シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

横浜翠陵中学校

2025年05月掲載

横浜翠陵中学校【算数】

2025年 横浜翠陵中学校入試問題より

下の会話文は, みどりさんとりょうさんがラジコンについて話しているやりとりです。これを読んで, 次の問いに答えなさい。

みどり:「ラジコンを買ったのだけど一緒(いっしょ)に遊ぼうよ。」

りょう:「いいよ!どんなラジコンを買ったの?」

みどり:「専用のリモコンとコースがついているラジコンだよ。専用リモコンにはAボタンとBボタンがあって, 説明書にくわしく書いてあったから一緒に見てみよう。」

りょう:「へえ, 面白そうだね。早速走らせてみよう。」

説明書

問題図

 

(中略)

りょう:「の位置からBボタンを2回, Aボタンを2回おしたあと, Bボタンだけを使ってキの位置まで移動させて, そこから一気にのゴールまで進めるのではないかな。

みどり:「うん, そうだね。それなら, の位置からの位置まで全部で12回ボタンをおせばゴールまでたどりつけるね。」

(問)下線部について具体的にどのボタンを何回, どの順番でおせば良いか分かるように1行程度の文章で答えなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この横浜翠陵中学校の算数の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

Bボタンを3回おし、その後Aボタンを5回おす。

解説

★の位置からBボタン2回Aボタン2回おしたときの移動
図のように移動します。この4回の移動でラジコンはオの位置に移動し、前が西側を向いています。(図の上が北、下が南、左が西、右が東です。)

解説図:★の位置からBボタンを2回、Aボタンを2回おしたときの移動

オの位置から●(ゴール)までの移動
まず、前が南側を向くように移動することを考えます。オからBボタン3回おすと、キに移動して、前が南側を向きます。

解説図:オの位置から●(ゴール)までの移動

次に、キからAボタンを5回おすと、ゴールの●にたどりつきます。

解説図:キからAボタンを5回おす

つまり、オから、BBBAAAAAとおせばよいとわかります。

日能研がこの問題を選んだ理由

この問題に出てくるラジコンは、前に進むか、左斜め後ろに回転するかしかできません。なんとも不自由なラジコンですね。「もっと自由に動けたらいいのに……。」そう思った受験生がいたかもしれません。

実際の車のように、進むときも戻るときも自由に方向を変えられたら、★の位置から●の位置まで進むのは簡単です。しかし、この問題は2通りの動き方しかできないので、思うように動かすことはできません。ラジコンの移動を考えるときは位置だけでなく向きまで考えること、みどりさんとりょうさんの会話を参考にして●の位置まで進む方法をつかむことに、算数の問題としてのおもしろさがあります。

今の時代、道具はどんどん便利になっていき、使用者が使いやすいように機能が改良し続けられています。しかし一方で、今ある機能をどのように組み合わせていけばよいかを使用者が考えることで、用途の幅を広げることもできます。この問題で言えば、前に進むか左斜め後ろに回転するかしかできないこのラジコンでも、進み方をうまく組み合わせることによって、どのマスにもたどり着くことができるのです。

どのように組み合わせれば目的を果たすことができるかを考えることは、算数で培われる「筋道立てて考える力」を使う場面であり、この力は、製品開発やプログラミングなどの“ものづくり”においても求められる力といえるでしょう。この入試問題からは、自ら考えて生み出すことができる人を育てる、という学校の先生方の想いを感じられます。

このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。