シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

成城学園中学校

2025年06月掲載

成城学園中学校【理科】

2025年 成城学園中学校入試問題より

七輪とは, 炭を使って加熱をする道具です。七輪の側面には, 開閉できる窓がついています。
次の各問いに答えなさい。

(問1)右の図は七輪の断面図です。七輪の構造として最もふさわしいものを,次の(ア)〜(エ)から選び,記号で答えなさい。

(問2)七輪の中に炭をすき間なく重ねて置き, 火をつけたところ, 火はすぐに消えました。その理由を答えなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この成城学園中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

(問1)(エ)

(問2)炭をすき間なく重ねたために空気が通りにくく、炭に十分な酸素が供給されないから。

解説

(問1)ものが燃えるためには、次の3つの条件が必要です。

  • 燃えるものがあること
  • 酸素が十分にあること
  • 発火点以上の温度があること

七輪の中で炭が燃え続けるためには、この3つの条件がそろった状態を持続させる必要があります。したがって、酸素を十分にふくむ空気を窓から取り込み、炭に送ることができる構造がふさわしいと考えられます。また、炭が燃えてできた二酸化炭素や水蒸気などの気体は、まわりの空気よりも温度が高いので上へのぼっていきます。この上昇する気体の流れに逆らわずに、新鮮な空気を炭に送るためには、炭を置く網よりも低い位置に窓がある、エのような構造がもっともふさわしいと考えられます。

(問2)炭をすき間なく重ねて置くと、空気が通りにくくなります。そのため、炭に酸素が十分に供給されなくなり、酸素が不足したために火が消えたと考えられます。たき火をするときにすき間をあけて薪を組む方がよく燃えるように、七輪の中でも炭どうしのすき間を十分にあければ、空気が通ってすべての炭に酸素が十分に供給されて燃え続けます。

日能研がこの問題を選んだ理由

私たちの身のまわりにはさまざまな道具があります。朝起きてから夜寝るまでの間に、私たちは数えきれないほどの道具を使って生活していますが、そのしくみや構造まで理解しているものは、果たしてどれくらいあるでしょうか。

この問題では、七輪の構造やしくみを題材としています。現代では使う機会が少なくなった七輪ですが、飲食店で見かけたり、小学校の生活科で昔のくらしや道具を学ぶ際にふれたりしたことがある子どもたちも多いと思います。しかし、窓がどのような位置についているのか、炭はどのあたりに入れてあるのか、またなぜそのような構造になっているのか、ということまでは考えたことがない、という子どもたちも多いことでしょう。また、あまり深く考えずに炭を置いただけではよく燃えない、火が消えてしまうといった不具合が起こることもありえます。

この問題に取り組みながら、科目の学びの世界で身につけた知識を、実際の道具の構造と結びつけようとすることで、知識そのものの理解が深まることはもちろん、学んだことが身のまわりで活用されていることを知り、新たな視点から他のものを観察したり考察したりすることができるようになることでしょう。

このような理由から日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。