出題校にインタビュー!
開智中学校
2025年03月掲載
開智中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.自身の旅行体験をもとに作成された問題
インタビュー1/3
まずは、この設問の出題意図について教えてください。
梅原先生 現在、社会科の責任者をしている立場ですが、たまたま本校の6年地理の1学期の期末実験で十島村の問題を出題した教員がおりました。20年以上前、私自身が十島村の全てを巡ったことがあったので、ふと「これで問題が作れるな」「こういった島々に少しでも興味を持ってほしいな」と思ったのが大きなきっかけです。普段は世界史の担当で、世界史の問題で十島村について聞くことはありませんから、他の教員から刺激を受けたというのが問題作成への大きな要因のひとつとなりました。
先生が実際に十島村に行かれた時も、同じような時刻表だったのですか?
梅原先生 そうですね、当時とほとんど変わりませんね。夏休みのあたりにはもう1往復増えたりしますが、ほぼ同じだと思います。
実際に島の民宿に泊まったのですか?
梅原先生 はい。6畳間がいくつかあるような民宿で、食事を出してくれる普通の宿泊所に泊まりました。日用品を扱う店が少なからずあったりはしましたが、資料と同様に店がほとんどありませんでしたね。ちょっとした食べ物、たとえばレトルトカレーみたいな日持ちするものが売っているよろず屋のような店舗がありました。私はいつも入試問題を作る際、先に文章を書くのですが、島に役所がないことを書いたので、「そういえばここは島に役所がないから、これを問うてみるのも面白いかな」といった感じで作問を進めていきました。

社会科主任/梅原 健悟先生
時刻表を正確に読めない子が増えている
子どもたちの解答にはどういった傾向がありましたか?
梅原先生 実際に2つの表をこちらの意図通りに読み取ってくれたと受験生はそれほど多くありませんでした。今回、私が一番驚いたのは、この表を見て「鹿児島までどの島へも10分で到達できて利便性がいいから」といった解答が、かなりあったことです。こちらとしては、想定外の解答だったため「何を言っているんだろう?」と思い、改めて時刻表を見て「子どもたちは、こういうふうに見ているのか」と感じさせられたのを記憶しています。
今の時代、乗り物の時刻を調べようと思ったらスマホアプリで何時発・何時着がすぐに出てきますから、子どもたちで時刻表を正確に読める子はなかなかいないかもしれません。
梅原先生 「実感がわかない子だと、この時刻表がこんな風に見えるんだな」と正直かなり驚きました。大人だったら「この地図をみてわずか10分で鹿児島につくわけがないでしょう」と思えるはずのものが、小学生には少し難しかったのか、と改めて感じました。
作問チームの中でも、あまり時刻表に慣れていない教員からは、「これどうやって見るの?」「少しわかりにくい」といった意見もありました。とはいえ、村役場のホームページ自体が掲載した時刻表と同じものだったので、そのまま出そうと思いました。
印象に残った解答には、他にどのようなものがありましたか?
梅原先生 「島が小さいので村役場を建てるスペースがないのではないか」といったものもありました。なんとか一生懸命答えを引き出そうと受験生なりに頑張ってくれたのを感じましたね。

開智中学校 校舎
正答率は低めと受験生にとっては少々難しかった問題
ちなみに正答率に関してはどう思われましたか?
梅原先生 こちらが想定した解答をしてくれた受験生はかなり少なかったです。もう少し正答率は高いと思っていたのですが、やはりこの2つの表を読み取ってというのが難しかったようで、表2については「店の数は少ないし、鹿児島の方が多いから」としっかりと解答を考えてくれたものが見受けられたのですが、表1の時刻表の読み取りが受験生にはわかりにくかったかもしれません。
採点のポイントなどはいかがでしたか?
梅原先生 交通において、一度鹿児島まで出向くと少なくとも日帰りでは帰ってくることができません。商店数と民宿数が載っているので、「泊まりがけで行くのであれば、鹿児島で物を買ってくることができる」といった解答については〇にしていますし、「鹿児島へ行くのに他の島に泊まるところも満足にないから」といった解答も〇にしました。
まったくの空白といった解答はほとんどありませんでした。印象に残った解答としては、「ロシアが攻めてくる」みたいなものがありました。これはこの設問が含まれた大問のリード文に、北方領土について触れられている部分があったからだと思いますが、そのような解答は比較的多くあって、「今どきだな」と思いながら採点したのを覚えています。本文をしっかり読んでくれているのはわかるので、ある意味嬉しいのですが、今回はこの表だけで解答してほしかったですね。

開智中学校 校舎内
教員自身が面白がれる問題を出題するスタイル
以前から御校の入試問題には、必ずリード文があったのちに設問がある、といった構成だと記憶しているのですが、子どもたちには、リード文をどのように読んでほしいという何かしらの意図のようなものはあるのでしょうか?
梅原先生 私が初めて入試問題を作ったのが10年ほど前になるのですが、この頃から現在のスタイルが確立されていて、社会科教員のポリシーとしては「まずは自分が面白がれる問題を出そう」というのがあります。こちらが面白いと思っていることをまずアピールする、それが本校の社会科のひとつの特徴であることを示したいと考えています。これはある意味と本校が掲げる「探究」の活動に近く、自分の興味があるものを進めていくことを実践していることにつながっています。
そういう経緯があって、私としてはまず本文を書いてから問題を考えていきます。定期テストも同様の作りになっていて、自分の書きたいことを書いて、そこから問題を作っていくスタイルで作問しています。
入試問題においては、「幅広くいろんなことに興味を持ってほしい」「こういう文章を面白く読んでくれる子にできれば入ってほしい」という願望があります。リード文を読まなくても解けなる問題もありますが、それをあえて読んでくれる受験生に合格してもらいたいという思いが強いです。
御校の社会科の入試問題に書かれている文章はいつも読んでいて楽しいと感じます。中には、リード文をスルーしていきなり設問から読み始める子もいるので、どうやって「リード文もしっかり読んだほうがいいよ」と子どもたちに伝えようか悩んでいました。先生方の意図や想いが知れてよかったです。
梅原先生 第1回・第2回といった数字がついた試験と、特待A・Bといった記号がついた試験で異なるのですが、数字がついた試験の場合、割と知識を問う問題がメインとなっていますので、リード文を読んでいる時間的余裕がなくても、コツコツ勉強していれば点数が取れる問題が出題されています。ですので、読まれなくてもしょうがない面は当然あるのですが、試験が終わって家に帰ったら読んでほしいなとは思っています。一人でも興味を持ってくれる生徒がいればいいなと思って作問していると知ってもらえればうれしいです。
インタビュー1/3