シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

横浜共立学園中学校

2024年10月掲載

横浜共立学園中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.教科の枠を超えて、関連づけていくことで知識がつながる、頭に残る

インタビュー2/3

理科は生活の中にある

御校の理科としてのコンセプトや、大事にしていることがあれば教えてください。

眞田先生 繰り返しになりますが、身近なものが理科につながっているということをわかってもらいたいので、解きながら学ぶというか、「へー、そうなんだ」と思ってもらえる、新しい発見をしてもらえるような問題を作りたいと思っています。理科は最後の試験(4教科目)なので、受験生は多分疲れていると思います。だからこそ、少しでも元気になってもらえるような題材選びを心がけています。
小学校で学んでいることがある程度わかってもらえているといいので、単純に受験だから覚える、ということではなくて、興味を持って学校の授業を受けて、あるいは塾の授業を受けて、勉強してほしいなと思います。

いつも4題構成ですか。

眞田先生 年によってはマルバツの問題を入れて5題のときもあります。盛りだくさんにはなりますが、試験時間を配慮して作っています。構成で気を配っていることは、文章題が多過ぎたり、計算問題が多過ぎたりせず、満遍なく出すことです。

会話文の出題にはどういう意図がありますか。

眞田先生 会話文は「日常生活でありそうだね」というのが伝わると、ある意味答えやすいだろうと考えて出しています。なるべく身近なもののほうが、わかりやすいのかなと……。

近頃、入試問題は全体的に文章量が増えていると思うのですが、きちんと読む、ということは意識されていますか。

眞田先生 そうですね、小学生が学習している範囲は限られていて、それだけではこちらが出したい問題を解くことができなかったり、わからなかったりすることがあると思うので、そういうものに対しては丁寧に説明しています。それを読み込んで得た知識と、自分の持っている知識で補いながら解いてほしいので、どうしても文章が多くなることはありますね。

理科/眞田 佐恵美先生

理科/眞田 佐恵美先生

中学生の授業では実験をなるべく入れる

入試問題と理科の授業の特徴は、やはりつながっているのでしょうか。

眞田先生 特に中学生の授業では、実験をなるべく入れるようにしています。実験は、事前の説明をし、実験をし、まとめをし、という工程から3時間必要になるので、高校生になると時間がかなり厳しいです。教科書を進めなければいけないので、中学生のときになるべく実験をしてもらって、「覚えておいてね」と話しています。
高校2年生に「中1のときに、こんな実験をしたけれど、覚えていますか」と聞くと、中には「ん!?」という生徒もいますが、「覚えてる」と言って、「こうこうこうだった」などと話してくれている子も結構います。「中学生のときに勉強したよね」と言いながら実験をやると印象に残るようで、結構覚えています。

授業の一環でミニフィールドワーク

眞田先生 やっぱり実際にものを目の前にして、手を動かすと印象に残るというか。記憶に残るので、なるべく実験は入れるようにしています。

岩谷先生 実験は大事なのですが、どうしてもレシピ通りになりますよね。答えが決まっているので、高校生は自分で発案した研究にも取り組みます。学期末に時間があると、「卒業研究」という形で、自分で発案したものを研究してもらう、という授業をするのです。そういうことを通して、自分で物事を追求することの楽しさを味わってほしいと思っています。

一から作るので大変なんですよ。器具を揃えたり準備したりするのもそうですし、結果も思いどおりに出ないですし。ただ、思い通りの結果に行かなかったとしても、それも失敗じゃないんですよね。そこからまた新たな道筋を組み立てる面白さなども、経験してもらいたいなと思っています。

また、ここの環境がとても良くて、ミニフィールドワークをします。本校のお隣には、「山手214番館」という、元スウェーデン領事公邸があり、四季折々のお花など、植物が観察できるように設計されているお庭があります。1クラスずつお邪魔させてもらい、私がガイド役となって説明する植物観察ツアーみたいなことをしています。獣道みたいなところを通るので、みんな蚊に刺されながらですが、ニコニコしながら楽しんでいます。

横浜共立学園中学校 山手214番館

横浜共立学園中学校 山手214番館

ディベートのテーマは生徒から募る

岩谷先生 生徒に、他分野との関わりや他教科との関わりをちょっと意識してもらいたいな、と思ったときは、現代社会の、理化学に関する諸問題を取り上げて、ディベートのようなことをさせたりします。内容は生徒から募ります。例えば出生前診断はありかなしかとか。AIに人権を持たせるかどうかとか。AIと言ってもいろいろですよね。多くの生徒はドラえもんのようなものを想像しているのですが、反対派は「ルンバはどうするんですか」みたいな感じで攻めていき、収集がつかなくなることもあります。それもまた学びなので、よしとしています。あるいは、科学よりのテーマですが、遺伝子操作を用いて絶滅危惧を復活させることはいいのか悪いのかとか。テーマは生徒に発案してもらって、その中からいいものを私が選ぶ、という感じで行っています。

社会科での学びと関連づけて話す

眞田先生 中学生は、社会科の日本史で出てくる銅鐸や銅剣があるじゃないですか。それらは金属製なので、理科の授業で金属の話が出たときに、「みんな銅鐸や銅剣、わかる?」「社会科の教科書に載っていたよね」という話をしたりします。人間の歴史の中で金属はどういう風に使われ始めたか、というところから、「金はすごい昔から使われているよね」みんな聖書を読むので、「旧約の時代に金を使っているでしょう。昔から金があるのは、自然に金で存在できるけど、私たちが今1番使っている鉄はもっと後の時代だし、みんなが気楽に使っているアルミニウムはずっと新しい時代のものなんだよ」とか。人間の歴史と絡ませることは中学生でもやりますね。

岩谷先生 今度話そうと思ってるいのが発酵の話です。私はパン作りが好きなので、その過程で理科のどのような現象が起きているのかを確かめる授業を、家庭科室を使ってやろうと思っています。

その科目の世界に閉じこもっていない、というのがいいですよね。社会でも理科とつなげて話をしているのでしょうね。

眞田先生 社会と理科のつながりでいえば地学分野ですよね。岩石、山、火山などは地理でも同じような話をするので、地理を教えている先生とは、そんな話を以前からよくしています。

岩谷先生 英語の教材に理科の話が出てくることもあります。そういう意味では必要に応じて助け合いながらやっています。

横浜共立学園中学校 実験室資料

横浜共立学園中学校 実験室資料

生徒も考える双方向の授業を心がけている

ICTはいかがですか。

岩谷先生 情報の授業が始まる前から端末を持っているので、ちょっと難しいところはありますが、頑張って取り入れるようにしています。使い方には気をつけなければいけないので、試行錯誤しながらやっているところはあるのですが、それを使って調べ学習をしたり、1枚にまとめてプレゼンしたりしています。
小学校から持っているとは言っても、全然使えない子もいるので……。まずは使い方に慣れる遊びみたいなところから始めるのが1番かなと思います。

例えば今回の入試問題のような、投げかけはされているのですか。

岩谷先生 やはり自分の力で考えてもらいたくて、例えば、初めて出会った情報に対して、授業では引き出しをいっぱい作ってもらって、その引き出しをぱっと出して、正しいものを理解するという洞察力みたいなものを磨けるような授業作りを心がけています。一方的ではなくて、生徒も考える授業をするようにしています。そこが先ほども言いました知識だけではなくて、考えさせる問題作りにもつながってるのかなと思っています。

横浜共立学園中学校 化学実験室

横浜共立学園中学校 化学実験室

インタビュー2/3

横浜共立学園中学校
横浜共立学園中学校1871(明治4)年、米国婦人一致外国伝道協会から派遣された3名の婦人宣教師により「アメリカン・ミッション・ホーム」として創立。戦前の女学校時代を経て、戦後、横浜共立学園中学部、高等学部に。1951(昭和26)年、学校法人へ組織変更し、現校名に改称。
学園の教育の根底にあるもの、それは「ひとりの人間を無条件に尊重し愛する」というキリスト教精神である。一人ひとりが神に愛されていることを受けとめ、それに基づいて豊かな人間性を備え、隣人に仕え、世界の平和のために貢献する女性の育成を目指している。このような教育を実現するために、優秀な教師集団と充実した教育施設を備えている。
創立150周年を記念した校舎等再整備計画において、2018年3月に南校舎が完成し、2019年7月に本校舎(横浜市の有形文化財)の大規模改修が完了した。そして、西校舎の建築とグラウンドの改修が2022年3月に完了し、学園は新しい校舎・施設を更新するとともに、教育内容の充実を一層はかり、新しい歴史と伝統を創造していく。
理系大学にもしっかりと対応できるカリキュラムを組んでいる。英語のテキストは中1から『ニュートレジャー』を使用、英会話の授業は4名いるアメリカ人の教師が1クラスを2分割して指導する。高2からは選択科目が大幅に導入され、各自の目的に沿った科目がとれるようになっている。グレード別編成は、英語は高2・高3の選択科目で、数学は高1で行うが、中学では行わない。中学では、各教科で小テストを頻繁に行ない、基礎学力を着実につけていく。夏休みには中1~高1で指名制の補習、高2・高3は各教科の受験補習を実施する。
キリスト教教育を推進するうえで、授業週5日制とし、日曜日には教会に出席することを奨励している。毎朝礼拝が行われ、聖書の授業も週1回ある。クラブ活動は、生徒会指導部所属の部が美術部など文化系15、ダンス部など体育系8、園芸同好会など同好会7、ハンドベルクワイアーなど宗教指導部所属のグループが3ある。生徒は自由に希望する部に加入し活動する。趣味、適性、目的に従って同好の者が集まり、自主的に活発に活動するなかで、個性を伸ばし楽しい時を過ごす。学校行事で、特筆すべきはクリスマス礼拝。なかでも生徒によるページェント(聖劇)は無言劇で降誕を演じるもので素晴らしい。ほかに、文化祭、運動競技大会などがある。