シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

東京女学館中学校

2024年12月掲載

東京女学館中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.入試が終わった後に「もっと知りたい」「調べてみよう」と思えるような問題を作っていきたい

インタビュー2/3

入試問題全体の構成に関してですが、どのように考えて作られたのかをぜひお聞かせください。

阿部先生 問題構成は大問3題のこともあれば4題のこともあります。3題の場合は今回の問題のように深く聞いていく形となりますが、4題だとどうしても時間的にそこまで深く聞けないので1つ1つがコンパクトになってしまったり、2つ聞かないで1つだけ聞くといったりした設問になってしまいます。私たちも4題構成だと物理・化学・生物・地学の4分野全てが出題できるので、バランス的にもよいと考えているのですが、深く聞くのが難しい場合に3題にするのがよいか4題にするのがよいか、そこは非常に悩ましいところですね。

飯田先生 4題にするとどうしても深く聞けない、受験生に考える時間をあげられない、といった問題が出てきます。3題構成にする以前には小問集合を1題出していた時期もありました。それだと暗記してきたことを書くだけになってしまい、受験生へのメッセージが伝えにくかったことから、今は3題構成で思考力を問いたいという思いが強いです。

設問の順番にはかなり気を配っている印象を受けました。

飯田先生 地学に関しては、最初に持ってきて、基本的な事項を多く聞きたいと考えています。最後に考えさせる問題を入れたい、計算させる問題を入れたい、となるとどうしても最後の問題が物理や化学になってしまいがちです。生物は、図やグラフを読みとって考える問題を多く出題することもあって、大問の2題目にくることが多いです。そういった思いを反映した構成となっています。

阿部先生 楽しい問題とかいろいろなことに興味を持てる問題を出題した場合に、「あとでもっと自分で調べてみよう」とか、「もっと考えてみよう」といった具合に知識を広げようとする力が出てくると、入試だけでなく何にでも自発的に取り組んでくれると思います。そういったものをどう作れるかが、今の本校における課題のひとつとなっています。

入試問題を通じて、受験生は「東京女学館の理科の授業は楽しいのでは?」といった気持ちにきっとなるでしょうね。

阿部先生 なってくれるとうれしいですね。理科の授業では、実験の機会をできるだけたくさん持ち、「楽しい」と感じてほしいと思いながら行っています。それが本校理科の醍醐味であり、私たちが大事にしている部分です。小学校の時に塾などでたくさんの先生たちからいろいろな知識を得たと思いますが、それを実際に自分で確かめたことはないかもしれませんし、実験をしたこともないかもしれません。おそらく絵や写真で見ただけの子も多いと思います。実験を通して「本当にそうだったんだ」と知ることができるかどうか、そこが本校における中学の授業でとても大事な部分だと思っていますし、高校生になってからさらに発展的な内容に取り組むモチベーションにつなげていけるようにしたいです。

理科/飯田 祐先生

理科/飯田 祐先生

授業を通じて「探究心」をより深めていく

御校の理科の授業の特色や特徴とはどんなところにあると思いますか?また、生徒にどんな力をつけてもらいたいと思いますか?

飯田先生 理科として生徒によく言っているのは「探究心」です。自然科学の現象への興味や関心は、科学を学ぶ原動力になってくれることでしょう。

本校の場合、実験に必要なものや手順について、最初のうちは学校側で用意しますが、だんだんと、問いを立てて仮説を立てることなども生徒だけでできるようになっていきます。実験のプリントに関しては、まとめや考察をしっかり記述させるようにしていますし、実験した内容を定期テストにも出題して、もう一回考えさせることも行っています。テーマを与えて実験自体を自分で考えさせることは、高校生にもなれば自然とできるようになってくるので、生徒が主体的に仮説を立てて実験計画を作ることを通じて、探究心はより深まっていくと考えます。

本校の場合、理科の授業でなくても高校1年生、2年生で探究活動の時間があり、1年かけて探究していきたいテーマを決定していきます。最近だと医学部の進学を考えている生徒も多く、医療技術の問題などを選ぶ生徒もいて、自分の進路を考えるきっかけ作りにもなっています。

学習講座・体験講座を通じて学ぶ機会を提供

飯田先生 探究心においては、科学的な思考力といった部分も大事です。科学的なリテラシーや情報リテラシーはこれからの社会において今まで以上に重要となるので、理科教育の役割のひとつとして、実験によって導き出されたデータなど客観性を重視して判断する力や、クリティカルシンキング(論理的思考力)といったものを、理科の授業を通して身に付けさせていきたいですね。

とはいえ、通常の授業でこれらを学ばせるのは時間的にもなかなか難しいので、放課後や長期休暇の期間中に、情報科とタイアップした実験データ分析の講座、Pythonのプログラミングが学べる講座、英語科と共催のサイエンス・イン・イングリッシュの講座など、様々な学習講座・体験講座を開設しています。このような講座はたくさんあって、生徒は無料でいくつでも受けられるので、気軽にかつ手軽にいろんなことにチャレンジしてもらえるところが科学への興味を深めるのに良いきっかけとなっていると感じます。

阿部先生 生徒は面白くないと参加してこないので、どうしたら面白くなるかということを考えていくのには、今の若い先生たちのほうがいろいろな発想を持っています。とにかく生徒に「面白い」と思ってもらえるようにしていくのは大変ですね。

講座ですが、先生方が教えられているのですか?

阿部先生 基本的には教員が行うのですが、大学の先生に講師として来てもらうこともあります。大学から来ていただく時には、大学院生を一緒に連れてきてくれたり、お手伝いの学生も来てくれたりと手厚くいろいろ面倒見ていただけるので、とてもありがたいです。

少しコロナ禍で間が空いてしまいましたが、少し前までは理科散歩や歴史散歩も実施していました。石灰工業の町として知られる秩父を訪ねたり、国立科学博物館の見学や、秋葉原電気街の散策も楽しい思い出です。親子で参加できるイベントもあって、家に帰っても話がはずむなど好評でした。

コロナ終息後の現在、以前のように活発にはできていませんが、最近はいろいろな企業や団体の方が「どうぞ」と言ってくださるので、会社見学をさせていただいたり、来校いただいてお話しいただいたりすることで、生徒はいろいろな刺激を受けています。

東京女学館中学校 校舎内

東京女学館中学校 校舎内

「教員がやりたい」「生徒にやらせてみたい」と思えることができている学校

先生方もいろいろなアンテナを張り巡らし、人と繋がっていかないと、生徒の興味や関心を引き続ける講座を準備することはできないですよね?

阿部先生 前提として、教員側が「やりたい」と思っていないとなかなか続きません。私も本校に赴任してくる際、「実験を大切にする学校」と言われて入ってきましたので、実験に高い関心を持つ教員が集まっていると思います。本校の教員は教えることが好きですし、生徒と一緒になってやってみることも好きです。そんな中で生徒との距離が近づいたり、保護者の方にも見てもらえる機会があったりと、「もっと自分でやってみたい」といったことが増えていると感じます。

これまでに楽しいことはかなり作ってきたつもりですが、その楽しさの先にある、しっかりした勉強の部分と結びついてはじめて「楽しい」ということが自分の勉強をさらに深め、自分の進学先を開拓していけるかを決定づけていけると思っていますので、そういったモチベーションを大学受験にもつなげてほしいです。

授業や講座を楽しんでいた生徒の中には、本当にやりたいことを実現している生徒も現れ始めています。「やってきてよかった」とこちらも嬉しくなることがあります。「自分の夢を追い続けることがこの学校ではできているんだ」と、昔以上に自分の好きなことをやっている生徒がいることを実感する機会が増えています。

東京女学館中学校 掲示物

東京女学館中学校 掲示物

インタビュー2/3

東京女学館中学校・高等学校
東京女学館中学校・高等学校伊藤博文が創立委員長として発足した「女子教育奨励会」が母体となり、1888(明治21)年に設立。建学の精神は「諸外国の人々と対等に交際できる国際性を備えた、知性豊かな気品ある女性の育成」です。インクルーシブ・リーダーシップ(共生し協働する力)を養うために、生徒会、クラブ、さまざまな行事を生徒による実行委員会方式で実施。
「国際学級」は英語・異文化理解に特化したカリキュラムで、実践的な英語運用能力を養成。一般学級でも英語習得を中心とした国際教育を重視。英語の授業は習熟度別で実施。アメリカ文化研修は、働く女性の職場から家庭まで密着するというユニークな文化交流。さらに、日本の文化にも力を入れ、茶道・華道体験、歌舞伎や能楽の鑑賞、京都・奈良への修学旅行(高2)などを実施。中3の修学旅行は広島で、平和や環境問題を学ぶ。
白のセーラー服に青いリボンの制服は1930(昭和5)年に制定され、「品性を高め、真剣に学ぶ」精神を象徴。中1では60歳以上の卒業生へのインタビューも交えたスクールアイデンティティ学習を実施。体育大会では、17世紀のフランス宮廷ダンス「カドリール」を高3が制服で踊るのが伝統。クラブではオーケストラ、ダンスが人気。茶道部は表千家・裏千家がある。食堂の手作りパン、ソフトクリームは大人気。