シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

成蹊中学校

2025年02月掲載

成蹊中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.実験する機会が多い成蹊中学校

インタビュー3/3

いろいろな学校に話を聞くと、中学ではさまざまな実験をしているものの、高校になると大学受験に向けて実験が少なくなっていくようなのですが、御校ではいかがですか?

佐藤先生 生物の場合、実験観察が高2では必修なので授業の1/3ぐらいは入れていますし、高3でもなるべく入れるようにしています。具体的には、近くに井の頭公園があるので自然文化園に行ってみたり、サンプリングといっていろいろな池や湖の微生物を実際に採取して見てみたりしています。

また選択になりますが、高3の生物では必ずマウスの解剖を一人一匹、最後に行っています。今はマウスの解剖を行う学校も少ないと思いますが、体のつくりの最後のまとめとして行うのですが、生徒も一つの命をいただいたという感覚が芽生えるみたいで、麻酔をかけるところから自分で行います。

田中先生 地学の場合ですが、夏休み期間に「夏の学校」と呼んでいますが、中学1年生は長野県の車山高原、中学2年生は志賀高原に行き、2泊3日の宿泊行事を行います。車山高原と志賀高原の宿泊行事は学年全体として行っているものですが、車山高原では、周辺に湿原など見どころがあり、ヘルパーとして参加してくれる高校生から中学生が班ごとに説明を受けたのちに、クイズに答えていくといった形での学習を行ったりしています。

地学の場合、授業の中だと50分で行って帰ってくるのが時間的に難しいため、クラブ活動としていろいろなことを行っています。

理科棟 生物科

理科棟 生物科

理科系のクラブ活動も充実

理科関係のクラブ活動にはどういったものがありますか?

田中先生 中学では自然科学部、あとは理科ではなくてどちらかというと工学に近い科学技術部があります。またクラブ活動ではないですが、成蹊学園は小学校から大学までユネスコスクールに加盟しているため、ユネスコスクールの活動としていろいろな自然に関係することを行っています。

高校では、生物部の活動が素晴らしく、先日も賞をいただいていました。私が顧問をしている天文気象部でもいろいろと活動していて、昨年は学会に行って発表も行いました。理科的な関心を持ってもらうきっかけとして、天文好きな生徒がやってみたいことに応えられるようにしています。

佐藤先生 本校には自分のやりたいことがやれる環境が整っているので、やりきったうえで卒業できる体制が整っていると思います。先生方もいろいろと協力してくれますしね。

成蹊中学校は他校とは一線を画した体験が味わえる学校

生徒さんを育てていく中で、大学から社会人になっていく過程でどんな人になってほしいとか、またどんな力を身につけて社会に巣立ってほしいと考えていらっしゃいますか?

田中先生 少し答えと違うかもしれませんが、大学に入学した後に卒業生がやって来ると、同じ学校の大学生と話していると成蹊で経験したことが他の学校ではされていない、つまり成蹊では当たり前と思っていたことが実は当たり前でなかったことに気づいた、といった話を聞くことが結構あります。これは本校が受験一辺倒ではなく、いかに本物に触れるということを意識してやっていたところが現れたのかなと思うことはあります。

できれば成蹊にいる間に本物に触れる機会が多いというのが恵まれているということに気づいてほしいなとは思っていますが、恵まれた環境が当たり前になっているのでなかなか難しいかもしれませませんね。

佐藤先生 中学生・高校生は探究活動を行っているのですが、今は何でもかんでも探究に世の中がなってきていて、ブームに乗っかっているところは本校でもあります。しかし、我々は探究をずっとやっていますが、本当の意味での科学的な考え方、道筋を立ててやっていくということに対し、流行っているからとレールに乗っけられてやらされているのはダメです。本当の意味での探究心をゼロから芽生えさせるのは難しいと正直思っています。

だからこそ、専門家が絡みながら、生徒が実際に自分のやりたいことは何なのかを追求し、それに向けて教員がサポートしていく。それでないと理系の生徒は育ちません。今は技術的な部分や開発などが海外にどんどん出てしまっていて、日本の理科的な部分が昔に比べると落ち込んでいるのを感じていますが、そこを持ち上げていくためには、サポート部分がまだまだ足らないと思っています。

理科棟 地学科教室

理科棟 地学科教室

お子さんには勉強以外にもいろいろな経験・体験をさせてあげてほしい

最後になりますが、受験生のお子さんを持つ親御さんにとって、どのような体験を子どもにさせてあげれば理科好きの子なのか、アドバイスをいただけると嬉しいです。

田中先生 入試問題の中には、いろんな実体験をベースにしたものがあります。ですから、受験知識だけが全てではなく、いろいろな経験、実体験を身に付けさせてあげてほしいです。「これは何でだろう?」「どうしてかな?」といった疑問を持つこと、また保護者の方がいたら話し合ってみることが大事かなと思います。

まずは自分の考えを伝えて、それに対して保護者がどう言ったから、改めて自分はこう考える、といった話し合いの機会があるとよいですね。自分が経験したこと、体験したことはどういった仕組みでどうして起こっているのかを自分なりの疑問を持って調べる。まずは調べて、それでもわからないところを考え抜くことをしている生徒は非常に強いと感じます。

成蹊中学校 けやきグラウンド

成蹊中学校 けやきグラウンド

インタビュー3/3

成蹊中学校
成蹊中学校1906(明治39)年、学祖・中村春二により私塾「成蹊園」が本郷西片町に開塾。1924年に吉祥寺に移転し、翌年7年制の成蹊高等学校開校。戦後新制中学・高等学校となり、49(昭和24)年に大学を併設。同じ敷地内に小学校から大学までが並ぶ学園となる。
校名の由来、「桃李ものいはざれども下おのづから蹊(こみち)を成す」(『史記』)に基づいて「個性の尊重」「品性の陶冶」「勤労の実践」を教育理念としている。旧制・7年制高等学校の伝統と理念を継承する。家族的雰囲気のなか、個性重視、自由闊達な校風を保っているのも特色。
学園の正門から中・高門までのけやき並木が見事。広々とした校内に中学HR棟、高校HR棟、特別教室棟、理科館、造形館、2棟の体育館などが点在。けやきグラウンド(400mトラック・ラグビー場)、野球場、サッカー場、馬場などが大学と共用でき施設も十分。
成蹊には「主要教科」という言葉はない。芸術科目や実技教科も含め、長い目で見た発展可能性を重視したカリキュラムを組んでいる。学習状況は年5回の定期テスト、随時行われる小テスト、実験レポートなどの成績により評価される。高2から文系・理系への移行が始まり、英・数は3段階(高1英語は2段階)のグレード別授業。高3では進路別に19のコースに分かれ、多彩な選択授業で対応。高校の自由選択の演習では、仏・独・中国・朝鮮韓国語を設ける。成蹊大学へは約25%が推薦で進学するが、他大学進学希望者も増えており、東大、一橋大へ一定の合格者を出すほか、早慶上智大、東京理科大などにも多数の合格者を輩出。
静かに目を閉じ精神の集中をはかる「凝念」を行っており、テストや試合前など、自分から自然に行う生徒も多い。クラブ活動は盛んで、全国優勝を果たした男子硬式庭球部、女子硬式庭球部、東日本大会優勝のラグビー部、また文化部では都の吹奏楽コンクール金賞の吹奏楽部、自然科学部など35のクラブがある。