シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

清泉女学院中学校

2025年05月掲載

清泉女学院中学校【社会】

2025年 清泉女学院中学校入試問題より

情報通信技術の発展は, 私たちの社会のあり方を変えてきました。その例として, POSシステムがあります。次の文と表を見て, あとの問いに答えなさい。

スーパーでレジを通るとき, 店員さんがバーコードを読み取っています。このバーコードを読み取る機械と, 金額を計算したり,おつりを出したりする機械を合わせたシステムを, POSシステムといいます。
POSシステムは, お店で売れたものが何だったか,どれくらい売れたのかをすぐに記録し, コンピューターが自動で管理してくれる便利なものです。これによって, お店は品物の在庫を管理したり, お客さんの好きな商品を調べたりすることができます。
表 ある小売店における商品の仕入れた数と売れた数
  POS導入前 POS導入後
  仕入れた数 売れた数 残った数 仕入れた数 売れた数 残った数
野菜A 40 38 2 42 41 1
果実B 35 24 11 33 30 3
飲料C 60 55 5 55 54 1

(問1)POS導入前と導入後をくらべたとき, 導入前の問題点を説明しなさい。

(問2)POS導入前と導入後をくらべたとき, このお店で働く人たちについて,仕事内容がどのように変化しましたか。どのような仕事に時間をかけられるか, という点にふれて答えなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この清泉女学院中学校の社会の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

(問1)導入前は売れ残る数が多く、捨ててむだになるものがあると考えられる。

(問2)導入後は、むだを省くことを考えるだけでなく、商品のならべ方を工夫したり、新商品を開発したりすることに時間をかけられるようになる。

解説

(問1)POS導入前と導入後を比較して、導入前の問題点を説明する問題です。表のうち、とくに果実Bに注目すると、POS導入前には売れ残った数が多かったものが、導入後には売れ残りの数が大きく減ったことが読み取れます。野菜A、飲料Cについても同様の変化が読み取れます。これらのことから、POS導入前には、実際に売れる数よりも余裕をもって仕入れており、その分、売れ残りが発生し、店側が不利益を被っていることがわかります。

(問2)問題文にもあったように、POSシステムは、「お店で売れたものが何か」「どれくらい売れたのか」を記録し、コンピューターが自動で管理するものです。これまで、店で働く人が売れる数を予測して商品の発注をしていたものが、POSシステム導入によってコンピューターが商品情報の管理をすることで、仕入れた数と売れた数の差を小さくすることができます。そうすると店で働く人は、商品発注の予測に使っていた時間を別の仕事にあてることができます。たとえば、野菜や果実の鮮度を目で確かめたり、商品の陳列を工夫してお客さんが手に取りやすくしたり、店内を循環してお客さんに商品の説明をしたりするなど、機械やシステムではできない、人だからこそできることに時間を使うことができ、それが新たな店の利益につながります。

日能研がこの問題を選んだ理由

私たちはふだん、コンビニエンスストア(コンビニ)やスーパーマーケット(スーパー)などで商品を購入するとき、店員が商品についているバーコードを読み取り、私たちは表示された金額を支払います。最近では、会計時に自分でレジで商品のバーコードを読み取らせ、レジに表示された金額を精算する、セルフレジを利用する人も増えているのではないでしょうか。このような光景は、今では当たり前になっていますが、以前は、店員が会計時に、直接レジで商品の種類や金額などを手で入力していました。その当時と比べたら、店員側には商品の情報を入力する手間が省け、入力ミスを防げるなどのメリットが、私たち消費者にもレジに並ぶ時間が短縮されるなどのメリットがもたらされています。

今回の清泉女学院中学校の出題では、情報通信技術の発展が私たちの社会のあり方を変えたものの一例として、「POSシステム」が取り上げられています。受験生はふだん消費者として、店で買い物をする側ですが、ここでは、店側の立場に立って、POSシステムがもたらした影響や、店員の働き方の変化を考えます。受験生は「POSシステム」という言葉そのものは聞き慣れていないかもしれませんが、問題にしめされた文章や表から読み取った情報をもとに、日常生活と結びつけて考えることで、POSシステムがどのようなものか、POS導入前と導入後の変化をとらえることができます。そして、読み取れた変化をもとに、POS導入により時間を短縮できた分、店で働く人がどのような仕事に時間をかけることができるかを考えます。このとき受験生は、機械やシステムではできない、人間だからこそできる仕事に目が向くことでしょう。たとえば、POSシステムでいくら在庫管理ができたとしても、野菜や果実などのように新鮮さが売りの商品は、実際に店で働く人が目で見て確かめることも大事です。このように、情報通信技術の発展と人とがうまく付き合うことによって、新たな価値や利益がもたらされることに気づかされる問題です。

このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。