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開智中学校
2025年03月掲載
2025年 開智中学校入試問題より
- 問題文のテキストを表示する
(問)十島村は,7つの島に756人が分かれて住んでいますが,十島村の村役場はどの島にもなく,鹿児島市の港の近くにあります。村内に村役場があるよりも鹿児島市にある方が住民にとって都合がよいからですが,その理由を【表1】と【表2】を参考にして,考えて説明しなさい。
中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この開智中学校の社会の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)
解答と解説
日能研による解答と解説
解答例
十島村の7つの島は、鹿児島港と名瀬港を結ぶ船が週2往復あるだけで、各島内の商店も宿泊施設も少ない。村役場が鹿児島市内の港の近くにあることで、宿泊して、役所での用事を済ませたり、島にない商品やサービスも購入したりできる点が、島民にとって好都合である。
解説
日本は14125もの島々からなる島国です(国土地理院調べ)。このうち本土5島をのぞく14120が離島とされ、有人島はその約3%にあたる417ありますが、その多くは、離島特有のきびしい生活環境の下にあります。この問題は、こうした離島の住民の生活のようすの一端を、鹿児島県の十島村における村役場の所在地を例に、資料の読み取りを通して考えてもらおうというものです。
その資料としては2つの表があげられています。【表1】によれば、十島村内の唯一の公共交通機関である船は、県庁所在地である鹿児島市の鹿児島港と奄美大島の名瀬港の間を週2往復、片道約16時間かけて7島に寄港しています。また【表2】からは、村内各島の人口は最も多い中之島で148人、最も少ない小宝島では56人で、そのうち5島には1~2の商店がありますが、2島では商店0であることがわかります。スーパーマーケットなどの大規模小売店はもちろんどの島にもありません。
これらの資料からうかがえる十島村の各島民の生活の一端を推測してみると、村内の島民がさまざまな手続きをしたり、証明書等を受け取ったりできる場所と、島内では買うことのできない商品やサービスを購入したりする場所が同じであれば、島民にとってより利便性が高いことになります。また、さまざまな人と会ったり、情報を収集したりする上でも鹿児島市内に出向く意義は大きいかもしれません。つまり、鹿児島市内に村役場が置かれていることにより、島民が生活に必要な手続きをしたり、物や情報を手に入れたりということが一か所でできるということが島民にとって好都合であるといえるのではないでしょうか。
- 日能研がこの問題を選んだ理由
日本は14125の島々からなる島国です。このうち、本州、北海道、四国、九州および沖縄本島(沖縄島)をのぞく14120が「離島」とされています(国土交通省の資料による)。これらの島々は、日本の領海や排他的経済水域等の保全、海上交通の安全の確保、海洋資源の開発と利用、さらには多様な文化の継承、自然環境の保全などに重要な役割を担っているとされています。
ただ、これらの離島のうち有人島とされるのは417島と全体の約3%に過ぎず、それらの住民を合わせた人口が日本の総人口にしめる割合も約1%でしかありません。政府は離島振興法などによってこれらの島々の住民の生活向上を目指していますが、離島がもつ自然条件が、いわゆる本土の住民に十分に理解されているとは必ずしもいえません。
開智中学校の今年の社会の問題では、こうした離島をテーマとして、その現状や歴史についてさまざまな角度から問いかけることを通して、日本の国土が多くの島々からなっていることの意味や意義を、受験生が日本や世界についてもっている社会科的な知識をもとに考え、見直してもらうものになっていました。
今回ここで取り上げた問題は、離島での生活をほとんど経験したことはないであろう受験生に、資料を読み取ることを通してそのきびしい自然条件の下での生活のようすを考え、文で表現させるものです。こうしたところに、「探究・発信型教育の実践」とその前提としての「硬質な教科型学習」という、開智中学校が目指す教育にかなう、受験生に求める力のありようが表現されていると考え、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ばせていただきました。