今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!
成蹊中学校
2025年02月掲載
2024年 成蹊中学校入試問題より
- 問題文のテキストを表示する
トキに関する次の文章を読んで、後の各問いに答えなさい。
佐渡では自然に放たれたトキと人が共生するために、「a トキとの共生ルール」をつくり、地域が一体となってトキを守る工夫をしています。このルールを守ることで身近なところでも野生のトキを見かけるようになってきました。しかし、トキと人との距離(きょり)が近くなりすぎ、交通事故にあうトキも出てきてしまいました。b トキと人との上手なつき合い方があってこそ、トキのいる環境(かんきょう)が保たれるのです。
(問1)下線部aの「トキとの共生ルール」で、トキを保護していくため地域住民にお願いしているルールがあります。そのルールに含(ふく)まれない文を、次の(ア)〜(エ)の中から1つ選び、記号で答えなさい。
- (ア)優しく静かに見守る。
- (イ)積極的に餌付(えづ)けを行って、個体数を増やす。
- (ウ)繁殖(はんしょく)期には巣に近づかないようにする。
- (エ)大きな音や強い光を出さないようにする。
(問2)図は、自動車がトキに接近し、トキが逃げて飛び立つ際の自動車とトキの距離(逃避(とうひ)距離)の年変化です。下線部bの「トキと人との上手なつき合い方」を築く上でトキと人との距離をどのように保つことが大切か、説明しなさい。
中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この成蹊中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)
解答と解説
日能研による解答と解説
解答
(問1)(イ)
(問2)野生のトキが人に慣れないように近づき過ぎず、遠くから見守るきょりを保つこと。
解説
(問1)トキは野生生物なので、人が餌付けを行うのではなく、自分でエサをとれるようにエサが豊富な自然を再生していくことが重要です。また、繁殖期に巣に近づくと、トキが巣づくりや子育てをやめてしまうことがあります。トキを驚かせないように、大きな音や強い光を出さず、やさしく静かに見守ることも大切です。
(問2)図から、自動車がトキに接近し、トキが逃げて飛び立つ際の自動車とトキの距離(逃避距離)が年々短くなってきていることが読み取れます。このことと、問題文中にあるように交通事故にあうトキも出てきてしまっていることから、今後、トキが自動車に慣れてしまい、トキと自動車が接触する事故が増えていくことが予測されます。よって、人がトキに近づき過ぎないようにして、距離を保ち、トキが安心して生活できる環境を持続的につくっていくことで、「トキと人との上手なつき合い方」を築いていくことが大切だと考えられます。
- 日能研がこの問題を選んだ理由
野生の生物の中には、人の開発による生息地の減少や、乱獲、環境汚染、また、気候変動や外来生物の影響など、さまざまな原因で数を減らしたり、絶滅のおそれがあったりするものがいます。
この問題では、トキを題材にして、トキを野生に返した後の、人とトキとの上手なつき合い方(共生していくこと)を考えます。問題文では、トキを野生に返すということ、トキの個体数を増やし、自然に放つだけでなく、トキが生活できる環境を整えることが必要だと書かれています。その具体的な方法として、「トキとの共生ルール」に目を向けて、トキが自然に生活できる環境を整えるとは具体的にどのようなことなのかを考えます。さらに、「トキと人との上手なつき合い方」に目を向けて、人が近くにいるときのトキの行動について調査したグラフから読み取った情報をもとに、わたしたち人がとるべき手段を考えていきます。
人の手を加えないと絶滅してしまう一方で、人と動物が近過ぎても別の害が生まれてしまう。そのような複雑な関係をとらえ、解決策を考えることで、物事を多様な視点でとらえていきます。
以上のような物事のとらえ方を通して、今まで自分が学んできたことをもとに、物事を多様な視点でとらえてみよう、というメッセージが感じられる問題です。また、この問題に取り組むことで、人の行動が周囲の環境や他の生物にどのような影響を与えるのかということを論理的に考えるきっかけとなるでしょう。
このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。