シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

浅野中学校

2025年01月掲載

浅野中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.聞かれたことにきちんと答えられる受験生を求めている

インタビュー2/3

では、次に御校の社会科入試の問題全体の構成や全体に関するお考えについてお聞かせください。

佐藤先生 社会科の入試において、もちろん語句の知識が大事であることは前提ですが、いろいろなつながりや多角的なものの見方ができているかも重要であると感じています。語句を覚えれば解ける問題もありますが、その語句を理解したうえで、活用できるかどうかを入試問題で問うことができればよいと考えています。

徳山先生 論述問題は、「聞かれていることにきちんと答えられますか?」これに尽きます。聞かれたことをその場で読み解いてもらいたい、何を求めているかをそこに提示してある情報から読み取ってもらいたい、それに過不足なく答えてもらいたい、というのが本校の社会科が求めていることです。

基本的に、毎年論述は出題されています。論述問題は1問であることが多く、100字前後のものを書かせていて、短い年でも80~90文字、長い時で120文字ぐらいを書かせることが多いです。文字による受験生とのコミュニケーションであって、こちらが期待するものにピタッと合わせられる生徒かどうかを問うている感じです。

佐藤先生 限られた字数の中で問題の要求に対応できている受験生はいます。ここ何年も同じような形式で作問していますので、しっかりトレーニングしてきているのだろう、ということは実際肌で感じます。たまに採点の際に歓声が上がるような答案もあります。

入試広報部長/徳山 直先生

入試広報部長/徳山 直先生

論述問題は問題の意図をしっかりと汲み取ること

論述問題というと、資料の用語をいくつか並べて「何かしら書いておけば点数がもらえるんじゃないか?」といった考えを持った受験生がいる一方、きちんと論理的に文章を組み立てながら書いてくる受験生もいると思いますが。それって合否の差になっているような印象はお持ちですか?

佐藤先生 当然点数の差にはなっていると思います。中には全体的に何を言っているか分からない答案も結構ありますし、一方で非常にわかりやすい答案もあります。

徳山先生 説明するのにいい熟語を知っていることが、論述に説得力を持たせるためにかなり影響を及ぼしているのは感じます。ですから、説明会の場では「文字数の制限がある中、表現の幅を持たせるためには言葉の語彙が多いと有利になりますよ」 といった話は都度行っています。

近年、他校でもいろいろと問題を工夫されているのを感じます。そして、読解問題はしっかり出題意図を汲み取れないと点が取れないような問題も増えてきていています。「ただ書けばいい」というわけではなく、多様な考えを読み取ってそして自分の考えを書くとことが求められていますね。

徳山先生 論述の訓練を積んで中学受験を経験してきた子たちは、今の大学入試の制度改革による変化に割と対応しやすいという気はしています。本校でも特別に大きく指導方法を変えたりせず、「問われ方が少し変わったから警戒しておこうね」くらいのアドバイスで済んでいる印象です。

浅野中学校 図書館(清話書林)

浅野中学校 図書館(清話書林)

他ではあまり見られない総合問題形式

社会科全体の問題構成としては、大問二題のうちの1つは21問の小問形式となっていて、1つのリード文が用意されて、その中で地理や歴史、公民といろいろ聞いていく形態なのですね。地理から歴史、歴史から政治、といった形でテーマに従って問いになる語句の配置などはすごく意識されていると思います。配置に関しては特に悩まれたりしませんでしたか?

徳山先生 総合問題形式で出題するようになったのは4年ぐらいでしょうか。それ以前は大問が3つあって、論述問題があるといったオーソドックスな形式でした。ストーリー性のある出題形式にしたのはここ最近のことです。作問する教員側は大変だとは思いますが、受験生にとってはこのようなストーリーのある出題形式のほうが取り組みやすく解きやすいとは感じています。

4教科の中では、社会科は比較的点差がつかないほうで、80点満点中で合格者平均と受験者平均の差は5点前後というのが多いです。これが算数だと配点は120点ですが15点ぐらいの差がつきます。一方で国語の場合、8~9点ぐらい差がつくことが多く、科目によって差がつきやすいもの、そうでないものはあります。ただ言えるのは、合格した子のほうが確実に各科目で点数を重ねています。

本校の入試は6割強点数を取れれば合格となるので、そう考えると合格している子も4割近くは分かっていないわけです。ですから、入学後はゼロからのスタートで、新しい気持ちに切り替えて歴史・地理・公民を学んでいってほしいです。

浅野中学校 体育館(打越アリーナ)

浅野中学校 体育館(打越アリーナ)

インタビュー2/3

浅野中学校
浅野中学校1920(大正9)年、事業家・浅野總一郎によって創立。当初はアメリカのゲイリー・システムという勤労主義を導入し、学内に設けられた工場による科学技術教育と実用的な語学教育を特色とした。戦後間もなく中高一貫体制を確立し、1997(平成9)年に高校からの募集を停止。難関大学合格者が多い進学校として知られているだけでなく、「人間教育のしっかりした男子校」としても高い評価を受けている。「九転十起・愛と和」を校訓とし、自主独立の精神、義務と責任の自覚、高い品位と豊かな情操を具えた、心身ともに健康で、創造的な能力をもつ逞しい人間の育成に努めることを教育方針とする。校章は、浅野の頭文字で「一番・優秀」の象徴である「A」と「勝利の冠」である「月桂樹」から形作られており「若者の前途を祝福する」意味が込められている。
横浜港を見下ろす高台にある約6万平方メートルの広大な敷地の約半分を「銅像山」と呼ばれる自然林が占めている。Wi-Fi環境が整い、中学入学後に購入する個人端末で授業や行事、部活動を展開している。2014(平成26)年には新図書館(清話書林)、新体育館(打越アリーナ)が完成、2016(平成28)年にはグラウンドを全面人工芝とし、施設面が充実している。
中高6年間一貫カリキュラムを通して、大学受験に対応する学力を養成することが目標。授業を基本とした指導が徹底している。中学の英語では週6時間の授業に加えて、毎週ネイティブスピーカーによるオーラルコミュニケーションの授業もある。数学では独自の教材やプリントが使われていて、中身の濃い授業が展開されている。高校2年から文系・理系のクラスに、高校3年では志望校別のクラスに分けてそれぞれの目標に向けた授業を行う。進路選択は本人の希望によるが、理系を選択する生徒の方が多くなる傾向がある。全体的にハイレベルな授業が展開されているが、高度な授業展開の一方で、面倒見のよいことも大きな特徴。授業をしっかり理解させるために、宿題・小テスト・補習・追試・夏期講習などを行い、授業担当者が細かく目を配っている。一歩ずつゆっくりと、しかし、確実に成長させるオーソドックスな指導方針が浅野イズム。
「大切なものをみつけよう」ーこれは学校から受験生へのメッセージ。生徒にとって学校は、一日の内の多くの時間を過ごす場所。勉学に励むことはもちろん、部活動や学校行事にも積極的に参加して、その中で楽しいこと、嬉しいこと、悔しいことや失敗をすることも含めて多くのことを経験してもらいたいと考えている。学校でのそのような経験が、学ぶことの意味、みんなで協力することの大切さと素晴らしさ、生涯、続いていくような友人関係、そして、決して諦めない強い心を育んでいくことになる。浅野中学校、高等学校という場を思う存分活用して、人生において大切なものをたくさん見つけ、成長してほしいとの願いが込められている。
部活動と学習を両立させる伝統があり、運動部の引退は高校3年5~6月の総合体育大会、野球部は甲子園予選までやり通す。中学では98%の生徒が部活動に参加している。ボクシング、化学、生物、囲碁、将棋、ディベート、演劇が全国レベル。柔道、ハンドボールやサッカーも活躍している。また、5月の体育祭と9月の文化祭を「打越祭」として生徒実行委員が主体となって運営する。これをはじめ、学校行事も盛んで生徒一人ひとりが充実した学園生活を送っている。
「銅像山」は、傾斜がかなりきつく、クロスカントリーコースとして運動部の走り込みに使われるだけでなく、中学生たちの絶好の遊び場所となっている。また、各学年のフロアに職員室を配置してオープンにすることで、生徒と学年担当の先生が日常的に対話を行っている。こうしたメンタルケアにも力を入れている。