シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

開智中学校

2025年03月掲載

開智中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.能動的に情報を収集する時代、雑多な情報を拾う機会は大幅に減っている

インタビュー3/3

社会科の授業の中で、昔と今とを比較して何か生徒の学び方が変わったのを感じることはありますか?

梅原先生 他の教員も言っていたのですが、当たり前だと思うことの基準値が低くなってきているのは感じています。たとえば「ピラミッド」と言われて何のことかよくわからない、「ナポレオン」という人名を聞いたことがない、そういった生徒は昔よりも増えている印象です。「その言葉、どこかで聞いたことがある」というような体験が年々減っているのではないかと思えてなりません。

今は小学生もタブレットを持っている時代なので、いろいろ自分で調べられて知識も豊富にあると思うのですが、実際はそうでもないのでしょうか?

梅原先生 今の子は自分が見たいものだけ見る機会が多く、雑多な情報を拾う機会が身の回りにあまりないのかな?という気がしています。「いつでもネットで検索できるから覚えなくてもいい」と思っているかもしれませんが、その検索すらしない、検索しようという気が起きていない状況にあるのを感じます。そんな状況を危惧して、「新聞は読ませるべきだ」という意見も教員の中にはあります。

向井先生 興味や関心が個別化しているのを感じています。たとえば、昔は野球の話をすると結構な反応があったのに、ここ最近ではわずか数人が反応してくれるレベルにまで減少してしまいましたし、テレビのCMの話をしても、テレビのない家も増えているため、見ていない生徒も多いです。

コンテンツ自体がフィルターバブルの影響でバラバラになっているため、共通の話題が本当に見つけにくい時代のように思います。実体験の話でいうと、今回の入試問題で「ホームドア」を聞く問題を出題したのですが、普段に電車に乗る生徒であれば、「ホームドアって言葉は一度くらい聞いたことあるだろう」と思いきや、全然できていなかったんですね。平塚雷鳥や阿倍仲麻呂などの歴史用語や雨温図などは普通にわかるのに、ホームドアが答えられない。これにはかなり驚きました。

開智中学校 校舎内

開智中学校 校舎内

暗記する際には「面白い」と思える感覚を持つこと

中学受験において、社会では暗記が必要な部分もあると思います。しかし、受験生の中にはあまり暗記を得意にしていない子もいると思うのですが、そういう子は普段の学習でどのように知識を定着させていくのがよいと思いますか?

梅原先生 よく生徒に話すのですが、英単語でターゲット1900というのがありましたけど、私は500単語ぐらいしか覚えられませんでした。この暗記力でも社会科の教員はできるんだよ、と言っています。これには「感覚」が大事です。感覚が身に付いていると、少ない知識でも考えてわかる量が増えていきます。私もよく生徒から「こんなこと考えたことも調べたこともないよ」というような質問を受けることがありますが、考えていけば「おそらくこういうことだよね」みたいな話はできるものです。

重要な語句を覚えていくには、何かと結びつけていかないと無意味な文字列となってしまうので、基礎体力的なものを入れていく必要があります。それは何でもいいのですが「面白い」と思える感覚がおそらく基礎体力になると思っていて、歴史でいえばマンガ日本の歴史のように興味関心のあるものを読んで、なんとなくでも頭に入っている状態にする、そしてそれぞれの時代におけるなんとなくのイメージを持っておくことが大切です。感覚が身についてくることで、勘が働くようになっていきます。

向井先生 ただ機械的に暗記して「覚えましょう」と言われて覚えていくようなことでも、教員に当てられて正解することが楽しいと思えることは意外とあります。やはり基礎的な知識をしっかり暗記することは、学ぶ楽しさや自信にもつながる大切なステップだと感じます。

梅原先生 暗記の方法としては、語句を隠して問題を解いていくといった一般的なやり方でよいです。ただ、人間は忘れやすい生き物なので、少し日を置いたのち同じ問題を再度解いてみる、それを繰り返すというのがとても重要で、そうすることで記憶が定着していきます。

先ほど出てきた「ホームドア」のように身近で見たり聞いたりするような問題に対処できるようにするために、受験生の親御さんはどのような機会を子どもに与えるといいでしょうか?

向井先生 テレビのニュースや新聞などは触れておくとよいと思います。本校は探究をする学校ですから、普段から「これ何だろう?」「何でこのドアがあるんだろう?」「このドア、今までなかったのにどんどん増えているのは何だろう?」といったように、周りにあるものの変化に対して疑問を持ってほしいです。

梅原先生 「こういうのが出るから勉強しておけば?」というよりも、実際に見たり触れたりしたことがどこかで受験に活きてくるかもしれない、と思うことは大切かもしれませんね。

開智中学校 自習室

開智中学校 自習室

インタビュー3/3

開智中学校
開智中学校1997年に岩槻に開校して以来、「平和で豊かな社会を作ることに貢献できる、創造型・発信型の国際的リーダーの育成」を教育理念とし、探究型の学びを中心とした新しい学習のあり方を模索し推進している。
岩槻キャンパスの自然豊かな敷地にある一貫部棟校舎は中央に5階までの吹き抜けがあり、開放的な空間となっている。その一階部分にはテーブルが複数置かれ、生徒たちが自習やミーティングなどで使用している。蔵書3万冊を超える図書室、広大なグラウンド、バスケコート二面がとれる体育館のほか、ステージ発表や講演などが行われるホールが複数あり、自習室にはブース式の学習スペースが140席程度用意されている。昼食は中2まで弁当持参だが、希望者には給食弁当もある。中3からは食堂などが利用できる。
入学時に入学者自身が自らの志望に応じてIT(目標の大学が決まっている人のコース),MD(医療従事者を目指す人のコース),GB(グローバルな仕事を志望する人のコース),FD(志望をこれから考えたい人のコース)の4つのコースのいずれかを選択する。加えて、全員がS特待生で構成される「創発クラス」を2024年度入学から設置。創発クラスでは数学の特別授業「ガウス数学チーム」など各教科でより発展的な授業を展開する。この4コース制と創発クラスは高1までで、高2からは志望大学別のクラス編成となり、医学部を目指す医系クラスも設置される。高2からは放課後の特別講座が開始され、生徒の多くが塾や予備校に頼ることなく難関大学への進学を目指す。さらに国際バカロレアのディプロマ・プログラムの候補校ともなっており、2025年4月以降はこの資格を利用しての海外有名大学への進学も視野に入る。
開智の教育の核となる探究活動は、中1から生徒全員が個人のテーマを決め、疑問・仮説・検証・結論のサイクルを何度も繰り返し、考察を深めていく。毎年行われる探究発表会ではポスター発表、スライド発表など様々な方法で生徒全員が発表を行う。フィールドワークは、中1は磯、中2は森で「はかる」「くらべる」をテーマにグループワークを行う。中3は関西をフィールドとして地域調査を行う。高1では首都圏で個人の探究テーマに関わる調査を実施し、高2ではイギリスの大学で現地の大学生を相手に探究の成果を発表する。中2~高1の希望者対象にオーストラリア・アメリカ・シンガポールなどへの語学研修もある。
生徒の自主性を重んじる校風で、生徒主体で作られた委員会や部活動もある。それ以外でも生徒の自主的な活動が活発で、SDGsなどの活動も盛ん。部活動は運動部18、文化部12、同好会1。ディベート部や文芸部かるた部門などは全国レベルでの活躍もある。