シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

横浜共立学園中学校

2024年10月掲載

横浜共立学園中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.身近な題材を選ぶのは、受験生に自分事として感じてほしいから

インタビュー1/3

環境問題を受験生に自発的に考えてほしかった

岩谷先生 本校では生物の授業を担当させていただいています。この問題は生物分野で、3題構成になっているのですが、1問目から3問目までが一つながりの問題になっています。人が地球に生まれて、長い年月をかけて、いろいろな生物と共に生きるようになりました。しかし、同じく人が地球を破壊しつつある今、生態系の一部でもあるこの人間が、果たしてどういう風に関わっていけるのかな、ということを、問題を解いている最中も、そして、問題解き終わった後も、受験生の皆さんに自発的に考えていただきたいなという思いで、この問題を作成しました。

眞田先生 私はこの大問2のリード文と言いますか、最初の文中の「宇宙船地球号」という表現が、入口としてメッセージ性があるなと思いました。「考えてほしいです」というメッセージなんですよね。

岩谷先生 そうですね、生態系を守るという時に、人間は第三者として生態系を守っていってあげる、という感じで捉えることが多いのですが、そうではなくて、私たちも生態系の一部なんだよ、ということを感じてほしくて、進化の歴史のほうから入った問題を作らせていただきました。

眞田先生 「宇宙船地球号」の乗組員なんですよね。そういうメッセージを込めました。

理科/岩谷 可南子先生

理科/岩谷 可南子先生

答えから受けた感覚を大事にしてほしい

第三者ではなくて、自分に何ができるか、ということを考えさせたいのかなと読んでいて思っていました。

岩谷先生 「植林が大事」ということは誰でも知っている話ですよね。ただ、そこで、それが一体何本なのか、というところまで考えたことがあるのかな、というのが疑問でした。多分、その答えを導き出した後に、「こんなに多いの」と感じる子もいると思いますし、逆に「少ない」と感じる子もいると思います。また、「知っていた」という子もいると思うんですね。でも、それは問うていないのです。本数に答えはないと思っているからです。問題を解いて、導き出した数値に対して抱く、自分だけの感覚というものを大切にしていただきたいなと思っています。

私自身も、問題を作るためにいろいろなデータを調べている中で、500だと知ってびっくりしたんですよね。そんなに植えなければいけないのかと。受験生の中にも、間違いだと思って計算し直した子もいたのではないかと思います。

横浜共立学園中学校 校門

横浜共立学園中学校 校門

CO2削減には幼木を植えることが効果的

大木よりも幼木のほうがいいのですか。

岩谷先生 あえて植えなければいけないのは幼木なんです。例えば、今の熱帯雨林に大人の木が増えたところで、CO2(二酸化炭素)の量は変わらないんですよね。その幼木が、成長過程で自分の体内に二酸化炭素を取り入れて、有機物を蓄えていくから二酸化炭素が減るのです。ですから、あえて幼木なんですよね。

大きい木がいくらあっても効果は低いということですか。

岩谷先生 実はそうなのです。スギは500年ぐらい生きますが、この数値はだいたい20歳ぐらいの幼木を想定しています。

大きくなった木は伐採したほうがいい?

岩谷先生 伐採して燃やしてしまうと、またCO2に返ってしまうので……。

眞田先生 今、木を使ってビルを作るということが増えているのです。

岩谷先生 この校舎作るときも、実は結構木を切ることになったんですね。それを今、くつ箱の棚に使っています。

眞田先生 グランドにある体育倉庫も全部木造です。倉庫ですが、結構素敵です。切ったところに幼木を植えてあげると、CO2を吸収してくれます。大きい木は全然CO2を吸収しないので、使った方がいいですよね。

受験生の出来はいかがでしたか。

岩谷先生 採点をしている印象では、よく頑張って解いてくれていたように思います。共立の試験って、国語から始まって、理科は4教科目なんですよ。多分クタクタになりながら、理科の問題を解いていると思います。試験を監督させていただいたり、採点をさせていただいたりする中で、受験生のまっすぐな姿勢を感じ取り、それが励みになっています。本当にいつも感謝しています。

横浜共立学園中学校 ピアソン記念礼拝堂

横浜共立学園中学校 ピアソン記念礼拝堂

インタビュー1/3

横浜共立学園中学校
横浜共立学園中学校1871(明治4)年、米国婦人一致外国伝道協会から派遣された3名の婦人宣教師により「アメリカン・ミッション・ホーム」として創立。戦前の女学校時代を経て、戦後、横浜共立学園中学部、高等学部に。1951(昭和26)年、学校法人へ組織変更し、現校名に改称。
学園の教育の根底にあるもの、それは「ひとりの人間を無条件に尊重し愛する」というキリスト教精神である。一人ひとりが神に愛されていることを受けとめ、それに基づいて豊かな人間性を備え、隣人に仕え、世界の平和のために貢献する女性の育成を目指している。このような教育を実現するために、優秀な教師集団と充実した教育施設を備えている。
創立150周年を記念した校舎等再整備計画において、2018年3月に南校舎が完成し、2019年7月に本校舎(横浜市の有形文化財)の大規模改修が完了した。そして、西校舎の建築とグラウンドの改修が2022年3月に完了し、学園は新しい校舎・施設を更新するとともに、教育内容の充実を一層はかり、新しい歴史と伝統を創造していく。
理系大学にもしっかりと対応できるカリキュラムを組んでいる。英語のテキストは中1から『ニュートレジャー』を使用、英会話の授業は4名いるアメリカ人の教師が1クラスを2分割して指導する。高2からは選択科目が大幅に導入され、各自の目的に沿った科目がとれるようになっている。グレード別編成は、英語は高2・高3の選択科目で、数学は高1で行うが、中学では行わない。中学では、各教科で小テストを頻繁に行ない、基礎学力を着実につけていく。夏休みには中1~高1で指名制の補習、高2・高3は各教科の受験補習を実施する。
キリスト教教育を推進するうえで、授業週5日制とし、日曜日には教会に出席することを奨励している。毎朝礼拝が行われ、聖書の授業も週1回ある。クラブ活動は、生徒会指導部所属の部が美術部など文化系15、ダンス部など体育系8、園芸同好会など同好会7、ハンドベルクワイアーなど宗教指導部所属のグループが3ある。生徒は自由に希望する部に加入し活動する。趣味、適性、目的に従って同好の者が集まり、自主的に活発に活動するなかで、個性を伸ばし楽しい時を過ごす。学校行事で、特筆すべきはクリスマス礼拝。なかでも生徒によるページェント(聖劇)は無言劇で降誕を演じるもので素晴らしい。ほかに、文化祭、運動競技大会などがある。