シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

横浜共立学園中学校

2024年10月掲載

横浜共立学園中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.文系理系に関わらず、科学を正しく見極める目を持とう

インタビュー3/3

理科は身近なもの。生活の中にある

岩谷先生 生徒はキラキラした目でこちらを見ながら授業を受けてくれるんですよ。こちらが本当に考えさせられるような意見や、ハッとさせられるような意見が出て、本当に日々学ばせてもらっています。そういうところからインスピレーションを得て問題を作ることももちろんあります。

理科に興味関心を持つ子もいると思いますが、あまり持たない子にはどんなアプローチをしていますか。

岩谷先生 私は理科を嫌いにならないでほしいなと思っていますね。

眞田先生 ただ、どうしても生徒は点を取らなければいけない、と思うんですよね。私たちは点を取ることよりも、理科は生活の中にあり、身近なものだという感覚を身につけてもらいたいので、なるべくそういう話し方をするようにしています。
「私たちの体はタンパク質でできている」とか、「タンパク質も小さい粒でできている」とか。そういう風に考えていくと、私たちの体も1つの物質だよね、というように、身近で理解しやすい話を中に入れながら授業を進めることを心がけています。

理科嫌いは学年が上がるにつれて増えていく感じですか。

眞田先生 嫌いな子はそんなにいません。ただ「点が取れないから苦手」という子は多いですね。苦手な子には「どこからわからなくなったのか」を聞いて、「そこから復習してみようか」と言います。高校生になると特に「理科は苦手」という子が多いので、そういう子には「個別でもいいから放課後においで」と言って勉強させます。

「点数ではない」とおっしゃいましたが、理科として一生持っていてほしいのは、どのような力ですか。

岩谷先生 科学が急速なスピードで進歩している今、利益だけを求めて、その弊害があまり考えられないまま進んでしまっていますよね。でも、「科学は善でも悪でもない。使う人によって善にも悪にもなるんだよ」ということを毎年伝えています。文系理系に関わらず、科学を正しく見極める目を持ってほしい、ということは理科全体で統一して、毎年生徒に伝えようと努力しています。

横浜共立学園中学校 物理実験室

横浜共立学園中学校 物理実験室

文系の人も理科を勉強することが大切

眞田先生 高校2年生で文系・理系に分かれます。理系の子たちは受験でも理科が必要です。だから一生懸命勉強するのは当たり前ですが、文系の子たちは受験で使う子もいますが、全く使わない子もいます。
理系と言ってもいろいろで、私たちのように教員になる人もいますし、研究者になる人もいます。世の中を動かすのは、結局文系の人が多いんですよ。ほとんどそうです。だから、文系の人こそサイエンスをわかってほしいという気持ちがすごくあります。高2の文系の授業を担当する時は、1年間それを言い続けています。ことあるごとに「あなたたちが世の中を作っていくんだからね、科学を知らないと困っちゃうんだよ」と。

その意味が一番伝わりやすいのが、環境問題だと思います。例えば最近では、処理水の放水があったじゃないですか。あのときはものすごく時間をかけてしまいました。研究者がそこに入って、いろいろなデータをもとに計算して「このぐらい薄めてあるから大丈夫」とか。「海流に乗せて遠くまで放水すれば、ここら辺にはそんなに貯まらない」とか。そういうことは、すべて科学者が考えて見通しを立てます。ただ、それを受け入れていくのは研究者ではなくて、実際そこに住む人や政治家なので、文系の人も勉強しておくことが必要なのです。「そういうことをきちんと受け入れていけるようになるには、今、勉強しておかなければいけないよね」という感じで話しています。
どうしたらいいのかな、どうしたら地球のためになるのかな、ということを、自分で考えてもらわなければいけない、という気持ちがとてもあります。たまたま私が受けた講習に、実際にそこに関わっている先生が講師で来てくれて、海流に乗せるなど具体的なお話を伺ったので、少しでもそういうものを生徒に還元していこうと思っています。

生徒のみなさん、楽しそうですね。

岩谷先生 先生の楽しいという気持ちが伝わればいいなと思ってはいます。休み時間になると教員室に生徒がたくさん訪れます。先生のところに遊びに来るような感じです。教員と生徒の距離はかなり近いと思います。

横浜共立学園中学校 グラウンド

横浜共立学園中学校 グラウンド

「共立っていいな」と思ってもらえたら幸せ

最後に、小学生、保護者へのメッセージをお願いします。

岩谷先生 入学試験の問題は時間かけて、すごい思いを込めて作ります。入試が終わると、次の日から次の入試のことを考えています。おそらく他校さんもそうだと思います。その膨大な問題の中から、今回、拾い上げてくださったことが本当に嬉しくて、生徒もすごく喜んでくれたので感謝の気持ちでいっぱいです。この問題を解いてくださる受験生の方も、たくさんの過去問がある中で、共立の問題を選んで解いているわけで、選んでくださることに心から感謝しています。また、今回のインタビューを通して、「共立っていいな」と思っていただけたら、本当に幸せです。この学舎で一緒に学んでいけることを楽しみにしています。

横浜共立学園中学校 本校舎

横浜共立学園中学校 本校舎

インタビュー3/3

横浜共立学園中学校
横浜共立学園中学校1871(明治4)年、米国婦人一致外国伝道協会から派遣された3名の婦人宣教師により「アメリカン・ミッション・ホーム」として創立。戦前の女学校時代を経て、戦後、横浜共立学園中学部、高等学部に。1951(昭和26)年、学校法人へ組織変更し、現校名に改称。
学園の教育の根底にあるもの、それは「ひとりの人間を無条件に尊重し愛する」というキリスト教精神である。一人ひとりが神に愛されていることを受けとめ、それに基づいて豊かな人間性を備え、隣人に仕え、世界の平和のために貢献する女性の育成を目指している。このような教育を実現するために、優秀な教師集団と充実した教育施設を備えている。
創立150周年を記念した校舎等再整備計画において、2018年3月に南校舎が完成し、2019年7月に本校舎(横浜市の有形文化財)の大規模改修が完了した。そして、西校舎の建築とグラウンドの改修が2022年3月に完了し、学園は新しい校舎・施設を更新するとともに、教育内容の充実を一層はかり、新しい歴史と伝統を創造していく。
理系大学にもしっかりと対応できるカリキュラムを組んでいる。英語のテキストは中1から『ニュートレジャー』を使用、英会話の授業は4名いるアメリカ人の教師が1クラスを2分割して指導する。高2からは選択科目が大幅に導入され、各自の目的に沿った科目がとれるようになっている。グレード別編成は、英語は高2・高3の選択科目で、数学は高1で行うが、中学では行わない。中学では、各教科で小テストを頻繁に行ない、基礎学力を着実につけていく。夏休みには中1~高1で指名制の補習、高2・高3は各教科の受験補習を実施する。
キリスト教教育を推進するうえで、授業週5日制とし、日曜日には教会に出席することを奨励している。毎朝礼拝が行われ、聖書の授業も週1回ある。クラブ活動は、生徒会指導部所属の部が美術部など文化系15、ダンス部など体育系8、園芸同好会など同好会7、ハンドベルクワイアーなど宗教指導部所属のグループが3ある。生徒は自由に希望する部に加入し活動する。趣味、適性、目的に従って同好の者が集まり、自主的に活発に活動するなかで、個性を伸ばし楽しい時を過ごす。学校行事で、特筆すべきはクリスマス礼拝。なかでも生徒によるページェント(聖劇)は無言劇で降誕を演じるもので素晴らしい。ほかに、文化祭、運動競技大会などがある。