シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

東京都市大学付属中学校

2024年12月掲載

東京都市大学付属中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.勉強の仕方も当たり前を疑い、工夫をしてみよう

インタビュー1/3

漢字は構造に注目してほしい

この設問の出題意図からお願いします。

田中先生 常用漢字表2136字のうち、小学校で習う教育漢字は1026字。残り1110字は中高で勉強します。ただ、小学校と違って先生が一つひとつ教えるわけではありません。教科書の文章に出てきたものを都度覚えたり、漢検のテキストを使ったりして学習しますので、自分で積極的に身につける力が大切になります。

その際、全く違ったものを1000個覚えるよりは、少ない情報を組み合わせて覚えるほうが楽だと思うのです。部首は約200個。それと共通の音符がわかっていれば、頭のメモリーはだいぶ節約できるでしょう。

また漢文の授業や大学入試では常用漢字表にはない漢字も出てきますので、習っていない漢字の読みや意味を答える際にも役立つはずです(かつてはオープンスクールの体験授業で部首の組み合わせゲームをやっていました)。ですから「漢字の部首の問題は、高い頻度で出します」と、入試説明会でもアナウンスしています。

この問題は、他の問題と比べて「合格者」と「全受験者」の「得点率」の差が、Aを除いて10%前後あります。こうした結果についてご意見を伺えますか。

田中先生 もちろん部首の由来という知識があれば有利なのですが、それだけではないかもしれません。やはり情報を組み合わせる力や、漢字の成り立ちへの興味関心が成否を分けたのでしょう。そういった意味では目的は達成したと思われます。ちなみにAは財/貧/資/貨。下につくものが4つのうち3つなので難しかったかもしれません。

国語科/田中 渉先生

国語科/田中 渉先生

暗記よりも情報処理能力で漢字学習

子どもたちの学習の仕方に傾向はありますか。

田中先生 漢字の8割は意味のある部首と音との組み合わせであると言われています。例えば、「さんずい」がついていれば「水に関係する」ということがヒントになります。もちろん例外もありますが、部首の意味をある程度知っていれば、イメージをつかめて覚えやすいと思います。ところが、間違えている解答を見てみると、形で覚えている生徒がほとんどです。だいたいこんな形という覚え方をしているので、なぜ、こういう意味の熟語にきへんをつけるのかな、とか、原則をわかっていれば間違えるはずないのになと、ずっと思っていました。

先生はどのように漢字を覚えましたか。

田中先生 何事もできるだけ覚えやすくできないかなという発想をします。漢字は1000個ですが、部首は約200個なので、1000個の漢字を覚えるよりも、少ないものと少ないものを掛け合わせて、情報量を大きくするほうが楽なんじゃないかな、と思うのです。子どもたちが分類する枠みたいなものを持つことによって、漢字学習の効率も精度も上がるのではないかと考えています。

メッセージとしては、漢字は小学校から勉強しているので、受験生の皆さんも、日々の勉強の中で「共通している情報はあるかな」とアンテナを張って、探してほしいですね。

東京都市大学付属中学校 校舎

東京都市大学付属中学校 校舎

漢字を習得するために部首に着目する

難しい問題ですよね。

田中先生 国語科全員で検討して出題するのですが、「なかなか難しいね」という声もありました。下の10個の部首の意味がわかったほうが、早く解けますよね。それをわかった上で解いても、あれ!?これなんだろう、という風になるということは、ただ単に情報というか、知識があればいいのではなく、組み合わせや位置など、複数の情報を得た上で、素早く組み替えていく処理能力を活用したほうがいいと思います。我々の年齢になると情報処理能力が落ちるので、受験生のほうが得意かもしれないのですが……。

今の子どもたちは知識を身につける力について、どう感じられていますか。

田中先生 どこにも勉強がうまくいかず、なるべく科目を絞って受験しようと考えている生徒がいるのですが、社会の用語などはよく覚えます。暗記力が弱いわけではなく、そこにもう一工夫があってもいいのではないかと思います。説明会でも「部首で覚えてきてほしい」「こういう部首の問題を必ず出しますよ」ということも、毎年お伝えしています。ただ、(漢字の学習は後回しになってしまうのか)できないところがある受験生がいるので、2024年入試も差がつく問題になりました。

漢字の読み書きは必ず出題

漢字が独立した問題になったのは2023年からですよね。

田中先生 元々は本文中の語句から読み書きに適したものを問題として出していました。ただ、必ず5問作ろうとすると難があるので、読み書きを独立させようということになりました。

漢字の読み書きでは「つとめる」「かいほう」など、複数の選択肢が浮かぶようなものを出しています。入試では漢字の読み書きはよくできますが、それがまた問題で、入った生徒たちは漢字が嫌いなんですよね。「漢字を見るだけでも苦痛」という生徒もいます。中学1、2年で部首などを教えて、組み合わせるやり方で学習させようと思っても、なかなか身につきません。そもそも小学校で漢字の成り立ちなどを教わっていないという生徒が結構いるので、そういうことから無理やり形で覚えようとしてるのかな、と思っています。

東京都市大学付属中学校 図書室

東京都市大学付属中学校 図書室

インタビュー1/3

東京都市大学付属中学校
東京都市大学付属中学校平成19年に新校舎が完成し、平成21年に武蔵工業大学付属中学校・高等学校から東京都市大学付属中学校・高等学校へ改称された。本校で掲げる「誠実・遵法・自主・協調」という4つの校訓には、豊かな知性を身につけるとともに人格を磨き、高い次元で社会に貢献できる人間に育ってほしいとの願いが込められている。東京都市大学への進学を希望する場合は、「付属進学制度」により進学ができるが、進学の資格を有したまま国公立大(前期)等を受験することも可能である。さらに、早稲田大、上智大、東京理科大、明治大、青山学院大、中央大、学習院大、東京薬科大、昭和薬科大、等の他大学推薦入学もある。
大学進学を通過点と位置付け、将来を見据えた進路指導が行われている。中2の9月にキャリア教育の一環として行われる東北地方での農業体験。稲や野菜の収穫から牛の世話まで、農家の人々と触れ合うことにより、職業観と食に対する理解を深める。中3の8月に行われる企業研修では企業別の事前学習を経て、生徒自らアポイントを取り生徒だけで企業を訪問する。
カリキュラムの特徴としては、前期、中期の高校1年生までは主要3科目を中心にバランスが考えられており、理科の実験では、中学1~3年生の科学実験の授業で、各学年で年間20項目近くの実験を行っている。また、1クラスを2分割し、20人前後の少人数で実験を行うので、よりきめ細かく具体的に指導がされる。高校2年生で行う実験は、大学入試に出題される頻度の高い項目も含めて行っている。多くの実験授業を通して、理科への興味と理解が深まっていく。
クラブ活動も盛んで、中学での硬式野球部やゴルフ部・アイスホッケー部・アメリカンフットボール部・自動車部などなど、特徴的な部活動もあり、自主性や協調性を養っている。