今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!
駒場東邦中学校
2025年02月掲載
2024年 駒場東邦中学校入試問題より
- 問題文のテキストを表示する
本文を読んだAさんとBさんが次のような話し合いをしました。これを読み、後の問いに答えなさい。
Aさん「この文章、とても他人事とは思えなかったな。いろんな意味で」
Bさん「うん、自分のこととして考えてしまった」
Aさん「私が気になったのは、14ページの黒野先輩のこのセリフ」
「人は、枠組(わくぐ)みから外れたやつがいるのがこわいんだよ。だから、自分がわからないものに出会うと、おかしいって言って攻撃(こうげき)したり、わかりやすいでたらめに押しこんで、わかった気になったり、する」
(村上雅郁(まさふみ)『きみの話を聞かせてくれよ』「タルトタタンの作り方」〈フレーベル館〉より)
Aさん「クラスにマニアックな(一つの事に異常なまでに熱中する様子)趣味を持っている人っているじゃない?」
Bさん「いる、いる」
Aさん「自分たちにはその人の趣味が理解しきれないから、へんなやつだと決めつける」
Bさん「で、結局、自分たちが正しい側にいると思うんだよね」
Aさん「そう」
Bさん「そういえば、私も何かと『受験生らしくしなさい』って言われて腹が立ったな。自分は自分のやり方で勉強しているのに」
Aさん「『受験生らしさ』って型にはまらなくても、自分なりに努力していればそれでいいのにね」
Aさん「この文章には性別をめぐる問題が出てくるけれど、それだけじゃないよね。社会や身の回りを見渡(みわた)すと、黒野が言うことと同じことがあちこちで起こっている」
Bさん「本当にそうだ」
Aさん「たとえば【 ★ 】というのも同じパターンだよね」
Bさん「さすが、鋭(するど)い」
Aさん「受験が終わったら色々な体験にチャレンジしようね」
Bさん「うん、一緒(いっしょ)にね」
(問)AさんとBさんの話し合いが成立するように、あなたが考える文中にある の具体例を、前後の文脈をふまえて、【 ★ 】に入る形で答えなさい。
中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この駒場東邦中学校の国語の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)
解答と解説
日能研による解答と解説
解答例
- 家にばかりいないで、子どもらしく外で元気に遊びなさい
- 放課後、みんなと一緒に遊ばないのは、付き合いが悪い人物だと決めつける
- 坊主頭ではない高校球児に、高校球児らしくないと批判する
- 国語の先生なのに、字が汚いのはおかしい
解説
文章に関して、AさんとBさんが話し合いをしており、そこで展開される内容を押さえて書く記述問題です。文章中の「人は、枠組みから外れたやつがいるのがこわいんだよ。だから、自分がわからないものに出会うと、おかしいって言って攻撃したり、わかりやすいでたらめに押しこんで、わかった気になったり、する」に着目し、このことに当てはまる具体例をAさんが発言しているので、その発言を考えて書きます。一般的な「枠組みから外れ(て)」いる内容であること、「おかしいって言って攻撃したり」「わかりやすいでたらめに押しこんで、わかった気になったり」する内容であること、また、解答欄の1行に収まる長さであることなど、複数の条件を押さえて考える必要があります。さらに、示されている会話文では、「性別をめぐる問題が出てくるけれど、それだけじゃないよね」ともあるので、性別に関すること以外で、具体例を考えることも必要です。
- 日能研がこの問題を選んだ理由
素材文選びにおいて、子どもたちがこれから中学校に進学し、成長していくうえで大切なテーマを扱っているものであるとともに、現代社会の抱える問題にも及んでいる点が、アドミッションポリシー、教育理念である「自主独立」と強くつながっていると感じました。今年度の入試で使用された、村上雅郁作(「タルトタタンの作り方」『きみの話を聞かせてくれよ』所収)においても、そうした素材文選びの視点が反映されているものと思います。
今回着目した問いは、「らしさ」にとらわれるとかえって不自由になってしまうという、文章の主題を読み取ったうえで、それに合致した具体例を自分で考え、端的に説明するという問題でした。この問題では、多くの人が成長していくうえで出あうであろう普遍的な問題をとらえて終わるのではなく、それを自分事として再構築する視点が求められています。こうした点において、この問いには「自主独立の気概」を大切にする駒場東邦中学校の、受験生へのメッセージが込められていると考えます。
また、AさんとBさんの会話で問いが深められていくという会話形式の問題は、高等教育への接続を意識しているだけでなく、その会話からは受験生や在校生のリアルに寄り添う駒場東邦中学校の先生方の想いが強く感じられました。こうした点は、対話を通して自分を育てていく駒場東邦中学校の教育理念が反映されたものだと受け取りました。
このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。