シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

青山学院横浜英和中学校

2024年11月掲載

青山学院横浜英和中学校【社会】

2024年 青山学院横浜英和中学校入試問題より

(前略)女性のスポーツには、一般に男性との身体能力に差があることや、興行(こうぎょう)収入が見込(こ)めずプロリーグが発達しにくいこと、出産などにより活動を続けることが困難な時期があることなどの課題があります。サッカー業界では現在、こうした課題を解決することを目指しています。またそれだけでなく、例えば「走らないサッカー」であるウォーキングサッカーのように、ルールを工夫(くふう)することで多様な人々が参加できるようにする取り組みも見られます。ワールドカップで使用されるサッカーボールにも、よりよい社会を目指していくための取り組みがあります。
サッカーをはじめとするスポーツは、「する」だけでなく、「みる」こと、「ささえる」ことによりたくさんの人々がかかわっています。スポーツのもつすばらしさをさまざまな人々が共有できる社会が目指されています。

(問)下線部について、かつてサッカーボールを作る労働者の賃金が低いことや、子どもがサッカーボール工場で働かされていることが問題となりました。現在は、こうした問題を解決するために下のようなマークをつけたサッカーボールが販売(はんばい)されています。このマークをつけた商品にはどのような特徴(とくちょう)がありますか。「発展途上(とじょう)国」という言葉を用いて説明しなさい。

国際フェアトレード認証ラベル
国際フェアトレード認証ラベル

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この青山学院横浜英和中学校の社会の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

発展途上国で生産された製品を、先進諸国が適正な価格で購入、販売することで、生産者の生活の安定や自立を助けることができるという特徴。

解説

問題に載っている認証ラベルが、チョコレートやコーヒーなどの製品につけられているのを目にしたことがある人も多くいることでしょう。‟FAIR TRADE”=「フェアトレード」は、直訳すると「公平・公正な貿易」です。これは、開発途上国の原料や製品を、適正な価格で継続的に購入することで、開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指すという貿易のしくみです。

日能研がこの問題を選んだ理由

この入試問題では、大設問の冒頭に、2023年にFIFA女子ワールドカップが開催されたことをテーマとした文章があります。そこでは、サッカーが日本に伝わったいきさつや、女子サッカーの歴史、女子スポーツの課題とその解決に向けての動きなど、サッカーというスポーツと人々のかかわりについて、多角的な視点から触れています。サッカーボールの生産に目を向けるというのもそのひとつです。

設問文で説明されているような問題は、サッカーボールを生産する過程に限ったことではありません。開発途上国での原料や製品の生産においては、価格の安さを生み出すために、正当な対価が生産者に支払われなかったり、児童労働がおこなわれたり、生産性を優先して環境が破壊されたりといった事態が起こり、問題視されてきました。

身近なスポーツであるサッカーを切り口に、この問題では、スポーツを「する」ことや「みる」ことだけでなく、「ささえる」存在であるサッカーボールを生産している国・地域や人々に目を向け、これまで課題となってきたことがらを解決するための貿易のあり方について説明します。このことを通して、世界のかかえる課題や、目指していきたい社会のあり方について、多角的な視点を持ち、自分に関わりのあることとしてとらえてほしいという出題校からのメッセージを感じることができました。

このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。