シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

成蹊中学校

2025年02月掲載

成蹊中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.理科の入試問題は物化生地バランスよく出題

インタビュー2/3

次に、この設問以外の入試問題全体の構成や考え方についてのお考えをお伺いしていきます。

田中先生 成蹊中学校では高校と同じように中学から物理、化学、生物、地学に分かれて授業をしています。中学1年生は生物と地学、中学2年生は物理と化学、3年生は化学と生物といった具合です。入試問題は、各科目の先生がそれぞれ大問を1題ずつ出題、4題構成にするスタイルをとり続けています。各科で全員が問題を考え、一番いいものを第1回、第2回で割り振る形で出題しています。

問題の掲載順はどうですか?

田中先生 特に順番は決まっているわけではないですが、最近は解きやすい順番というものを意識しています。最後まで到達できない受験生もいて、最後の方に易しい問題があると得点をあげることができなくなってしまうからです。もちろん解きやすい問題から解けばよいとは思うのですが、多くの受験生は頭から解いていくことが多く、そういった点は意識しています。

記述問題をどこに入れるかも考えていますか?

田中先生 それも全体構成や内容を見て判断します。記述は時間がかかりがちで、後ろの方に持ってくることが多いので、作問のレベルを見ながらこの順番だと解きやすいだろうと話しながら決めていっています。
生物に限らず物理や化学、地学でも記述問題を出しています。

地学科/田中 博春先生

地学科/田中 博春先生

成蹊中学の理科の授業では「本物に触れる」ことができる

入試問題ではどんな力を見ようとしていますか?

田中先生 成蹊の理科は、伝統的に「本物に触れる」ことを強く意識しています。実物主義とか本物主義と言っていますが、本物を見て触ってどう思うかを中学入学後の授業では重視していますので、そういった部分は入試問題にも現れてきます。私は地学を担当していますが、地学問題は特に写真を多めに出していて、実際がどうなのかを分かってもらうようにしています。本校では中学1年生は昼休みに気象観測実習を3人1組で行っているのですが、その内容を題材にしました。中学1年生が観測したデータや観測結果を記録している様子の写真を入試問題に入れたのですが、入学後にこんなことをしますよ、というのがわかるような問題を作っていますね。

ただし、問題に関しては小学校の授業で得た知識を使って考えられるものであること、生活で実感できるものを意識しています。器具で測ったデータが生活実感と結びつくような問題を心掛けています。

お話をお伺いしていると、入試問題の考え方が御校の授業や理科教育の考え方と直結しているのを非常に感じます。ちなみに、成蹊中学・高校の理科の授業の特色というとどのようなものになりますか?

田中先生 先ほども触れましたが、「本物に触れる」この一言につきます。単に図鑑や教科書に出てくる写真ではなく、実物に触れてみる機会が本校にはあります。ほかにも、本校には地球上の物質の中で一番古い岩石があるのですが、それを生徒たちに触らせて「皆さんは地球の最古のものに『今』触れているんだよ」と伝えています。授業を通じて実感を持ってもらうことはとても意識しています。

成蹊中学校 観測露場温度計

成蹊中学校 観測露場温度計

ICTに頼りすぎず、生徒には現実を体験させる授業を

佐藤先生 ICTは、今だとページをめくっていくだけで人体の構造が見えていくようなソフトもたくさんあり、それらをうまく使っていけばいいだけでは?といった風潮もあります。しかし生き物の匂いやその雰囲気に関してはICTの画面からは一切伝わってきません。実物は五感を使って実際にその状況下で対峙して見ていかないと、実態として腑に落ちません。現実世界と非現実世界が乖離していかないようにつなげる役割が、我々教員にとっては非常に大事だと思っています。

ICTは美しく作られているものの、自然は他との違いがあっての美しさなので、その違いをしっかりと見極めていかないと本物がわからないままの人間になってしまいかねません。全てを見やすい形で受け入れやすくしたものではなく、「なんでだろう?」って思えるような部分に主眼を置くと、「調べてみよう」とか「研究しよう」といった意欲につながっていくのではないかと思います。

田中先生 一方で本物を見せようとすると、授業時間の50分間に収めるための工夫が必要となることが多々あります。今は、一人ひとりICT端末があって、端末に入れたソフトウェアを使った授業を行ったりしています。わかりやすくすればするほどやりやすくはなりますが、実物と乖離していくこともあるので、そこはせめぎ合いですね。

あと本校の場合、研究職だった方など、さまざまなバックボーンを持つ方が教員がいます。本物を知っているからこそ教えられることが、たくさんあります。

成蹊中学校 風向風速計

成蹊中学校 風向風速計

インタビュー2/3

成蹊中学校
成蹊中学校1906(明治39)年、学祖・中村春二により私塾「成蹊園」が本郷西片町に開塾。1924年に吉祥寺に移転し、翌年7年制の成蹊高等学校開校。戦後新制中学・高等学校となり、49(昭和24)年に大学を併設。同じ敷地内に小学校から大学までが並ぶ学園となる。
校名の由来、「桃李ものいはざれども下おのづから蹊(こみち)を成す」(『史記』)に基づいて「個性の尊重」「品性の陶冶」「勤労の実践」を教育理念としている。旧制・7年制高等学校の伝統と理念を継承する。家族的雰囲気のなか、個性重視、自由闊達な校風を保っているのも特色。
学園の正門から中・高門までのけやき並木が見事。広々とした校内に中学HR棟、高校HR棟、特別教室棟、理科館、造形館、2棟の体育館などが点在。けやきグラウンド(400mトラック・ラグビー場)、野球場、サッカー場、馬場などが大学と共用でき施設も十分。
成蹊には「主要教科」という言葉はない。芸術科目や実技教科も含め、長い目で見た発展可能性を重視したカリキュラムを組んでいる。学習状況は年5回の定期テスト、随時行われる小テスト、実験レポートなどの成績により評価される。高2から文系・理系への移行が始まり、英・数は3段階(高1英語は2段階)のグレード別授業。高3では進路別に19のコースに分かれ、多彩な選択授業で対応。高校の自由選択の演習では、仏・独・中国・朝鮮韓国語を設ける。成蹊大学へは約25%が推薦で進学するが、他大学進学希望者も増えており、東大、一橋大へ一定の合格者を出すほか、早慶上智大、東京理科大などにも多数の合格者を輩出。
静かに目を閉じ精神の集中をはかる「凝念」を行っており、テストや試合前など、自分から自然に行う生徒も多い。クラブ活動は盛んで、全国優勝を果たした男子硬式庭球部、女子硬式庭球部、東日本大会優勝のラグビー部、また文化部では都の吹奏楽コンクール金賞の吹奏楽部、自然科学部など35のクラブがある。