今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!
東京女学館中学校
2024年12月掲載
2024年 東京女学館中学校入試問題より
- 問題文のテキストを表示する
雨上がりに太陽を背にして空を見上げたとき、虹が見えることがあります。これは空気中の細かい水滴(すいてき)(球形)に太陽の光が入射し、プリズムのように光が分散して、私達の目に届くことが原因で起こります。
図は、太陽光が2つの水滴に入射してそれぞれ分散がおき、水滴から出てきた後の赤や紫の光の進路を示しています。Aさんはaの水滴から来る赤い光と、bの水滴から来る紫の光を見ており、虹に向かってAさんの前に立つBさんは、Aさんが見ることのできないbの水滴から来る赤い光を見ています。このように1つの水滴からは1つの色しか見ることができず、AさんとBさんは違う虹を見ていることになるのです。
(問)チャンスがあれば「虹のアーチをくぐりたい」と思っている人はいるでしょう。これは実現できるでしょうか。「できる・できない」のどちらかを選び、「できる」を選んだ場合はどのようにすればできるのか、また、「できない」を選んだ場合はなぜできないのかを答えなさい。
中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この東京女学館中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)
解答と解説
日能研による解答と解説
解答例
できない・虹は自分よりも前方にある水滴によってできているから。
解説
虹は、空気中の細かい水滴に太陽の光が当たることで見られる現象です。
水滴に太陽の光が入射するとき、光はまず水滴の中に入る際に屈折し、次に水滴の中で反射し、さらに水滴から出るときに屈折します。光の色によって、屈折や反射が起こるときの角度が異なるため、水滴から出てきた光が進む向きが光の色ごとに異なり、虹が見えるのです。
問題の図をもとに、aとbの水滴に太陽の光が当たったときの、紫の光と赤の光の進み方に目を向けてみましょう。水滴の位置がちがっていても、「光が水滴に入ってくる方向と、光が出ていく方向の間の角度」は色ごとに決まっていて、紫の光では「(1)の角度=(3)の角度」、赤の光では「(2)の角度=(4)の角度」となっています。このような光の分散は、空気中にある無数の水滴でも起こっています。
例えば、赤の光に着目してみると、図の状況ではAさんにはaの水滴で分散した赤の光が届いていますが、Aさんが虹へ近づこうとしてBさんの位置まで進んだとすると、Aさんの目にはbの水滴で分散した赤の光が届くことになります。つまり、Aさんが前方へ移動していくと、Aさんの目にとどく赤の光が分散する水滴も前方の水滴になっていくのです。
このように、「虹のアーチをくぐりたい」と思って虹へ近づいていったとしても、太陽の光を分散する水滴も別の水滴に変わっていくため、実際に虹のアーチをくぐることは難しいと考えられます。しかし、自分が虹のアーチの方へ進んでいくようすを自分の後ろにいる人が見たら、虹のアーチをくぐっているように見えるかもしれませんね。
- 日能研がこの問題を選んだ理由
「ふと空を見上げてみたら、虹が見えた…!」
虹は頻繁に見られる現象ではないからこそ、見られたときの特別感はひとしおですね。この問題では「チャンスがあれば『虹のアーチをくぐりたい』と思っている人はいるでしょう」という投げかけから始まります。子どもたちは、光の屈折や分散の仕方を問題から読み取り、これまでに身につけた知識と結びつけて、水滴に太陽の光が当たったときの光の進み方をとらえ、虹のできる仕組みにあてはめていきます。そして、虹のできる仕組みをもとに「虹のアーチをくぐりたい」という願いを実現できるかどうかをさぐっていきます。
この問題に取り組むことによって、問題で示された情報や学んできたことがらをもとにしながら、身の回りの現象がどのような仕組みで起こっているのかを、筋道立てて考えることにつながるでしょう。また、この問題に取り組む際の視点がきっかけとなって、「できたらいいな」「あったらいいな」と思っていることや、疑問に思っていることについても、実現可能かどうかを論理的に考えることにつながっていくでしょう。
このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。