今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!
聖光学院中学校
2024年11月掲載
2024年 聖光学院中学校入試問題より
- 問題文のテキストを表示する
(問)あるスーパーの1か月の食品の売り上げについて、前月からの増減で考えます。たとえば、1月の売り上げが100万円だった食品が、2月に120万円になると20%の増加、逆に80万円になると20%の減少となります。
図1は、食品Aの2023年1月から4月の売り上げを折れ線グラフで表したものです。なお、2月から4月までは一直線となっています。
食品Aの2月から4月の売り上げについて、前月からの売り上げの増減の割合を表したグラフとして正しいものを、次の①〜⑥の中から1つ選びなさい。
中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この聖光学院中学校の算数の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)
解答と解説
日能研による解答と解説
解答
③
解説
食品Aの各月の売り上げを具体的な数値に置きかえて考えます。
例えば、1月を60万円、2月を100万円、3月を130万円、4月を160万円とします。このとき、「前月からの増加額」は、1~2月で100-60=40(万円)、2~3月で130-100=30(万円)、3~4月で160-130=30(万円)となります。このとき、問題の図1のように、2~4月は一直線に、また、1~2月の傾きは急になります。
一方、問われているのは「前月からの増加の割合」を表したグラフとして正しいものです。
3月、4月において「前月からの増加額」は等しいのですが、「増加の割合」は等しくありません。なぜなら、比べる「増加額」は同じでも、もとにする「前月の売り上げ」が異なるからです。冒頭で置きかえた数値で「前月からの増加の割合」を求めると、
2月では40÷60=0.666…→約67%、
3月では30÷100=0.3→30%、
4月では30÷130=0.23…→約23%となります。
上の6つのグラフから正しいもの1つを選ぶポイントは、「増加の割合」は2月が最も高くなること、また、3月よりも4月が低くなっていることです。
以上より、正しいグラフは③となります。
- 日能研がこの問題を選んだ理由
算数・数学において統計学習が重要視されるようになってきたことにより、中学入試問題においても統計に関する出題は増加傾向にあります。統計を題材とする出題と一口にいっても、出題のされ方は様々です。今回選んだ問題は、小学生にとって目新しいものというよりも、これまで学んできたことを改めて立ち止まって考えることができるような問題でした。
「これまで何度も目にしたことがある折れ線グラフや棒グラフを正しく読み取れるか。」「グラフ中に示された数値情報は、実数なのか、あるいは、割合なのか、気を配って読み取れるか。」「いくつも提示されたグラフのどこに着目して正しいものを選択するのか。」などのねらいを持って作問されたのかもしれません。
「前月と比べて売り上げが同額増えたからといって、増加の割合が同じではない。」言葉で書かれたものを見ると「それはそうでしょう」と思うかもしれません。しかし、いくつかのデータで示されるとどうでしょう。グラフそのものも、グラフの説明も、何となく読んでしまうと正しいものを選べません。
このように大設問[5]全体を通して、ただ割合の計算ができるかどうかだけでなく、数値情報が意味する内容を正しく理解できているかどうかが問われる内容になっています。これは算数・数学のみならず、他の教科の学習にもつながっていくことです。ひいては、様々なデータであふれる社会で生きている私たちにとって、データを正しく読み取ることはこれからますます必要になる力だといっても過言ではないでしょう。
このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。