シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

清泉女学院中学校

2025年05月掲載

清泉女学院中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.物事の表面だけを見ずに、その奥にあるものを掴むことのできる生徒を育てたい

インタビュー2/3

では次に、この設問から離れて入試問題全体に関してのお話をお聞かせいただけますか?

北宮先生 清泉女学院の社会科という観点で言うと、このPOSシステムの問題もそうですが、生徒には目に見える表面的なものだけではなく、その奥にあるものを掴んでほしいという願いがあります。

小学校の教科書って本当に面白く、たとえば「水がどこから来るのか?」といった疑問を授業で学んでいく際に、蛇口をひねったら出てくるこの一滴の水は一体どこから来ているんだろう?と考えて、浄水場とか下水処理場などたどっていくわけです。にもかかわらず、人間は大人になっていくにつれて奥にあるものを見なくなってしまうので、水がどこから来るかなんて考えることはなくなってしまいます。

大問3で出題された再配達について聞いた問題もまさにそうで、目に見える商品が届くその裏側で起こっていることについて、「その商品はどこから来てどうやって届くのか?」「不在で受け取れなかった場合に商品はどこに行くのか?」「裏でどういう人が動いてくれた結果、私たちの手元に商品が届くのか?」など、見えない部分を見ることはキリスト教の本質でありかつ清泉女学院の社会科だから聞けることだと思っていますし、そういう考えをベースとして、歴史や地理、公民ともに作問を行っています。

私たちがいくら便利なものを考えてPOSシステムや再配達システムを作っても、一方では倫理的な部分を持っていないといけないわけで、裏を見たり奥を見たりすることは倫理の要素が多分にあると思っています。ただ、設問での聞き方をオープンにしてしまえば、まるで倫理の問題になってしまって社会の問題ではなくなってしまいます。だからこそ、我々も作問の際には相当気をつけていて、社会の科目なのだから社会で聞けることを聞くことに注力しています。

どの分野の問題も豊富な知識を持っていたら一発で答えられるかもしれないですが、御校の問題は、言葉の知識の一歩先をあえて狙って聞いていて、そこに引っかかってくる受験生を見つけようとしているのを感じます。

北宮先生 それはとても嬉しいですね。選択肢を作る際もそこを強く考えて、かなり魂を込めて作成しています。

社会科/北宮 枝里子先生

社会科/北宮 枝里子先生

入試で差がつくのは記述問題よりも基本的な知識問題

橘先生 来年度からは少し形式が変わり5分時間が短くなりますが、今回の問題のような背景やストーリー、奥にあるものを読み取って理解すればできる問題を入試問題では出し続けていくことが我々の責任だと思っています。知識量を問う問題も大事ですが、小学校の教科書をきちんと読み込んで、「こういう因果関係でこのような結果になった」と答えられる問題もしっかりと作っていきたいです。

今回のPOSシステムの問題は、私たち自身も思いもよらなかった発想を持ってきてくれる、面白いものを持った生徒を選抜したいという思いに叶ったものだと思います。しかし、試験である以上点差がつかないと生徒を選抜することができません。

北宮先生 実はこういう問題は点差がつかないんです。我々も自分の知識をつなげて答えを出そう、導こうという受験生の頑張りは、プラスに捉えて採点しているので点差がつきにくい問題となってしまうのです。

ではどこで差がつくのかというと、知識に関する部分です。例えば歴史分野だと時代の並べ替え問題だったりします。我々にとっては基本問題として出したつもりが、解ける子と解けない子がはっきりと分かれていて、昔よりもその傾向は強くなりました。これは小学校での学びが変わってきているからなのかはわかりませんが、記述はある程度書けるけれど、そのベースとなるはずの知識を問われると抜けている子は結構いる印象を受けます。

我々も「探究的な考える授業をやりたい」となれば、ある程度ベースの知識を生徒に持っていてほしい、と考えてしまいます。そこが抜けていると、探究の授業をやっていても見た目だけの探究で中身がスカスカなものになるからです。そのため、ここ数年の入試では、入学までに持っていてほしい知識が備わっているかどうかを測る試験にしたい、という思いが強くなってきました。

1期の試験では論述形式の問題はゼロにはしませんが、その手の問題は少し減らし、持っていてほしい知識が測れる基本問題を増やしていきたいと考えていて、そこで選抜できるようなテストにしようという意識を持っています。

入試で問うことは、我々が目指す見えないものまで目を向ける、奥を見ていくために必要な授業を実践するための土台とも考えています。土台となる知識をしっかりと持っている子は、授業を活性化してくれます。そのような子がたくさん来てくれることを期待しています。

清泉女学院中学校 掲示物

清泉女学院中学校 掲示物

インタビュー2/3

清泉女学院中学校
清泉女学院中学校1877(明治10)年に創立の聖心侍女修道会(本部はローマ、世界20か国に約50の姉妹校)により、1938年、前身の清泉寮学院創立。47年に横須賀に中学、翌年高校を設立。63年に現在地に移転し、2023(令和5)年に創立75周年を迎える。進学率のよさから「鎌倉一の女学校」の座を堅持している。
大船駅西側の丘陵地帯、栄光学園と谷ひとつ隔てた玉縄城跡に位置する。緑の芝生が美しい7万m2もある敷地には、観覧席がある体育館、2面の広いグラウンド、コンピュータ室、憩いのスペースのカフェテリアなどがあり、充実した施設・設備を完備。02年には修道院を改修した新校舎ラファエラ館が完成、美術室や音楽室、少人数授業対応の教室など設備が一新された。
「神の み前に 清く 正しく 愛深く」をモットーに、より良い社会をつくるために積極的に貢献する人の育成を目指している。ほかのカトリック校に比べると、「校則」や校内の雰囲気は驚くほど自由で、利益や結果よりも目に見えない精神的価値を大切に考える。
完全中高一貫を生かした独自のカリキュラム。大学受験を強く意識し、英語と数学は中1から習熟度別授業を実施。理科は実験・観察が重視され、社会では新聞・ニュース番組・映画など現実感のある教材を活用している。高2から文系・理系の2コース選択制になる。理系に数学演習などを設置したり、文系国公立大学受験者向けの授業(選択)を追加したりと、大学受験対策がより充実しさらなる飛躍を目指している。医療系にも強い。
入学後、5月に富士山麓で1泊2日のライフオリエンテーションキャンプが行われ、建学の精神と友人への親しみを養う。中2の夏休みのライフオリエンテーション、理科野外学習、清泉祭(文化祭)、体育祭、合唱祭、クリスマスミサなどの行事がある。ボランティア活動も盛んで、さまざまな福祉活動に参加。23あるクラブは参加率90%以上。なかでも、音楽部は全国大会で高く評価されており、2025年にはBudapest International Choral Festivals(ブダペスト国際合唱コンクール)にて、出場3部門すべてで金賞を受賞。
生徒が主体となって活動する有志団体も多く、「清泉ピースプロジェクト」「AI(人工知能)倫理会議」など他校を招待して特色ある取り組みを行う。模擬国連大会に参加する生徒も多数おり、校内や他校での大会だけでなく、国際大会にも出場。