今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!
市川中学校
2025年03月掲載
2025年 市川中学校入試問題より
- 問題文のテキストを表示する
月曜日から金曜日までの5日間の時間割を作ります.
この時間割には国語, 算数, 理科, 社会の4教科が下の〈ルール〉にしたがって入ります.
ただし, 1日の時間割は4時間目までとします.このとき, 次の問いに答えなさい.
〈ルール〉
- 算数は毎日2時間ある.
- 国語, 理科, 社会は, それぞれ5日間で3時間以上ある.
- 水曜日には国語と社会がある.
- 理科はすべて4時間目のみにある.
- 国語, 社会は, それぞれ1日2時間以上あったとき, その教科は次の日にはない.
- 1日の中で同じ教科が連続することはない.
月曜日の時間割が1時間目 算数, 2時間目 国語, 3時間目 算数, 4時間目 国語であるとします.
(問1)火曜日の時間割を答えなさい.
(問2)時間割は何通り作ることができるか求めなさい.
中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この市川中学校の算数の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)
解答と解説
日能研による解答と解説
解答
(問1)1時間目:算数 2時間目:社会 3時間目:算数 4時間目:理科
(問2)18通り
解説
<ルール>のそれぞれの項目に、次のように、上から順に(1)~(6)と番号をつけます。
- (1)算数は毎日2時間ある。
- (2)国語、理科、社会は、それぞれ5日間で3時間以上ある。
- (3)水曜日には国語と社会がある。
- (4)理科はすべて4時間目のみにある。
- (5)国語、社会は、それぞれ1日2時間以上あったとき、その教科は次の日にはない。
- (6)1日の中で同じ教科が連続することはない。
以下、<ルール>(1)などと呼ぶことにします。
(問1)
月曜日の時間割と<ルール>から、次のようにわかることを作り出していきます。
- <ルール>(1)より、火曜日には算数が2時間あります。
- 月曜日に国語が2時間あるので、<ルール>(5)より、火曜日に国語はありません。
- <ルール>(3)と<ルール>(5)より、火曜日に社会が2時間あることはありません。
- <ルール>(4)より、理科が2時間あることはありません。(火曜日に限らず)
上記4点より、火曜日の時間割は、算数2時間、社会1時間、理科1時間と決まります。
また、それぞれの順番に関しては、
- <ルール>(4)より、理科は4時間目にあります。
- <ルール>(6)より、2時間ある算数は連続しないとわかります
上記2点より、理科が4時間目、算数は1時間目と3時間目と決まり、残った社会は2時間目にあるとわかります。
(問2)
(問1)に続いて、<ルール>(3)に条件がある水曜日の時間割を考えます。
<ルール>(1)と<ルール>(3)より、算数が2時間、国語が1時間、社会が1時間あります。
それぞれの順番に関しては、<ルール>(6)より、算数がある時間は、次の図のように「ア:1時間目と3時間目」「イ:1時間目と4時間目」「ウ:2時間目と4時間目」の3通りが考えられます。
また、国語と社会の時間に関する<ルール>はありません。よって、ア~ウのどの場合でも、国語と社会の時間は2通りずつあります。
したがって、水曜日の時間割は3×2=6(通り)考えられます。
あとは、残った木曜日と金曜日の時間割を考えます。
- <ルール>(1)より、算数が2時間ずつあります。
- 理科が月曜日~水曜日で合計1時間しかないため、<ルール>(2)より、木曜日と金曜日で合計2時間以上あります。また、<ルール>(4)より、理科は1日1時間しかないため、木曜日と金曜日にそれぞれ1時間ずつあります。
- 社会が月曜日~水曜日で合計2時間しかないため、<ルール>(2)より、木曜日と金曜日で合計1時間以上あります。国語は月曜日~水曜日で合計3時間あるので、木曜日と金曜日に国語がなくてもかまいません。
上記3点より、木曜日と金曜日のどちらも、算数が2時間ずつ、理科が1時間ずつあります。また、(問1)と同様に、算数は1時間目と3時間目、理科は4時間目にあります。
木曜と金曜の2時間目については、どちらも国語だと条件に合わないので、次の図のように「エ:木→社会、金→社会」「オ:木→社会、金→国語」「カ:木→国語、金→社会」の3通りが考えられます。つまり、木曜日と金曜日の時間割は3通り考えられます。
以上より、水曜日の時間割は6通り、そのそれぞれに対して木曜日と金曜日の時間割は3通りずつ考えられるので、時間割は全部で6×3=18(通り)作ることができます。
- 日能研がこの問題を選んだ理由
市川中学校のこの問題では、時間割表が題材になっています。時間割表は、子どもたちにとって馴染みのあるものです。しかし、この問題のように、時間割を組んだことのある子は、あまりいないのではないでしょうか。
この問題には<ルール>がいくつもあります。この<ルール>をすべて満たすものを探さなくてはなりません。時間割表には、<ルール>から「ここはこれしかない!」と1つに決まる所もあれば、いくつか可能性がある所もあります。<ルール>と照らし合わせながら、自分で試行錯誤をしていき、決まる所と決まらない所を見抜いていく。この問題には、そんなパズルとしての面白さもあります。また、いくつもの<ルール>を最後まで意識し続けながら、可能性を網羅して全部で何通り作れるかを考える、場合の数の問題としての難しさもあります。
ただ、実際の時間割を組むのは、この問題よりもっと大変だと思われます。学校ごとに、どの科目を週何時間取り組むか決められており、中高一貫校であれば中学1年生から高校3年生までで、先生の重複や使用する教室の重複が起こらないように、工夫して作成する必要もあるでしょう。また、条件に合う時間割が何通りか作成できたら、その中でより良いものを選ぶことも必要になるでしょう。実は、子どもたちが普段見ている時間割表の裏には、パズルのような、複雑なプロセスがあるのです。
この問題に取り組むことで、子どもたちは、実社会にも存在する課題を試行錯誤しながら解決する体験をしているといえます。まさに、算数で学んできたことが実生活でどう役立つのかの1例を示した問題といえるでしょう。このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。