シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

横浜翠陵中学校

2025年05月掲載

横浜翠陵中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.遊びの中にも算数の思考(論理的な思考)があることを伝えたかった

インタビュー1/3

子どもの誕生日プレゼントがヒントに

この設問の出題意図についてお話いただけますか。

菊地先生 本校の算数は大問が4つあります。4つのうち3つは「図形」と「速さ」と「規則性」です。それは決まっているのですが、もう1つは、どこの分野にも属さないもの、共通テストなどでもよくあるような会話文を取り入れた問題にしています。その会話文も、読んでいけば解ける問題、つまり、読解が必要になる問題を、毎年、意図して作問しています。それを踏まえて、今回はただ単に会話文にしてもあまり面白くないと思い、少し遊び心というか、よくあるような会話文ではない要素を入れてみてはどうだろうという思いがありました。

プログラミングと関係がありますか。

菊地先生 そうですね、関係あると思いきや、実は私には年長の娘がいまして。年長の娘に誕生日プレゼントを買う時に、「ラジコンが欲しい」と言ったんです。買って遊ぶと言っても幼児が動かすものなので、回ったり飛んだりするような、複雑な動きをするものではなく、2000~3000円のシンプルに動くものを買ってあげたんですね。それが、問題作成のきっかけになりました。まさにこの2通り。このとおりにしか動きません。ラジコンは、フローリングの床で動かすと傷がつくので、遊ぶ用のマットがあります。「その中でしか遊ばないで」と言うと、「それじゃできない」「こっちに行けない」と娘が言うのです。「それでもやってみな!」と言って、いろいろと遊んでいくうちに、娘はすごく工夫するようになりました。その姿を見て、これは、何か問題になりそうだなと思いました。年長が遊ぶような、すごく単純なラジコンでも、時間をかければこの動きだけで、方向に関係なく、どんなところにも行けるのです。すごくやりにくいラジコンだからこそ「深いな」と思いました。細かい設定は何日かかかりましたが、問題作成は1日でできました。

数学科/菊地 智秀先生

数学科/菊地 智秀先生

正答した受験生は5人に1人

あえて2種類の動きしかないというところがポイントになりましたか。

菊地先生 よく考えると、いろいろな動きをさせるには、ラジコンを開発する上でお金がかかるんでしょうね。単純な動きだけでも全方向に行けるものと、どちらがいいのかはわからないですけれども、そういうことを考えるきっかけになるのかなと思います。

どこにでも行けますか。

菊地先生 このマスが大きければどこでもいけます。それが何通りもあるので、最短じゃないかもしれませんが、絶対に行けます。

問題の難易度としては、どうなんでしょう。

菊地先生 私はそんなに難しくないと思いました。問2も、どの順番で動かせばよいか?という点を読めばできますし、なにかを動かせばできるだろうと思ったのですが、実際はそんなに正答率は高くなかったです。正答率は大体2割ぐらいです。

文章を読み、興味をもって手を動かせばできた問題

問1の正答率は予想と比べていかがでしたか。

菊地先生 これも予想通りですね。大体6割ぐらいです。

正答した子は、わりと算数が得意な子なのか、意外とそうでもないのか。どのように感じましたか。

菊地先生 私の感覚ですけれども、それはあんまり関係ないかもしれないですね。算数が得意な子は、どちらかといえば速さとか、そういう問題はできます。この問題は、文章を正しく読んで、手を動かすことができれば、いつかたどり着くので。確かに算数が得意な人はできますけれども、得意じゃなくてもできる問題だったのではないかなと思います。(正解者は)算数に興味のある子が多いと思います。おそらく、学校の授業などでは出てこないような感じの問題なので。そちらのほうがとっつきやすいというか、問題を解いていて面白かったのではないかとは思います。

私もこの問題を作るにあたり、子どもたちの目線に立って、特に男子の目線に立って、ラジコンやカードゲームなどを入試問題に取り入れたいと思いました。カードゲームは、条件を入れるととんでもないボリュームになってしまうので、それは断念してこの問題になりました。そういう遊びの中にも、算数というか、論理的な思考があることを、どうしても伝えたいというか。その子たちが、いずれ大人になった時に考えられるかもしれないと思って出しました。私も今、そうですから。

横浜翠陵中学校 校舎

横浜翠陵中学校 校舎

モットー「Think & Challenge!」を入試にも反映

1行程度の文章で答えさせている理由を教えてください。

菊地先生 翠陵の入試問題は、国語も算数も理科も社会も、1行程度の文章で書くというのが、2割でしたか。

田島先生 そうですね。2割ぐらいの記述問題を、必ず出すようにしています。「1行程度」としている理由の1つとして、字数制限をしたくない、という思いがあります。

菊地先生 実際、2、3行書いてあっても○にはします。要は、1行程度で説明してほしいということです。

田島先生 1行程度の端的な言葉でまとめてね、というメッセージです。でも、字数制限してしまうと、逆にそれに縛られて自由な表現ができないこともあるので。

子どもたちは、1行で大きく書くのですか。

菊地先生 そうですね。すごくたくさん書く人もいます。5行ぐらい書く人もいますけど、「bbbaaです」と端的に書く人もいます。

この「1行程度で書く」という問題は、以前から出していますか。

田島先生 記述問題は、5、6年ぐらい前から出していますが、算数では今年の入試から記述問題を入れました。数学科では、だいぶ前から規則性の問題など、面白い問題が数多くありますが、本校には「Think & Challenge!」というモットーがあり、受験生にも入試を通して、さらに考えてほしいと思ったからです。いわゆる落とすための問題変更ではありません。本校の「Think & Challenge!」の精神に則って、考えることを楽しめる子に入ってきてほしい。(記述問題の導入により)見たことのない問題が増えるかもしれませんが、新しい問題にも果敢にチャレンジできる子に入ってきてほしい、という思いもあり、そういう問題を入れています。説明会では、私たち広報の方から「考えることを楽しんでほしい」というメッセージを発信しています。少し考えれば解ける問題ですので、逃げずに取り組む姿勢や、チャレンジ精神を発揮してほしいです。

問題作成には、日常からアンテナを張っているのですか。

菊地先生 いつもアンテナを張っているというよりは、これは使えるなとという考えに至るんです。

横浜翠陵中学校 校内

横浜翠陵中学校 校内

記述問題では文章で答える習慣を

結構、採点が大変ですよね。

菊地先生 確かに文章のほうは大変です。基本的に答えが合っていれば○。途中式が合っていて、答えが間違っていたら△としています。

記述は、数学科の先生方で全部採点されているんですよね。

菊地先生 そうです。

○か×か迷うものはありますか。

菊地先生 1行程度の文章に関しては、文章になっていないものは基本的に△です。

尻切れとか。

菊地先生 そうですね。その中でも、これを伝えたいのだろうなということがわかれば、△にしています。あらかじめ設定しているキーワードがなかったら、×にしています。他の問題に関しては、基本、答えが合っていれば○にしています。
記述問題(で自分の考えを書くこと)はなかなか難しいですよね。中学でもちょっと難しいかもしれません。高校になってからなのかなと思うので。計算をして答えにたどり着く、そういう力を中学3年間で養うという感じでしょうか。ですから、小学生には、その土台となる計算力と、やはり中学になると少し難しくなるので、嫌いにならないこと。方程式などをやるようになると、たぶん嫌いになっていってしまうので、少しでも遊び心のあるような感じを忘れないでほしいと思っています。

インタビュー1/3

横浜翠陵中学校
横浜翠陵中学校1940年、学園創立者の堀井章一先生が示した建学の精神は「考えて行動のできる人の育成」。1986年に校訓「考えることのできる女性(ひと)」を掲げて横浜国際女学院翠陵高等学校が堀井学園3番目の学校として開校した。当時としては先を行く「国際理解教育」と「英語教育」を実践し、現在までの翠陵の教育の土壌が形成された。1999年には中学校を併設。その後2011年には、男子にも翠陵の門戸をあけるべく中高同時に共学化。校訓は「考えることのできる人」、校名は横浜翠陵中学・高等学校と改める。「翠(みどり)豊かな三保の陵(おか)」であるこの環境は開校当時から変わることなく生徒達の成長を見守り続けている。
学びのプロセスを「D・U・T」の三段階に分け、「知りたい(興味)」→「わかった(理解)」→「できた(演習)」のサイクルを繰り返しながら、着実に学力を高めていく。さらに、このサイクルの各段階で細やかな支援を行っている。翠陵グローバルプロジェクトとして、中学3年間をかけて、グローバルな現代社会の課題を設定して、その課題を様々な角度から調査・研究する。最終的にその研究成果をプレゼンテーションする力を磨くことも目標としている。理系プロジェクトとしては、授業とは違う視点から様々な刺激を与えるプログラムを通じて、理系の面白さ、身近さ、奥深さを感じさせます。柔軟な心と頭で受けとめることによって、興味の翼が大きく広がり、将来の自分の姿をイメージできるようになっていく。
高校2年次ではイギリス・シンガポールでの研修制度を設けており、「もっと英語を学びたい!国際関係の勉強をしたい!留学をしてみたい!」という思いを実現。海外教育研修は語学力を磨くだけではなく、世界への視野を広げ、希望進路にも大きな影響を与える。また、セント・ポール女学院(アメリカ)、日本メキシコ学院(メキシコ)、上海市第三女子中学(中国)などの姉妹校・友好校・交流校と親密に交流。各校には定期的に留学生を派遣し、同世代間の理解を深め、今後の国際社会のあり方を考えている。また、姉妹校・友好校・交流校からの交換留学生が来日する際には、在校生から希望者を募り、ホストファミリーとしての受け入れも行っている。
運動部・文化部合わせて20以上の部活動がある。活動は週に4日以内。学業とのバランスを保ちながら充実した活動をしている。部活動によっては高校生と共に活動することもある。中・高6年を過ごす中、集中して長く取り組むことにより、先輩・後輩との信頼関係や絆はもちろん、集団生活からの社会性、礼儀・礼節など心も体も鍛えている。