シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

東邦大学付属東邦中学校

2025年04月掲載

東邦大学付属東邦中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.太陽の動きと植物の生態の両方を融合させた問題

インタビュー1/3

この問題の出題意図をまずはお聞かせください。

藤原先生 この設問は問題内容の読み取りをすればそれだけで解けるという問題ではなく、読み取った上で太陽の動きを考えなければいけなかったり、季節による自然環境の時間的変化などの知識が必要となったりする問題です。そのような知識があることを前提として、提示された条件を多面的に組み合わせて思考する力があるかどうかを問う目的で出題しました。

私たちが始めにこの問題を解いた時は、太陽の動きか植物の生態系を聞いているのだなと思って、「3」「5」「6」のどれかが正解だとは思いました。

藤原先生 冷静に考えたら「1」「2」「4」はどれも違うなとすぐわかるので、「3」「5」「6」の中からどうやって正解を絞り出していけばよいかが焦点となります。

季節ごとの自然の様子の違いは、小学校だと必ず教科書で取り扱っていますので、「知っていてほしいな」「関心が高いといいな」と思いながら出題しました。

受験生には意外と難しいのではないかと思ったのですが、実際はどうでしたか?

藤原先生 あまり良い結果ではありませんでした。少し難易度が高かったかなと感じました。

ヒマワリは理科の教科書でも必ず取り扱っているので、いつ頃育て始めてどれくらいで大きくなるかは小学生でも知っていると思います。しかしサクラに関しては、ヒマワリほど授業で取り扱ったりしないものなので、普段から自然を知ろうとする意欲がないと答えるのは難しいと感じます。また、ツバキは都会でもよく目にする樹木であるものの、常緑樹であるかどうかは受験生にとっては難しかったかもしれません。

一方、日当たりに関しては地図から容易に想像できたのではないかと思います。とはいえ、植物との絡みで混乱してしまった受験生は多かったと感じました。

理科/藤原 加苗先生

理科/藤原 加苗先生

今年度は大問の構成が少し変更に

御校はこれまで大説問で一つの題材といった出題形式が多めの印象だったのですが、この問題は太陽の動きと植物の生態を融合させた問題でした。このような問題を出題されたのには何か別の想いがあったのでしょうか?

藤原先生 例年大問としては3題構成で、生物と地学を扱う2分野では、生物に関して大問2題、地学に関しては大問1題の形式で出題していました。

しかし今年度は、大問の構成が地学2題・生物1題と生物の出題が減ったため、生物の大問の中にいろんな要素を盛り込んでみようと考えました。今回の問題が複合的な内容となっているのは、いつもと大問バランスが異なったことが要因の一つですが、今後も同じような形式になるのかというとそうではなく、都度状況を見て出題形式は決めていくつもりです。

自然への興味を持つ子どもが減っている

最近の子どもたちが持つ季節感や季節と生物との関係性といった知識に関して、どう思われますか?

藤原先生 自然が非常に好きな子は変わらず入学してきてはいるのですが、理科全分野に広く興味を持つ子は数年前にはクラスに半数ぐらいいたのが、ある時期を境にガクンと減ったのを感じます。

私は2分野(生・地)の授業を担当しているのですが、授業をしていて生物の写真を出したり、自然についての話題に触れても実感を持った反応が以前ほど多くないように思えます。「へーそうなんだ」「よく知らない」といった反応が明らかに多くなっていて、少し寂しさを感じることもあります。

もしかしたら、もっと関心の高いことがあって興味が薄れているかもしれませんが、どうしても受験勉強をする中で机上での学習が優先されてしまい、身近な体験とつながる学びの機会が時間的に減っている気はします。

ちなみに御校にはツバキはあるのですか?

藤原先生 入り口付近にツバキの生垣があります。ツバキについては授業で話を出す機会が1年時と3年時にあって、その際には葉っぱの構造について話すのですが、ツバキの葉には「クチクラ」という表面の固い構造があって、それが顕著な植物として知られています。そのため、「ツバキの葉がわかりやすいよ」「学校の入口にツバキがあるから見てみて」と生徒には言っています。

でも授業の時などに聞いてみると、「ツバキってどんな花なんですか?」「そんなのあったっけ?」といった反応が多く、生徒の意識からはかなり薄れている印象です。視界には入っていても、関心がなければただの風景となってしまう。学びのチャンスを逃がしてしまう一例とも言えるのではないでしょうか。

東邦大学付属東邦中学校 校舎

東邦大学付属東邦中学校 校舎

設問が長い=正答率が低いというわけではない

この問題は設問の文章がかなり長いので、最後まで読みきれなかった子もいるかもしれないと思ったのですが、その点はどう感じましたか?

藤原先生 確かにこの問題は文章が長かったと思いますが、過去にもっと長い文章の大問自体は出題されていますので、必ずしも設問が長いからといって正答率が低かったというわけではないと考えます。

文章が長ければそれだけ解くのに時間かかるのは確かです。いろいろなところから情報を引っ張ってきて統合的に答えないといけない問題でしたので、急いで入試問題を解かないといけない中で冷静に設問を読んでいく作業は、受験生にとってかなり大変だったのではないかと思います。

この問題を正解できなかった受験生も、試験後に答え合わせをした時に「なるほど」と思ってもらえると嬉しいな、という思いを込めて出題しました。もう少し正解者がいるだろうと想定していましたが、予想よりも低かったという印象です。

東邦大学付属東邦中学校 理科実験室

東邦大学付属東邦中学校 理科実験室

インタビュー1/3

東邦大学付属東邦中学校
東邦大学付属東邦中学校建学理念である『「自然・生命・人間」の尊重』は、創立者の額田豊・晉兄弟医学博士の自然観・生命観・人間観に基づいている。「感性」で捉えたものを「理性」に高めて理解できたとき出会える学ぶ喜びを重視する「プロセス重視の学習」を象徴する言葉である。
高1までの授業はリベラルアーツ型で幅広く学び、高2から文系と理系に分かれてより深く学ぶ。主要教科以外の時間も充実しており、たとえば「自分探し学習」。中学では各学年ともⅠ~Ⅲ期に分け、Ⅰ期は校外学習(中3は修学旅行)に関するテーマ学習、Ⅱ・Ⅲ期は学年毎のテーマに沿った学習を進めていく。高校では、提示されたテーマの中から、あるいは、生徒自らが設定したテーマ、このいずれかを選択してレポートを作成。
また、大学付属校としてもメリットを生かした講座も豊富にある。「学問体験講座」は東邦大などとの連携授業で、中学生が参加できる講座もある。医学部志望者には、外科手術体験セミナーまである。部活動も盛んで、中学校で8割強、高校で7割弱が、学業との両立を図りながら元気に活動している。近年、めざましく躍進している部活も多く、東邦生の学びの場の一つとして心身を鍛えている。こうした部活動や、その他にある行事も、生徒達にとっては「自分探しの場」である。