シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

国府台女子学院中学部

2025年04月掲載

国府台女子学院中学部の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.日頃から耳にする言葉に関心を持って、調べることを習慣づけよう

インタビュー1/3

言葉の奥深さに気づいてほしかった

まずはこの設問の出題意図からお話いただけますか。

水口先生 自分のスマートフォンを買い換えようと思った時に、「スマートフォン代」や「スマートフォン料」とはあまり言わないなと思ったことがきっかけです。全く言わないことはないかもしれませんが、よく使われるのは「通話料金」や「通信料金」ですよね。なぜだろう。面白いな、と思って自分でも調べたり考えたりする中で、「代」は品物(目に見える具体的なもの)に使われていることが多く、「料」はサービス(目に見えないもの)に使われていることが多い、と知りました。電気代や電気料など、曖昧なものもあるのですが、基本的には今、お話したような分類ができるわけです。

本当は選択肢を作らずに、AとBの例だけで受験生にどんな違いがありますか、と聞いて、書かせたかったのですが、小6では厳しいのではないかと思い、選択肢の文章で気がついてくれればいいなと思って出題しました。点を取らせるというよりも、受験生が問題を解きながら発見してくれればいいというイメージです。

当たり前のように使っている言葉にも結構違いがあって、そういう言葉の奥深さに気がついてくれるといいなと思いますし、私自身も思いがけないところで気がつくので、そうした感覚を受験生にも体験してほしいという思いで出題しました。

正答率はどのくらいでしたか。

土橋先生 今回は高かったです。68%でした。

水口先生 言われてみればそうだなって。導きがあるから、そこに当てはめてできたと思うのですが、書くとなると、なかなか難しい問題になっただろうと思います。

国語科・学年主任/水口 晶子先生

国語科・学年主任/水口 晶子先生

在校生は国語が好きな生徒が多い。

着眼点が面白いですよね。

水口先生 受験生が皆、解きながら言葉の面白さに気付いてくれれば今回は正答率が高くてもいいかな、というところですね。発見する面白さみたいなものを、この問題で感じてもらえるような気がします。

ちなみに、そういう微妙な言葉の違いに、生徒さんたちは敏感になっていますか。

水口先生 今の子どもたちは、語彙力が弱まっているような気がします。「言われてみればわかる……」というような感じですかね。

土橋先生 大概は気にかけないで過ごすことが多いのだと思います。普段から簡単な漢字であっても書けなかったり、ちょっと気に留めればわかるような言葉も気にかけないので、その違いに気がつかなかったり。ただ、気がついた時には「面白いね」と言って、生徒が自分で調べて違いを知る場面を作ることはあります。

水口先生 なかなか自発的にというのは難しいのですが、国語が好きな生徒は多いですよね。

国府台女子学院 校舎

国府台女子学院 校舎

知らなくても想像して答えを導き出してほしい

知識というよりも、その場で考える問題が多いですよね。その辺りは意図されてのことですか。

土橋先生 はい。単純な知識問題はもちろん大切です。でもそれだけではない応用力、想像力も見たいと思っています。その言葉を知らなくてもヒントを元に導き出せる答えがある。そこに必要なのは想像力です。
一つの知識を元にしてそれを発展させて想像することは日常生活にも生かされていく要素だと考えるからです。

英語のことわざもそうですよね。

水口先生 英語のことわざは、本校の小学部で、「小学生も英語をやっている」ということを聞いたことがきっかけです。小学部から教科書をちょっと借りて、難しい単語はもちろんルビをふり、少し英語を勉強していればわかるような単語を使って出題しています。受験生には、頑張って読んでもらい、注釈のところから大体の意味を把握して想像してもらうということですね。

指定された語を使って短文を作る問題の正答率が低下

毎年出されている、指定語を使った短文作りは差がつくのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

土橋先生 「はなはだしい」と「はなはだ」を使い間違えている受験生が目立ちました。事前の説明会で副詞を使うということはお話してあったのですが、「とりはだ」「はなばなしい」などと間違えている受験生も多かったです。

水口先生 この短文の問題は、言葉に興味を持ってもらえたらいいな、という気持ちで、大人が使うような言葉を出すことがあります。子どもはあまり出会うことがない言葉かもしれません。文章は短くても、短文になるとあまり出来が良くないというのは、最近、見られる傾向だと思います。

漢字の出題も少し差がついたのではありませんか。

水口先生 ニュースで、「人海戦術が~」と使っているのを見て、これは字としては簡単だ、でも難しいかもしれない、面白いからちょっと出してみようかな、と考えて、難しいことを覚悟の上で出してみました。簡単な漢字でも、できないことが結構ありますね。漢字の問題は常用漢字の範囲内で出題することを意識しているのですが、簡単な漢字でも書けないのは残念です。

私たちも問題を作っていて、同じようなことを感じています。今年の「人海戦術」は、入試で触れたことで、受験生にどんな字を書くんだろう、「人」と「海」なんだ、と気づきを与えた問題になったのではないかと思いました。

国府台女子学院 図書館

国府台女子学院 図書館

インタビュー1/3

国府台女子学院中学部
国府台女子学院中学部1926年に国府台高等女学校が設立され、1951年に、国府台女子学院と改称された。「智慧」「慈悲」という仏教の教えと「敬虔・勤労・高雅」の三大目標のもと、広い視野と深い思考を身に着けた社会で活躍する女性を育て続けている。面倒見の良さが定評で、“生活記録ノート”が担任とのコミュニケーション手段の一つになっており、内容は趣味の話や悩み相談まで様々。「先生が丁寧に返してくれるコメントやアドバイスが楽しみ!」という生徒も多い。自分の気持ちを文章で表現する力の育成にも繋がっている。
大学受験で重要な国数英の3教科は特に手厚い指導を実施。中でも英語は“活きる語学力”を養う。少人数習熟度別の英語授業で、一人ひとりの英語力に合わせたきめ細かな指導を実施。「情報リテラシー」の授業では、アクティブラーニングを通じて、読書力や表現力、問題解決力を身につける。また、放課後の時間を使って、学習の遅れや理解不足を丁寧にフォローアップする。週1時間の仏教の授業では、仏教の教えから哲学的な内容まで、幅広い内容に触れ多角的な視点を身につける。
図書館は、フロアを「ブラウジングエリア」「調べ学習エリア」「本の壁の部屋」と3つのエリアに分け、奥に進むほど静かに本と触れ合えるレイアウトになっている。体育館とほぼ同じ教室10室分の広さの空間で、自らの興味を探求することができる。書架も文系・理系のコーナーで分けており、それぞれ40席を確保。クラスごとの学びのテーマによって場所を使い分け、効果的に学べる空間設計となっている。また、「本の壁の部屋」は、旧図書館の書架をリメイクした、まさに本に囲まれた場所。本来なら閉架書庫に置かれる貴重な本も配架した、静かな場所になっている。
部活動とは別に、専門部と呼ばれる活動を行っている。これは、華道、箏曲(中学部・高等部)、茶道(高等部)をそれぞれ専門の先生に教わる課外活動で、高等部に開設されている表千家の茶道は、3年間継続すると「許状」を得ることができる。制服も、創立100周年を見据える2023年の春に一新。伝統のダークグリーンを継承したブレザーを始め、夏には快適に過ごせるポロシャツスタイルも用意された。また、ネクタイ・リボンの選択や、スカート・スラックスの選択も可能で、毎日楽しく学校生活を送ることができる制服が完成した。