだ受験生もいたことでしょう。
「Aチームが必ず勝つといえるものを選ぶ」ということは、「Aチームが負ける場合や同点のときがあるものを取り除く」ということと同義です。ですから、Aチームが負けたり同点だったりする場合が1例でも見つかれば、答えとしてふさわしくないことがわかります。このようなとき、「もしすべてが〇〇だったら」のように「極端な場合」を考えることが、思考の始まりになることが多いものです。
「必ずいえるかどうか」を考えることや「極端な場合」を考えることは、算数や数学でも重要な考え方です。この問題は、そのきっかけという位置づけなのではないでしょうか。
このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。