今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!
東邦大学付属東邦中学校
2025年04月掲載
2025年 東邦大学付属東邦中学校入試問題より
- 問題文のテキストを表示する
邦夫さんは,千葉県にある学校内で約1年間,友人達と協力して花がさく植物を数種類,種子から育てることにしました。(中略)その結果,植物AとBの2種類だけがうまく育ちませんでした。
【植物Aの適切な育て方】
種子は立春のころに,日当たりのよい,なるべく長時間日光があたる場所にまいて育てる。水は,土の表面がかわいたら,たっぷりとあたえる。
【植物Bの適切な育て方】
種子は4月の終わりごろに,日中はあまり日当たりがよくない場所にまいて育てる。水は毎日あたえるが,夏場でも霧吹(きりふ)きで少量あたえる程度でよい。また,水は多くあたえても問題ない。
植物AもBも,それぞれを育てた担当者は,適切な育て方通りの場所に種子をまき,水やりをしていたと話しています。植物Aは,順調に発芽して成長していたものの,植物Bの種子をまくころから枯(か)れはじめたということです。
(問)植物Aを植えていた場所は種子をまいた頃は日当たりがよかったものの,その後に日当たりが悪くなりました。これが原因で植物Aが枯れたことがわかりました。植物Aは,学校内のどこで育てられたと考えられますか。もっとも適切なものを,左の図中の①〜⑥から一つ選び,番号で答えなさい。なお,学校は田んぼに囲まれており,この1年間,大きな建物などは建っていません。
中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この東邦大学付属東邦中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)
解答と解説
日能研による解答と解説
解答
⑤
解説
問題で示されている情報を整理すると、植物Aの種子をまいた立春のころ(2月の初め)には、日当たりがよく、順調に発芽して成長していたものの、植物Bの種子をまくころ(4月の終わり)から枯れはじめたことがわかります。また、この学校は田んぼに囲まれていて、まわりに大きな建物などはないことがわかっています。
これらの情報と敷地内のようすを表した図をもとに、①~⑥の場所の地面の日当たりを整理すると、次のようになります。
- ①…南側に体育館があり、どの季節も日当たりが悪い。
- ②…南側に建物はないので、どの季節も日当たりがよい。
- ③…2月の初めは、まだヒマワリの種子をまく前なので日当たりがよく、4月の終わりごろもヒマワリはまだ大きく成長していない時期なので、日当たりは悪くなっていない。
- ④…西側に建物はあるが、南側に建物はないので、どの季節も日当たりがよい。
- ⑤…2月の初めは、サクラの花や葉もない状態で日当たりがよいが、4月の終わりごろには葉がついて日当たりが悪くなっている。
- ⑥…ツバキは、常緑樹で1年中葉がついているため、どの季節も日当たりが悪い。
植物Aに関する情報と、①~⑥の場所の日当たりをもとにすると、①と⑥は、2月の初めごろの日当たりがよくないので、種子をまく場所としてふさわしくないと考えられます。②、③、④、⑤のうち、⑤のサクラ並木で植物Aを育てた場合、2月の初めは日当たりがよいですが、4月の終わりごろには日当たりが悪くなって枯れはじめると推測できるので、植物Aは⑤の場所で育てたと考えられます。
- 日能研がこの問題を選んだ理由
植物を育てた経験がある人も多いと思います。水やりをして、日光がよく当たるようにして……と、手間をかけて育てても、元気がなくなってしまった、枯れてしまったということもあるかもしれません。そのようなとき、「水をやりすぎていたのかもしれないから、水やりをひかえよう」、「日当たりがあまりよくなかったかもしれないから、日当たりのよい窓辺に置いてみよう」など、原因を推測し、改善するための方法を考えるのではないでしょうか。
この問題では、植物Aが枯れた原因(日当たりが悪くなったこと)、植物Aの種子をまく時期、敷地内のようすを表した図など、多くの情報が示されています。その中から、植物Aを育てた場所を考えるために必要な情報を集め、集めた情報とこれまでに学んだことがらや自分が知っている身の回りの生き物のようすなどを組み合わせて、様々な視点から筋道を立てて推測していきます。
この問題は、1対1対応の知識や、覚えたことをそのまま答えるだけでは正解を導き出すことはできません。この問題に取り組むことによって、様々な可能性が考えられる中で、どの情報を使うのか、どのように筋道を立てて探っていくのかを、自分で決めて考えていくというプロセスを体験できるのです。このプロセスは物事を科学的に考えていく第一歩となります。
このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。